2016年2月25日木曜日

第1303話 パキスタンの思い出 (その4)

カラチのインターコンチネンタル・ホテル。
プールサイドでくつろぎながらウエイターを手招きした。
おもむろに冷たいビールをお願いすると、
穏やかな笑顔が返ってくる。
笑顔ではあるけれど、首が小きざみに振られていた。

「リカーは19時からなんです」
予期せぬ言葉にこちらは言葉を失った。
もう完全にふてくされ気味である。

 ♪   やって来ました 倦怠期
   不貞くされ女房は 家出して
   スイジ センタク ゴハンタキ
   新婚当時を 思い出す ソラ ♪
      (作詞:なかにし礼)

「ドリフのズンドコ節」のリリースは1969年秋。
彼ら3枚目のシングルは150万枚を売る大ヒットとなった。

それはそれとしてビールにありつくまであと7時間もある。
しゃんめェ!
ビールの代わりにプールに飛び込んだ。

 ♪   ベッドの中で魚になったあと
   川に浮かんだプールでひと泳ぎ
   どうせ二人は途中でやめるから
   夜の長さを何度も味わえる 

   ホテルはリバーサイド
   川沿いリバーサイド
   食事もリバーサイド 
   Oh,Oh,Oh, リバーサイド  ♪

       (作詞:井上陽水)

TVドラマ「ニューヨーク恋物語」の主題歌にもなった、
「リバーサイドホテル」のシングルは1982年の発売ながら
ドラマのほうは6年後、1988年の放映。
ニューヨークの街並みにも
ニヒルな役柄の田村正和にもピッタンコで
まさにシンクロナイズド・スイミングでありました。

さて、陽水はプールでひと泳ぎだが
J.C.はプールでふて泳ぎ。
たかだか1杯のビールにどんだけ待たされるんかい!
トンデモない国に来ちまったぜ、ったく。

まだまだ陽は高い位置にある。
これじゃ日焼けで真っ黒になっちまう、
いったん部屋に戻ることにした。

=つづく=