日本橋馬喰町で人と逢う約束があり、
その前に軽く腹ごしらえ。
隣り町の浜町のしなびた日本そば屋へ。
これはあくまで”しなびた”であり、
”ひなびた”ではありません。
明治座の正面にあり、
以前から存在を認知していたが初訪。
とにもかくにも度肝を抜かれたのが一つの品書き。
何のことやら、胡麻バナナせいろと来たもんだ。
温かい胡麻づゆにバナナのブツ切りが
プカリプカリと浮いてる姿を想像した。
そんな食いモンが食文化栄えしこの国に
存在し得るものなのかー。
ただ古いだけで、どこから見ても旨いそばが
出て来そうにないんだが
この珍品は看過すること能わなかった。
先客は一人。
初老のオバちゃんが親子丼みたいなどんぶりを
かっこんでいる。
接客も一人。
ひなびたオバちゃんである。
これは”ひなびた”であり、
”しなびた”ではありません。
品書きに珍し物多し。
胡麻バナナせいろ(850円)を筆頭に
トマトとじ(900円)、 柚子そば(1000円)、
ほたるいかそば(1000円)などなど、
店主の思いつきの賜物が並ぶ。
いの一番、オバちゃんに訊いてみた。
「胡麻バナナせいろってどんなんですか?」
「アハッ、アハハ、胡麻汁せいろに
バナナが1本付くんです」
聞いたときのJ.C.の顔を自撮りして
此処に貼り付けたかった。
こういうのは胡麻汁せいろ、
バナナ1本付きと書くんだヨ、ったく。
店の名は「招福庵」。
あまり福を招きそうにないけどネ。
ビールは苦手なクラシックラガーでパス。
結局は薬局、以前はどこにもなかったが
ここ数年、急に流行りだした、たぬきせいろをー。
谷中の真っ当なそば屋によれば、
まかないから始まったそうだ。
結果、そのたぬせいはヒドかった。
クタッとしたそばからは
店のやる気がまったく感じられない。
つゆには揚げ玉、小松菜に焼き海苔1枚。
薬味のねぎが無いんだ。
薬味のないそばを初めて食べた。
こんなのを大劇場の前で出してたら
タヌキ(他抜き)どころか、
他抜かれになっちゃうぜ。
ちょいと遠回りだけれど、
「浜町藪そば」にしときゃよかったヨ。
「招福庵」
東京都中央区日本橋浜町2-17-6
03-3666-5945