空港線沿線を踏破したが、ちと歩き足りない。
京急蒲田からJR蒲田に進み、
今度は東急池上線沿いに
蓮沼を経て池上にやって来た。
折よく停まっていた大井町行きのバスに乗り込む。
大森の山王飲食店街、
俗称・地獄谷に灯が点るにはまだ間がある。
終点の大井町まで行った。
大井町線・大井町駅の東側、
東小路と平和小路を流すも
16時を回ったばかりで開いてる店が少ない、
とある店先で呼び止められた。
発音から大陸系の女性と判ったが
選択肢がないのと、こういうのに弱いのとで
誘いに乗った、というより連れ込まれたに近いネ。
カウンター10席ほどの和風居酒屋、
「一角」は焼き鳥が中心。
先客は中年のカップルとオネバさんが一人。
旧知の仲らしく席が離れているのに
大きな声で会話に興じている。
とにかく左端に腰を下ろし、ドライ中瓶をー。
ツー・オペの女性はともに
”ソウシュウ”出身と聞いたが意味が分からず、
紙に書いてもらったら”蘇州”だった。
途端に李香蘭が歌い出す。
♪ 君がみ胸に 抱かれてきくは
夢の船歌 恋の唄
水の蘇州の 花散る春を
惜しむか柳が すすり泣く ♪
(作詞*西條八十)
服部良一の曲もさることながら
西條八十の詞がいいですねェ。
”み胸”は彼の気に入りワードらしく
島倉千代子のデビュー曲、
「この世の花」の三番でも使われている。
♪ 君のみ胸に 黒髪を
うずめたたのしい 想い出月夜
よろこび去りて 涙はのこる
夢は帰らぬ 初恋の花 ♪
「蘇州夜曲」は李香蘭主演の映画、
「支那の夜」(1940)の劇中歌で
彼女自身が歌っている。
周知のように李香蘭は
のちの参議院議員・山口淑子、その人です。
=つづく=