2023年10月11日水曜日

第3381話 暗闇を走るバス

どこかで飲もうと出かけた夕まぐれ。
家のそばからバスに乗り、
上野松坂屋前までやって来ると
近くに江戸川区・平井行きのバスが停まっていた。
よしっ、平井にしよう。

浅草・押上を経て中居堀通りを真っ直ぐに
強烈なヘアピンカーブを曲がり、
ゆりのき橋通りに入った。
都内を走るバスの路線で
これほどの急カーブはほかにあるまい。
ほとんどUターンに等しい。

ゆりのき橋の手前から
旧中川沿いをバスは走り続ける。
日はとっぷりと暮れ、辺りは真っ暗闇である。
ほうら、鶴田浩二が歌い始めたぜ。

♪ 何から何まで 真っ暗闇よ
  すじの通らぬ ことばかり ♪

すじは通らなくとも
バスは通って平井駅前着。
揺れる車内で決めた「松ちゃん」に直行する。
最後に来たのはおよそ10年前。
学生時代の仲間と10人ほどで宴会を催した。

カウンンターの左端に促され、ドライの大瓶をー、
お通しは鶏肉と大根を煮たヤツ。
これが意外に秀にして逸。
唐揚げになりそうな塊一つに大根が数片。
お替わりしたいくらいだ。

多種多彩な品書きにイカメンチを見つけて発注。
思い出すなァ、今は無き麻布十番の洋食屋、
「ミスター・ガーリック」のオヤジさんをー。
「こいつは仕込みが大変なんだよぉ。
 特に冬場は水が冷たくてさぁ」
ボヤきながら揚げるイカメンチは絶の品であった。

十番ほどじゃなくともまずまずの仕上がりだ。
大瓶をもう1本に油が良かったので
穴子天を追注すると、これも水準に達していた。

「松ちゃん」に来ておいて
主役の焼きとんを頼まぬわけにはいかない。
遅ればせながらカシラを塩、レバをタレで1本づつ。
ともに大粒がゴロゴロと旨い。

カレーの頭(ルーのみ)がある。
コレを出す店のカレーは当たりが多い。
一口スプーンですくうと味はいいんだがヤケに濃い。
かといって、ここでライスをもらったら
何をしてるのか判らなくなる。
観念してビールで流し込みましたとサ。

「松ちゃん」
 東京都江戸川区平井3-26-4
 03-3638-1682