JR日暮里駅北口から夕焼けだんだんに続く御殿坂。
その坂上を左に折れて
三崎(さんさき)坂上に通ずる道筋には
東京で最もレトロなスポットの一つ、
初音小路や朝倉彫塑館が連なっている。
道の東側は谷中霊園、
西はおびただしい数の寺院群。
いずれにしろ御仏(みほとけ)に
限りなく近しいエリアだ。
ここに「松寿庵」なる古い日本そば屋あり。
前を何度も通っているから
存在は認知していた。
先日、たまたま店先のサンプルケースを
のぞいていて1枚の貼り紙に目がとまった。
七福神そば NHKで紹介されました
ん? 七福神そばァ?
何だろう? 何かしら?
こういう際物はハズレが多いが
ものは試し、ダメ元でトライしてみるかー。
翌週、行ってもうた。
四人掛けが四卓の店内に先客はゼロ。
冷やしもあったが、あえて温かい方をお願い。
七福神にちなんで
七種の具材がちりばめられていた。
内容はかくの如し。
恵比寿・・・海老
大黒・・・・袋茸
福禄寿・・・筍
寿老人・・・海苔
弁財天・・・紅白かまぼこ
布袋・・・・うずら玉子
毘沙門天・・とり肉
ちょいとばかり、こじつけがましいが
勢揃いしたお歴々はなかなかに華やかで
おかめそばのヴァージョン・アップといった景色。
ノビないうちにそばの大半をやっつけ、
神様たちはキリン一番搾りの友とした。
五人連れが二卓に分かれて座り、
最後に残った一卓に外国人のカップルが着く。
ありゃあ! 彼らの顔を見て驚いた。
向こうも驚いている。
どちらからともなく「ハァ~イ!」
ついさっき初音小路の入口で
言葉を交わした二人だ。
昼なお暗い小路の奥を
怪訝そうにのぞいているから
「This is a one of the most retrospective spot
in Tokyo city」
「Is that so ?」
「Yeah, go ahead and have a look」
「Thank you so much」
「Take care」
だったのでした。
「松寿庵」
東京都台東区谷中5-8-28
03-3821-5235