2024年4月30日火曜日

第3525話 「戦前戦後 東京活写」始まる

10日ほど前に神保町シアターで
新シリーズ「戦前戦後 東京活写」が始まった。
心待ちにしていたこの特集は
J.C.の嗜好にピッタンコ。
先週、さっそく3本観てきた。

第一弾は「一万三千人の容疑者」(1966)で
ドキュメンタリー・タッチのドラマ。
1963年3月31日、昭和62年度の最終日に
列島を震撼させた事件が
発生したのは台東区・入谷(現・松が谷)。
吉展ちゃん誘拐殺人事件である。

被害者が実際に連れ去られた、
入谷南公園のロケが生々しい。
近所によく利用する中国料理店と
日本そば屋があるため、
J.C.は何度も公園内に足を踏み入れている。

人工のものと思われるが
園内に小高い山があり、
子どもたちの遊具の宝庫になっている。
山は事件当時も素朴に盛り上がっていた。

2本目は「にっぽんのお婆あちゃん」(1962)。
北林谷栄とミヤコ蝶々が主人公を演じ、
爺さん・婆さんを十八番とする、
名優たちがゾロゾロとオンパレード。

昭和37年の浅草を活写して
雷門・仲見世・花やしき・神谷バー・
吾妻橋と、この街はあまり変貌していないが
今は無き新世界がたまらなく懐かしい。

そして3本目は長門裕之が
非情な刑事を演じる「人間狩り」(1962年)。
薄幸のヒロイン・渡辺美佐子が
とてもいい味を醸している。
舞台は北区・赤羽がちょいと出て来るが
メインは荒川区・町屋である。

まだメトロ千代田線が開通する前のことで
都電荒川線のほかは
京成本線の高架駅があるのみ。
長門が追う犯人の大坂志郎の住まいは
ドブ板横丁のごとき様相を呈している。
今では荒川区随一の繁華街・町屋。
あの頃はこんなんだったんだねェ。

今週は成瀬巳喜男の「銀座化粧」、
山田洋次の「下町の太陽」が待ち受けている。
楽しみ尽きぬ今日この頃。
わが人生に歓びの泉、湧き出づりけり。