2014年8月11日月曜日

第900話 深川が葛飾にあった! (その3)

「深川酒場」に秘かに持ち込んだのは
危険ハーブならぬ本物のハーブ、
あいや、本物のわさび、いわゆる生わさびであった。
こいつがそばについていると、刺身の旨さが倍増する。
いや、三倍増いたしますな。

で、その夜のサカナたちのラインナップは
まぐろ赤身、〆さば、つぶ貝の三種。
白身の不在が寂しくはあった。
注文したのは赤身とつぶ貝。
それに大皿に盛られた煮物類の盛合わせだ。

”おふくろの味”的な、あるいは京の都にありがちな煮物は
さほど好まぬJ.C.だが
ツレのK音サンは大好物なのだと―。
事実、刺身より煮物を合いの手としてグラスを重ねている。
陣容は、高野豆腐、切干し大根、ぜんまい、きのこ類。
少しばかり化調が気になるけれど、許容範囲内に収まっている。

そこそこのレベルの赤身とつぶ貝はわさび効果で
もちろんレベルアップした。
うれしかったのはつぶ貝の肝の煮付け。
常連さんを差し置いてわれわれにサーヴしてくれた。

ここで生ビールを1杯ずづつ。
ジョッキのサイズは大と中の間くらいだ。
値段は大瓶と同じく550円。
お飲み得と言えよう。
「深川酒場」の名に恥じぬ、良心的な値付けだ。

ちなみに他の種類は
日本酒の小徳利が350円、大徳利と冷酒が650円。
酎ハイが300円で、緑茶ハイ、梅干ハイが350円。
下町の大衆酒場と同レベルだ。

料理ボードの焼きものには
いさき・新にしん・ぶりカマ・鮭・銀だらとあった。
われわれ意見の一致をみて、新にしんをお願い。
同時に冷酒を所望した。

焼き上がった夏のニシンはイワシやサンマとは異なる、
固有の旨みをたたえていた。
おのずと酒盃の上げ下げのピッチが早まる。

 ♪ あれからニシンは どこへ行ったやら
   オタモイ岬の ニシン御殿も
   今じゃさびれて オンボロロ
   オンボロボロロー
   かわらぬものは 古代文字
   わたしゃ涙で 娘ざかりの 夢を見る ♪
          (作詞:なかにし礼)

北原ミレイの「石狩挽歌」が
頭の中をグールグルの夜でした。

=おしまい=

「深川酒場」
 東京都葛飾区金町5-31-9
 03-3608-1515