2014年8月29日金曜日

第914話 飲んでうれしいメガジョッキ (その3)

浅草1丁目1番地1号にして、この街のランドマーク、
「神谷バー」の2階に独りくつろいで相棒の到着を待つ。
一足先に特大ジョッキを頼んだところだ。

あまりのジョッキの大きさに注がれる衆目の視線を浴びながら
開き直ったJ.C.、まずはグビグビッとやった。
グビグビッとやったのはいいが
ジョッキを持った右手がふるえてるじゃないか。
いえネ、やさオトコにこのサイズはきびしい。
あわてて左手を添えたくらいだもの。
以後、恥ずかしながらジョッキを両手で支えて飲みました。

女性客がこのサイズを注文することはまずなかろうが
故・森光子媼(おうな)や、故・北林谷栄媼、
はたまた、今も現役で活躍中の浅丘ルリ子サンなんかが
このメガジョッキを片手で持ち上げようものなら
下手を打つと手首を骨折しかねないぜ。

しっかし、デカいがウマい。
飲んでうれしいメガジョッキ、
エンコの酒場で夏を満喫する自分がいる。
ビールをガンガン飲りだすと、
あまりつまみを必要としないJ.C.ながら
「神谷バー」での定番は、いの一番にポテトサラダ。
さすがにそんじょそこいらのチェーン居酒屋とは
異次元の逸品が運ばれる。
自家製(たぶん?)マヨネーズを添えた一鉢はここのイチ推し。
ポテトの下にはオニオンスライスがたっぷり敷かれ、
一鉢で二度おいしい思いをさせてくれるのだ。

そうしておいて串カツをお願いする。
これもデパート屋上のビヤガーデンなんぞ、
足元にも及ばない真っ当なのが2本、
しんなりとしたキャベツを従えて登場する。
オマケにポテサラも串カツも
500円でオツリがくる庶民価格ときたもんだ。

その数日後、出先の本郷から一路、浅草を目指す。
「神谷バー」の生ビールをよりおいしく味わうために
歩いた、歩いた、テクテク、テクテクと炎天下を。

途中、差し掛かったのは入谷の鬼子母神。

 恐れ入谷の鬼子母神、びっくり下谷の広徳寺

地口で有名な鬼子母神である。
もっとも広徳寺のほうは
とっくの昔にはるか遠く、練馬に移転しちまってるがネ。

通りすがった入谷にチェーン居酒屋の「村さ来」があった。
何気なしに見た店頭のポスターは”ビアジャン祭”の広告だ。
スタッフとジャンケンして勝ったら
最初の1杯に限り、460円の中ジョッキが100円になるという。

よほど立ち寄ってジャンケンポンに挑もうと思ったけれど、
待合わせに遅れるおそれがあり、断念した次第。
ことがビールに及ぶと、
あと先のみさかいがつなくなる自分が何ともおぞましい。

=おしまい=

「神谷バー」
 東京都台東区浅草1-1-1
 03-3841-5400