2014年8月14日木曜日

第903話 串から串へと (その1)

20年来の友人、
と言っても音信不通のブランクが17年もあったが
出会ったときはハタチそこそこ、
今じゃ四十路を迎え、一児の母となって子育て中。
当ブログにも何回か登場したN美と数か月ぶりに会った。

その翌日からお盆休みで息子を引き連れ、帰省するという。
しかも2週間の長きに渡って―。
ふ~む、主婦とは実に気楽なものよのォ!
と言いつつも女性はたくましかった。
40代になりながら、それも育児のかたわら
コンパニオンのお仕事でけっこう稼いでいるんだと―。
いや、ご立派であります。

待ち合わせたのは杉並区・荻窪。
駅東口の改札に18時。
N美はいつものように先に来て待っていた。
これがエラいところでホメてやりたい。
若い娘サンたちにはぜひ見習ってほしいものだ。

訪れたのはうなぎ串焼きの専門店「川勢」。
実は数ヶ月前にも彼女と同行する予定だった。
ところが当日は大雪の予報、
互いに怖気づいて、デートはキャンセルの憂き目をみた。
その仕切り直しということである。

駅から歩いて2分足らず。
到着すると同時に店から初老の夫婦が出てきた。
われわれを見とめた旦那のほうが声を掛けてくる。
「ラッキーだネ、今、空いたとこ!」―
狭い店なのですんなり入店できないこともあるが
オジさん、べつに恩を売っているのではないらしい。

すると、カミさんがたしなめた。
「若い女性を見ると、すぐちょっかい出すんだからっ!」―
ハハ、いいでしょう、いいでしょう、
いくつになっても、世のオトコたちはそんなものサ。

確かに「川勢」は界隈の人気店。
いや、地元の常連のほか、
噂を聞きつけて遠出してくるファンも多い。
カウンター10席のみだから
オジさんの言う通り、ラッキーだったと言えなくもない。

入口近くの席に座った。
いや、マイッたな、焼き場の真ん前じゃないか。
とにかく暑いのなんのっ!
いや、暑いのを通り越して熱いんだわ。

=つづく=