ようやく世の中が動き出したせいか、
次か ら次へと誘いが舞い込むようになった。
いえ、こちらから声をかけるケースもあるけどネ。
さりとて現段階ではサシどまり、会食ならぬ対食である。
その夜は地元の友人と地元で対食。
谷根千の一翼を担う根津の中国料理店「海上海」へ。
以前、一度だけランチ利用したがディナーは初めてだ。
アサヒの中瓶を注ぎ合って乾杯。
腸詰とハーガウ(海老の蒸し餃子)、
そして大根餅(キャロットケーキ)を通した。
J.C.も相棒も長くシンガポールに暮らしたから
現地でチャー・タオクェと呼ばれる、
大根餅はさんざっぱら食べている。
素朴な味わいがあり、
肉骨茶(バクテー)同様、朝食の定番だった。
白ねぎのスライスを添えた腸詰がグンバツ。
海老ギョーそこそこ、餅それなりながら
ビールが進みに進み、早くも3本を数えている。
野菜モノがほしいとのことで
冷製じゃが芋の細切りと六種の青菜炒めを追加。
栄養バランスのよろしい組み立てだ。
ここで甕入り紹興酒に移行した。
てっきり大きな甕から汲み出され、
手頃なデキャンタでサーヴされると思いきや、
500mlの可愛い飲み切りの小甕がやって来るじゃないか―。
十年陳醸紹興花雕酒なる、ややこしい名前の中国産である。
花と酒の間の”雕”という文字、どう読むのか見当もつかん。
とまれ、肝心の味はなかなかのものだった。
冷製ポテトで口内をリセットして青菜炒めを—。
実際は青菜ではなく、六種のグリーン・ヴェジタブル。
陣容は、ブロッコリ・チンゲン菜・ピーマン・絹さや・
きゅうり・グリーンアスパラ、これぞ秋の六菜なり。
麻雀ならば緑一色(リュウイーソー)の完成だネ。
野菜はじゅうぶん過ぎるほど摂取したので今度は肉。
相棒のリクエストはラム肉と長ねぎ炒めの西域風。
西域ならスパイスはクミンが使用されるハズ。
「クミン、だいじょうぶだったっけ?」
「アッ、駄目だわ」
よって皮目パリッと身肉ジューシー、
だというアヒルの唐揚げを—。
ところが肉はパサついて
ちっともジューシーでないんでやんの。
まっ、紹興酒の援けを借りて何とかやっつけた。
麺・飯類にはとてもたどり着けず、これにてお開き。
そいでもって空っぽになった小甕だが
あまりに可愛いので、