2020年10月8日木曜日

第2498話 巣鴨では猫と鰯と胡瓜漬け (その1)

この日は文京年金事務所に用事があった。
30分で要件は満たされ、例によって
まだちょいと早いが、おチャケのお時間。
徒歩圏内の候補地は
大塚・巣鴨・茗荷谷・白山といったところだ。
 
狙いを巣鴨に定めて
A・ヒッチコックよろしく、北北西に進路を取る。
裏道をトコトコ歩いてしばらく、
左手前方より走り寄ってくる物体あり。
何だ、なんだ? それは1匹のキャットであった。
猫まっしぐらとまではいかないがタッタッタと駆けて来た。
 
淡い灰色の美しい毛並みはまぎれもないロシアンブルー。
何と言ってもJ.C.の好きな猫種は
アメリカンショートヘアと
ロシアンブルーでまったく甲乙つけがたし。
 
おう、おう、人なつっこいなァ。
向こうずねに頬寄せてスリスリ三昧じゃないか—。
おう、おう、ヨシヨシ、
猫は人の良し悪しを瞬時に見極めるからねェ。
 
手グセの悪い人のスリは勘弁だが
背グセの良い猫のスリスリは大歓迎。
思わず抱き上げてしまったヨ。
加山雄三の「お嫁においで」じゃないが
空に抱き上げて熱い口づけしよう、ってなもん。
 
しっかし、ずいぶん重たいねェ。
8kg はあるんじゃないかァ、ウチのアメショの倍はあるな。
いやはやとてつもなくカワユい。
みかん色の首輪が毛色にベストマッチときたもんだ。
ウチに連れて帰りたいが
それじゃキャットナッピングで手が後ろに回る。
 
それにしても無用心だなァ。
世の中、善人ばかりじゃないし、
裏道といっても車道は車道だぜ、時折りクルマが走ってる。
いったい何考えてんだか、責任者出てこ、もとい、
飼主出てこ~い!
10分近くも、われ裏道で猫とたわむる、を実践したが
結局、誰も現れなかった。
 
後ろ髪を引かれる思いでその場を離れたものの、
振り返ると、見てる、見てる、こっちを見てる。
心を鬼にして
「それがし、先を急ぐ身ゆえ、これにてさらばじゃ!」
まっ、実際はそうでもないんだけどネ。
 
=つづく=