柿の木坂陸橋をくぐり抜けると、
前方に見えてきたのは碑文谷警察署。
誰の設計だか存ぜぬが、およそ警察らしくない建物。
すり下ろしたような黄土色の壁面が醜悪ですらある。
碑文谷警察というより、碑文谷監獄だネ、これは―。
監獄が言い過ぎなら拘置所だ。
まだ明るいうちだからいいが、夜は怖いヨ。
碑文谷公園の弁天池を眺めて駅へ。
せっかく来たのでさっきフラれた「やっ古」を訪ねてみた。
やややっ、ブッタマげたな、もう!
以前、確かにこの店というか、この物件で飲んだことがある。
とっさに屋号が浮かばない。
店内を見たくてフラフラッと中へ。
女性店主に先刻電話した者と告げ、3日後の予約を入れた。
不動前で理髪のあと、歩いて来るに学芸大は適当な距離だ。
内装がほとんど変わっていないから居抜きだろう。
帰宅後、気になって調べると、此処は「よね津」という、
この町で人気の和食店だった。
訪れたのは2006年6月、15年もの月日が流れている。
そこでハタと思い当たった。
最後に学芸大を訪れたのはそのとき。
15年ぶりに再訪して足を踏み入れたのが同じ物件。
この町には飲食店が数百軒もあるというのにだ。
またもや単なる偶然とは思えず、呆然とする自分がいた。
さて、その夜の止まり木である。
学大十字街のホルモン焼き「一哲」のカウンターに。
立て看板に見入っていると、中から女性スタッフが現れ、
何となく懇願されちゃった気分、J.C.はこういうのに弱い。
目の前で焼かずともよいと言われ、それならと入店した。
ドライの中ジョッキとともに突き出しの酢モツが―。
コリコリ感のある筒状はコブクロだ。
真空低温調理の豚レバ刺しと玉ねぎサラダを通した。
焼肉用のレバが払底したための刺しだったが
パテとムースの中間感じが悪くない。
糸がきの掛かるサラダは玉ねぎが多過ぎて持て余し気味。
それでも血液サラサラに貢献してくれたハズ。
サントリー白州の炭酸割りをいただいて
勘定は2700円と、この手の店にしては割高感否めず。
思うところあって都立大に戻った。
一駅だけだが厄介な道のり、東横線に乗った。
スナック「S」は一昨年の9月以来。
のみとも・福チャンと自由が丘から流れて来た。
J.C.より年かさのママはおぼろげに覚えてくれていた。
自分のことをいつまで経ってもぎこちないとこぼす。
それこそ彼女のいいところで
「商売っ気たっぷりの水々しいママはいっぱいいるから
そのぎこちなさが返っていいんだヨ」―慰めてあげた。
お客はついに誰も現れず。
3日後にまた来るかもしれないと告げ、帰宅の途に。
今日も一日よく歩き、よく遊んだわ。
=おしまい=
「一哲」
東京都目黒区鷹番2-20-19
03-6452-2422