2021年4月23日金曜日

第2639話 復刻版 三越前の つたカレー

今は昔、中央通り&江戸通りが交わる室町3丁目交差点近く、

建物全体に蔦(つた)のからまるカレーハウスがあった。

袖看板に「インドカリーライス」とあるだけで店名はナシ。

界隈のOL・リーマンは「つたカレー」と呼んだ。

仕方なしにネ。

 

その復刻版を出す店があると聞いたのは最近。

とある午後の昼下がり、軽い腰をスッと立ち上げた。

向かったのは中央区・新川。

日本橋川・亀島川・隅田川に囲まれた、

中洲のような土地柄である。

 

江戸の昔、日本各地から米俵が集積したのは蔵前。

代わりに酒樽が集まったのはここ新川。

20年ぶりの「ラティーノ」は無事に生存していた。

記憶はうっすら残っていても

店内を懐かしむほど覚えちゃいない。

 

メニューに目当てが見当たらず不安になったが

壁にデッカく張り出されていた。

 

復刻版 つたのからまる 三越前インドカリー

辛口1100円  極辛1200

 

極辛に挑戦してみたいけど、途中で必ず後悔する。

おとなしく辛口をお願い。

 

おう、おう、懐かしいたたずまい。

豚肉・じゃが芋・にんじんがゴロンゴロン。

フォーク&スプーンを手にしたとき、

ペギー葉山の「学生時代」が頭の中で鳴り出した。

歌詞をちょいとアレンジさせてもらって・・・

 

♪   つたのからまるハウスで カレーを食した日

  米多かりしあの皿の 想い出をたどれば

  なつかしい味と香り 一つ一つ浮かぶ

  重い事案を抱えて かよったあの店

  春の日の食卓の ポークとクミンの匂い

  桜の散る窓辺 リーマン時代   ♪

    (作詞:J.C.オカザワ)

 

一匙すくって口元に運べば

ん? 旨いじゃないかァ、似てはいても三越前より旨いくらい。

クラッシュド・チリ(砕かれた赤唐辛子)のせいで相当辛い。

赤い模様がちりばめられ、これは三越前になかった光景だ。

 

コールスローみたいなキャベツサラダが恰好のフォーク休め。

福神漬け、皮付き大根漬け、たくあんもどき。

3種の大根の助けを借りながら食べ終えた。  

 

会計時、店主と言葉を交わす。

レシピをゆずり受けたわけではなく、

思い出し出し復刻させ、かれこれ3年になるという。

だのにこのハイレベル、いやはや、あんたはエライ!

店名の通り、夜にはラテンアメリカ料理を供するという。

 

帰り途、気にするところあって三越前まで歩いた。

つたのからまるハウスは痕跡すらとどめず、

そこには三井アーバンホテルが建っていた。

♪ ナンタ・ルチーア! ♪

 

「ラティーノ」

 東京都中央区新川2-7-7

 03-3206-2726