2021年4月9日金曜日

第2629話 白金の昼下がり

その3日後、メトロ南北線を降りたのは白金高輪駅。

理髪の前に軽くランチのつもりだった。

四の橋商店街から三光坂下を流してゆく。

 

四半世紀近くも以前、NYから帰国した頃。

界隈にGFの住まいがあってたびたび出没したため、

白金には親しみを覚える。

港区にしては庶民的な町並みが好印象だ。

 

飲食店がずいぶん入れ替わって気に染まる店が見つからず、

田町と恵比寿を結ぶバス通りを西に向かい、スタスタと―。

通りすがったのは喫茶店「サンドリアン」。

利用したことはないが存在は認知していた。

そうだなァ、サンドイッチでもいっとこうか―。

 

入ってみると先客はゼロ。

窓辺のテーブルに着き、メニューに目を通す。

トーストやサンドイッチのラインナップが豊富だ。

 

ナポリタン、ミートソース、カレーライス、

ドライカレーにカレースパゲッティなんてのもあった。

スープ&ドリンク付きのセットが950円。

喫茶店のミートソースはわりと好きだからお願いした。

飲みものはアイスティーを。

 

一風変わったスープがお椀で運ばれた。

しいたけの香りが立ち上る。

具材は、桜海老、油揚げ、ほうれん草に

大根のかつらむき、いわゆる刺身のツマだネ。

そして一番底にしいたけが1片。

ちょいと意表を衝かれる吸い物だった。

 

キャベツの繊切りを従えたミートソースは

ケチャップの甘みが主張する。

細めの麺は茹で置きの柔らかめ。

子どもの頃から食べてるタイプに不満はない。

むろんタバスコとパルメザンを活用した。

 

レモンのスライスを浮かべたアイスティーも

久しぶりに飲んだがスッキリとよかった。

桜も散ってこれからはホットよりアイスの季節だ。

窓の外を往き来するバスを眺めながら、しばしくつろぐ。

会計時、マスターに訊ねると

夜はカラオケスナックになるという。

 

外苑西通りを左折。

首都高目黒線の高架下は旧くからある店々が健在。

焼き鳥「酉玉」、とんかつ「すずき」、「丸金ラーメン」、

しっかり生き残っている。

 

プラチナ通りの坂を上って白金台。

庭園美術館の長い列はけっこうな密。

土曜日だから若いカップルが目立つけれど、

酔った勢いで夜更けにドンチャンやるよりよほどいい。

まっ、同じ港区でも白金と新橋じゃ雲と泥ほどの差があるな。

もっともJ.C.はどっちも好きなんですけどネ。

 

「サンドリアン」

 東京都港区白金5-8-14

 03-3442-4125