よく冷えた寒梅を味わった、その二日後。
再び「味の笛」にJ.C.オカザワの姿を見ることができた。
この日は元ママ・A子、現ママ・H恵と鼎飲の予定だ。
日取りを決めたのはひと月前だったが
当日は外飲みが許される最終日。
明日は緊事宣下となる前夜で本当にスレスレの線。
ここで郷ひろみの「How Many いい顔」、
その2番の歌詞がひらめいたが
大阪の小姑から苦情が舞い込みそうでやめとく。
H恵とは16時の待合わせ。
翌週、北陸へ移住するA子はかなり忙しく、
なんとか17時には駆けつけるという。
駆け込み飲み会でごった返すアメ横のパトロールを終え、
入店したのはフライング気味の15時半、独りで飲み始めた。
前々日同様にドライのあと、
2杯目のハーフ&ハーフを飲み干す頃にH恵が現れた。
さすがに今日は運動靴を履いちゃいない。
彼女もドライからH&Hへの流れ。
その間、J.C.は冷酒に移行していた。
二日前は新潟市の越乃寒梅だったから今日は佐渡の北雪。
この酒に初めて出逢ったのはマンハッタンの「NOBU」。
デ・ニーロ等が出資した伝説のヌーヴェル・ジャポネである。
酒は氷塊を敷き詰めた木桶に
突き刺された状態の青竹に注がれてあった。
北雪は1杯だけにして阿賀町の麒麟山に切り替えた。
越後の酒で今一番の気に入りはコレ。
生ビールを飲み終えた日本酒党の相方にも勧めると
好みにピッタリの様子、さもありなん。
気がつけば話題はいつの間にやらオペラ。
「ん? いつからオペラにハマッたんだい?」
「何言ってるの、オカちゃんに連れられて行ったじゃない」
「あん? いつ頃のハナシ?」
「‘91年の秋、ブゾーニの『ドクター・ファウスト』が初め」
「なんでまたそんな難解なオペラに?」
「H恵は忍耐強いオンナだからコレはオマエしかいない。
ほかのヤツでは耐え切れないからムリ」
有無を言わせず同伴したんだと―。
メトロポリタン・オペラハウスの南に隣接する、
NYCオペラはメトでやったりしたら
オールドファンがケツをまくる、
不人気な演目にも意欲的に挑んでいたのだ。
やはりどうにもつまんなくて苦しみ抜いた由。
ところが、ふた月後にちゃんとフォローしたらしい。
H恵のメトデビューはドニゼッティの「愛の妙薬」。
しかも主役のネモリーノがパヴァロッティと来たもんだ。
パヴァロッティを生で聴いたとあっちゃ
仲間とオペラ談義の際は鼻高々だったことだろうヨ。
=つづく=