渋谷駅から電車に乗って学芸大学へ向かった。
10日のあいだに3度目の学大である。
「次は池尻大橋に停車します」
ん? 何だ、なんだ!
東横線に乗ったつもりが田園都市線じゃないか―。
このときJ.C.、いささかも慌てず。
二子玉川で大井町線、自由が丘で東横線、
乗り換えれば、それで済むことだ。
さいわい、すべて東急電鉄だしネ。
しっかしこのところ、乗り越しや誤乗が目立つ。
つい最近まで谷根千界隈じゃブイブイ言わせてたJ.C.も
今じゃ単なるボケ高年、人生裏街道の枯落葉かァ!
誤乗のせいで「やっ古」の予約に遅れること15分。
カウンターの一番奥に通された。
店内をそっと見回すと、15年前とあまり変わっていない。
料理担当の店主と補助する接客係、女性二人体制である。
先客は単身男性が2人、互いの距離はじゅうぶんだ。
ハートランドの小瓶を飲みつつ、品書きをながめる。
最初にナルコユリとホタルイカのおひたしを―。
初めてお目にかかる鳴子百合は
接客のオネエさんによれば、ウルイのような山菜とのこと。
実際はウルイより緑濃く、歯ざわりも強い。
名前の由来は茎から垂れ下がる提灯状の花弁が
田畑でスズメを追い払う鳴子に似ているため。
プックリ太ったホタルイカは富山湾産に相違ない。
福井や兵庫だとこうはいかない。
2杯目は薩摩の芋焼酎、赤兔馬(せきとば)のロック。
同時に自家製の飛竜頭も―。
高級がんもどきは海老・ふきのとう・きくらげ入りらしいが
ふきのとうの香りは薄かった。
岐阜の三千盛を上燗でお願いし、カツオたたきを追加。
結果、このカツオくんが当夜のベストとなった。
ガス火の炙りでありながら、ほどよい香ばしさ。
何よりカツオ自体が良質である。
締めはもりそば。
店主自らが打ち、本日のそば粉は北海道・摩周産。
やさしい弾力のコシが滑らかな舌ざわりとノド越しを生む。
逆につゆはキリッとし過ぎて、もう少し甘みがほしい。
まっ、このあたりは好みですからネ。
それなりの満足感にひたりながらの会計は5500円ほどだった。
一筆加えておきたいのは接客の女性である。
飲みものは右から料理は左から、サービスの基本をわきまえて
一点の狂いもなく、一流ホテルのウエイター・クラス。
小松政夫じゃないけれど、あんたはエライ!
さて、今宵また都立大、こちらも10日で3度目だ。
しばらく来れなくなるが15年の放りっぱなしはあるまい。
年に2~3度は学芸&都立大に遠征しよう。
学徒ならぬ、学都出陣を心がけよう。
「手打ちそば
やっ古」
東京都目黒区鷹番3-4-13
03-4291-1012