台東区・不忍池と文京区・護国寺の間を
弧を描いて走る全長8kmの不忍通り。
その東半分、池から六義園までは
よく歩くコースで言わば縄張り圏内。
動坂下交差点そばのカフェの店頭メニューに
ボルシチとビーフストロガノフがあり、
常々、気になってはいた。
自家製だろうか? パン屋さんを兼ねている。
しかし、海老ピラフやナポリタンに混じり、
何でまたロシア料理が並んでいるんだろう。
思い切って、いや、思い切らなくてもいいんだが
一訪に及ぶと、フロアにマダムらしき女性。
カウンターに白いシェフコートのオニイさん。
喫茶店というより、やはりカフェの雰囲気だネ。
客たちの年齢層は極めて高い。
それもご婦人ばかりである。
二人掛けのテーブルに着き、
ストロガノフのセットをアイスレモンティーで通す。
添え書きにロシア風ハヤシライスとあった。
ナポリタンを食べてた婆ちゃんがマダムに話しかけた。
「今日はぜえんぶ、キレイに食べちゃったわヨ」
「わぁ、スゴい、頑張ったネ」
何だヨ、来るたんびに残してたんか―。
穏やかな時間がゆるゆると流れる。
5~6人の婆ちゃんグループがときどき笑い声を上げる。
サラダとともにディッシュが着卓。
ホントだ、どう見てもハヤシライスだ。
具材はビーフとマッシュルームだが
ソース主体で固形物は哀しいくらいに少ない。
肉片はホンの2~3切れ。
ビーフストロガノフを名乗るには少々無理がある。
ロシア人に出しでもしたら
北方領土は永遠に返ってこないだろう。
ところがスメタナ(サワークリーム)が功を奏し、
味付けはなかなか、美味しくいただけた。
小さめのポーションは年配者向きだ。
おざなりでないサラダも好印象だが
男性客がいないのは量的満足感を得られないためか―。
それにしても当店は婆っちゃまのパラダイス。
とめどなくパラパラとやって来る。
1200円を支払い、ドアを引くと
今度は不忍通りに面したオープンテラスで
爺っちゃまが二人仲よくコーヒーを飲んでいた。
いやはや、平均年齢が高い店だこと。
ん? そういうオメエも大して変わらんだろ! ってか?
ハイ、おっしゃる通り。
恥ずかしながらワン・ノブ・ゼムでした。
「カフェさおとめ」
東京都文京区本駒込4-40-6
03-3821-0808