練馬区・中村は「玄蕎麦 野中」。
わさびを当たっていると春色の膳が整った。
せいろは陶器の皿盛りながら、下に竹すだれ。
中太打ちは玄蕎麦というほど黒くはなかった。
天ぷらはボリューム満点。
ただ、品書きにあった、こごみの姿なく、
代わりにうるいが3本と結構な量だ。
1片のきのこは何だろう?
椎茸のようでいて、さにあらず。
おそらく大黒しめじだな、これは―。
簡単にはノビそうにもない、
そばを置いといて天ぷらをつまむ。
卓上の雪塩(ゆきじお)は
宮古島の海水から作る、きめ細やかな粉塩。
胡麻油たっぷりの江戸前天ぷらには合わないが
揚げ上がり軽やかなタイプにはもってこいだ。
小瓶はすぐカラとなるも
いえ、塩じゃなくてビールのネ。
今日はお上品にいってみよう。
お替わりを思いとどまった。
そばのコシは相当に強い。
これなら温系でもたやすくヘタるまい。
つゆには品のよい甘みがあり、
町そば屋の下世話な甘さとは一線を画す。
もっともJ.C.は、あの下世話さも愛するがネ。
薬味は大根おろし&さらしねぎだ。
卓上には雪塩のほか、黒七味と八味唐辛子。
なかなかにこだわるが
ぜいたくに使える本わさびが手元にある以上、
ほとんど出番がない。
かけそば系となれば、持ち味を存分に発揮しよう。
のちほど、そば湯に振ってみようか―。
天ぷらは車海老にさすがの滋味あり。
歯を押し戻す弾力が他のプロウンズとは異なる。
山菜では、ふきのとうの存在感が際立ち、
春の訪れを実感させる。
でもまだ2月半ばだぜ。
株価が景気を先取りするように
山菜たちもまた、季節を先取りするのだろう。
そんな健気(けなげ)な自然の恵みを
摘み取り、揚げて、食っちまうんだから
世に人間ほど罪深き生きものはいないネ。
オマエがよく言うヨ、ってか?
ハイ、仰せの通りデス。
北風が冷たいものの、陽射しはそこそこ。
冷える午後 日なたを歩けば 寒くない
どっかで聞いたセリフだな。
「玄蕎麦 野中」
東京都練馬区中村2-5-11
03-3577-6767