「とんかつ三矢」のポークソテーは美味しい。
焼き加減がとてもよろしい。
うっすらピンクのミディアムレア。
はす向かいに位置する「鳥安」のから揚げを
上回る出来映えかもしれない。
あちらはあちらでけっこうだけど―。
ただし、ポソテには難点が一つ。
ジンジャーソース自体はいいけれど
桃豚の上にべったりとおろし生姜が乗っていた。
生姜は仏語でジャンジャンブル。
だけど、こんなにジャンジャン乗っけなくとも―。
会計時、スタッフの女性に訊ねると、
当店は単なる東京進出ではなかった。
蒲田で居酒屋やそば屋を手掛ける、
中堅外食企業とのコラボだった。
なるほどネ。
しかし、俗人街・蒲田を基点とするグループが
何だって文京区・千駄木を択んだのだろう?
夜の深い蒲田と真ギャクに夜の浅い千駄木じゃ、
日々の売り上げはそんなに望めないハズだが―。
その翌日に即刻、ウラを返した。
二回目は上ロースである。
全メニュー中、上ロースとリブロースは
ハーフポーションでの注文が可能。
当然のようにハーフを発注した。
5切れのとんかつは金網に乗って登場。
皿の向こうに繊切りキャベツとカットレモン。
ライス半分、豚汁は多過ぎる具が
有難迷惑だったので具抜きをお願いしてある。
にんじん・ごぼう・白菜に加え、
豚の端切れ肉までがどっさり。
何だか鍋物を食べてる感じで重々しく、
ポークソテーに集中できなかったからネ。
過ぎたるは及ばざるが如し。
「豚汁がんばりました」―オネエさんの言葉に
「済まなかったネ、ありがとう」―謝辞で応ずる。
具外しがけっこう面倒みたいだ。
主役のとんかつは上ロースだけに上々の揚げ上がり。
ソテー同様、中心部がうっすらピンク、
いわゆる薄紅色である。
すると耳の奥で突然、裕次郎が
♪ 杏の花が 薄紅色だよ
丁度 去年の別れの頃のよに ♪
「涙は俺がふく」の3番を歌い出した。
=つづく=