暮れなずむ神楽坂。
色気漂う街に夜の帳が降りようとしていた。
17時半、開店と同時に焼き鳥酒場「駒安」に入店。
のみとも・B千チャンと訪れたのは3年前だ。
そのまた2年前、背肝(脾臓)が食べたくて
谷中・初音小路の「鳥真」に彼と出向いたが未入荷、
2年越しで谷中の仇を神楽坂で討ったわけだ。
好きな店なのに3年もの無沙汰。
口切りだから先客はいない。
ドライとキャベジン(キャベツ浅漬け)を通す。
この一鉢で一日分の野菜が摂取可能となる。
壁の品札を見上げた。
♪ 見上げてごらん 店の札を ♪
九チャンの歌声が聞こえてくる。
それはそれとして
フィギュアスケートの鍵山クンって
九チャンの若い頃に似てるよネ。
おや? ん? ありゃあ!
意中の背肝が見当たらん。
再び、ん? 十数枚の木札の中で
1枚だけ裏返っていた。
イヤな予感。
ヤな汗が一すじツツ~っと。
今度は小林幸子が歌い出した。
♪ もしかして もしかして
背肝にふられた時は
お酒の席のことだけど
笑ってごまかせない私 ♪
(作詞:美樹克彦)
「今日は背肝ないの?」
「ええ、入って来なくて・・・ごめんなさい」
「たまたま? それともずっと?」
「たまたまですけど、入らないと続くんすヨ」
二番手のオヤジさんとの会話である。
背肝の木札は背中を向けていた。
仕方なくハツモト、ふりそで(肩肉)を塩。
ねぎま、レバーをタレで通す。
大瓶をお替わりして、ソリ(もも肉の付け根)を塩。
締めはハラミ(横隔膜)をやはり塩で―。
ハラミのクニュクニュ感は大好きだ。
ここでハタと思い当った。
昔から背に腹はかえられないと言うけれど
そんなことないネ、
背肝にハラミはかえられました。
「駒安」
東京都新宿区神楽坂1-11
03-3260-3549