江戸川区・平井でようやく見つけた「みちのく」。
箸先でつまんだイカ塩辛はレベルが高かった。
明らかに手造りである。
ゲソ主体だがこれもまたよし。
ほうれん草のひたしも細い茎が柔らかく繊細。
人は見かけによらぬもの。
店も見かけによらぬもの。
予期せぬ当たりに頬がゆるむ。
ホタバタもマグブツもイケるものと思われた。
霜降り馬刺しは更にイケるんじゃないかな。
通してみた。
缶ビールのオジさんは頭上のTVにかぶりつき。
「ミヤネ屋」がウクライナ情勢を伝えている。
このとき別のオジさん二人連れ来店。
どちらも還暦は過ぎてるな。
テーブルに着き、酎ハイを発注した。
2本目の中瓶を追いかけるように
“熊”から届いた“馬”が運ばれる。
7切れの薄いスライスは偽りなく霜降り。
見るからに上物で口どけがすばらしく、
深川や吉原の馬肉専門店に
勝るとも劣らぬ代物だヨ、これは―。
甘みの勝ったニンニク醤油と
朝鮮焼肉店にありがちな塩&胡麻油。
小皿が2枚用意されたが
何のこたない、卓上のキッコーマンを
1~2滴垂らすのがベストだった。
突然、フロアに歌声が流れ出た。
掛け時計を見上げたら15時20分。
二人組がカラオケを始めたのだ。
オネエさんに訊ねると
カラオケは無料で歌い放題なんだと―。
若いほうが歌い出した「青いりんご」は
野口五郎の実質的デビュー曲。
初シングルの演歌が全然売れなかったからネ。
ポップス路線に切り替えての曲は簡単ではない。
それでもどうにか歌い切った。
続いてマイクを握った年かさは
同じ五郎の「私鉄沿線」と来たもんだ。
こいつはムリだろうと危惧したが
やはり高音が出ず、2番をギヴアップ。
相棒にマイクを預ける始末となった。
名誉挽回とばかり、年かさの再挑戦は
先月末に亡くなった西郷輝彦のデビュー曲、
「君だけを」で、こちらはOK。
そりゃ、五郎ナンバーとは難易度が違うわな。
追悼の意をこめた歌唱は思いのほかよかったが
これからずっと続くのを怖れて、勘定は2010円。
“かあちゃん酒場”を謳いながら
“かあちゃん”はいまだ出勤せずでした。
「かあちゃん酒場 みちのく」
東京都江戸川区平井3-30-8
03-3684-8605