2022年3月14日月曜日

第2970話 仙人の味 妻と娘に 引き継がれ (その2)

北区・十条の「玉屋」。

先代ゆずりの仙人ラーメンは

店の内・外装と裏腹にゴージャスだった。

 

どんぶりを彩るのは

もも焼き豚・シナチク・ナルト・ほうれん草、

そして半割りのゆで玉子。

はは~ん、犯人はこの半玉である。

 

物価の優等生の玉子だから

日本中が貧しかった時代すら

大したぜいたく品ではなかった。

しかしラーメンの具にはリッチすぎる。

 

あの時代、ゆで玉子が入ったり、

入らなかったりするのは単価の高い、

五目そばと相場が決まっていたんだ。

味玉トッピングなんてのも

ついぞ見たことがなかった。

 

細打ち麺はややちぢれ。

スープは煮干し&鰹節だそうだが

魚介をさほど感じさせない。

むしろ鳥ガラが主張している。

豚コツを使っているかも?

 

昭和のラーメンとしては

上品すぎて懐かしくなかった。

30年代からこんなに洗練されたスープを

作っていたのは驚きである。

 

焼き豚・玉子・ナルト・青ねぎ入りの半チャーハン。

ん? 「玉屋」は芸が細かいねェ。

お通しのシナチクにはねぎの白い部分。

仙人ラーメンに浮いていたのも白かった。

白&青を使い分けているんだ。

 

J.C.はたまさか自宅のキッチンで

中華鍋を振ったりするが

チャーハンや焼きめしには青い部分がよい。

ちょいと焦がしてやると風味が増してくる。

チャーハンには懐かしみを覚えた。

 

それにしても麺を半分にしといてよかった。

お勘定は1400円。

「ごちそうさまでした」

「ありがとうございましたァ!」

ハハハ、二人の声がハモッてる。

 

ラーメンの味がしっかり妻と娘に引き継がれ、

仙人はさぞかし、

草葉の陰で歓んでいるに違いない。

 

「玉屋」

 東京都北区十条仲原2-3-8

 03-3908-0068