南阿佐ヶ谷の「地中海料理
Sœurs(スール)」。
瞠目したのはカトラリーだった。
フランスのラギオール社製である。
センス抜群にして、とても扱いやすいのだ。
ナイフ&フォークはもとより、
ババガヌーシュをパンに塗りつけるための
バタースプレッダー(通称・バタベラ)まで同社製。
いやはや、お見それいたしやした。
30年近く以前のニューヨーク在住時代。
ある夏、休暇でローマを訪れたのだが
行き掛けにアルジェリアの首都・アルジェと
チュニジアの首都・チュニスにそれぞれ3日ほど寄り道した。
チュニスのブリックは前菜のせいか、ずっと小ぶりだった。
スタッフィングはツナと玉子の二択で
玉子をチョイスした記憶がある。
「Sœurs」のサイズはチュニスの3倍はあろうか。
ツナと玉子が同居し、黒オリーブとケイパーも。
パートフィロで半月状に包まれ、
イタリアンのカルツォーネに似ているが
むしろラヴィオロ(ラヴィオリの単数形)だネ、これは―。
クリスピーな皮にリッチな中身がともに美味い。
辛みの強いハリッサはクミンが主張していた。
中東や北アフリカで愛食される、
ババガヌーシュもよい合いの手だ。
ストーブでかじかむ手をあぶることたびたび。
ブリックがどんどん冷めてゆく。
まるで互いの性格の不一致に気づいてしまった夫婦の如くに―。
つかの間、地中海の風に吹かれたが
上州のからっ風ならぬ、関東の北っ風にはもっと吹かれた。
会計時(2310円)、店名の意味を訊ねたら“姉妹”とのこと。
以前の二人体制から今は独りになったが
その理由や彼女が姉さんなのか妹なのかは訊けなかった。
青梅街道を高円寺方面に踏み出してしばらく、
町場の寿司屋の店先に持ち帰り用メニューボード発見。
珍しい“すし屋の玉子サンド”が700円。
煮帆立、ポテサラ、にんじんサラダ、いなり(2個)は
オール300円で、見入っていると
引き戸が引かれ、中から女将さん現る、あらわる。
J.C.はこういうシチュエーションに弱い。
赤子の手がひねられるようにみんな買っちゃった。
その夜いただいた「宝寿司」の品々を
時間軸を無視して先に報告するとベストは玉子サンド。
ほかも水準に達していたが
煮帆立はかつお出汁の効き過ぎがちと残念。
それはそれとして東高円寺で青梅街道を離れ、
庶民的な商店街の坂を降りていきました。
「Sœurs(スール)」
東京都杉並区阿佐谷ヶ南1-9-7
03-6383-1509
「宝寿司」
東京都杉並区阿佐ヶ谷南1-8-6
03-3311-2233