2021年3月9日火曜日

第2606話 合いの手は スズキのクネル (その2)

「PEP」の店内は小ジャレており、中野の雰囲気ではない。

小テーブル2卓とカウンターに2階もあった。

先客はオッサン2人組、ヤングカップル2組。

親父の酒場を標榜する店に3人目の親父が現れたわけだ。

 

ビールは苦手な銘柄の生のみでパスした。

スーズの炭酸割りを所望する。

リンドウ科の植物、ゲンチアナの根茎を原料とする、

フランスのリキュールはピカソのお気に入りでもあった。

15種ほどのフードメニューから絞り込んだのは

 

根セロリのラペ 

すり身魚のクネル 

ズワイガニの焼立てスフレ

 

カニのスフレの気分ながら、あいにく二人用しかない。

すり身の魚種は何ぞや? 訊ねたらスズキとの応答。

即発注に及びながらクラフトレモンサワーをお願い。

白も赤もコップワインが250円と破格なのに

なぜか食指ならぬ、飲指“が動かない。

レモンサワーはレモンのパンチがあっても甘すぎた。

 

魚のクネルはフランス第二の都市・リヨンの名物料理。

内陸にあって海の無いリヨンはその代わり、

ローヌ&ソーヌの二大河川に恵まれて川魚料理こそ命。

代表格がクネル・ド・ブロシュ(川カマス)である。

 

J.C.は‘74年と‘07年の二度、リヨンを訪れているのに

残念ながら本場でこの料理を味わったことがない。

食べたのは、パリ・東京・ニューヨークにおいて

このうちパリだけはブロシュだったが

東京は平目、ニューヨークはシーバス(スズキ)だった。

 

お一人用のクネル(480円+)が焼き上がった。

甲殻類の殻を使用したアルモリケンヌ・ソースが香る。

主役のケネルはいわゆる魚団子だが、おでん種に例えれば

つみれ(摘み容れ)とハンペンの中間ってな感じ。

過去における、P・T・NYには及ばぬまでも合格だ。

 

3杯目はまだあまり知られていない、碧(あお)ハイ。

2019年に発売された5大ウイスキーのブレンド、

サントリー碧(Ao)のハイボールだ。

業界では、アイリッシュ・スコティッシュ・

カナディアン・アメリカン・ジャパニーズを

5大ウイスキーと呼ぶそうな。

 

だけどサ、よしんばボルドー5大シャトーの原酒を

ブレンドなんかしちまったら、どんなことになるだろう。

ぶどうの栽培農家、ワインの生産者とその愛好家、

フランス政府さえも、そんな暴挙を赦しはしまい。

 

初めて舌の上に転がした碧。

スコッチのスモーキーなモルトが一番主張してるネ。

でも、今のところサントリーのラインナップでは

グレーンウイスキーの知多がJ.C.にとって最高峰。

スッゴく高いのは飲んでないけど、

さように確信しております。

 

「PEP」

 東京都中野区中野5-55-7

 03-3387-3355