「PEP」の店内は小ジャレており、中野の雰囲気ではない。
小テーブル2卓とカウンターに2階もあった。
先客はオッサン2人組、ヤングカップル2組。
親父の酒場を標榜する店に3人目の親父が現れたわけだ。
ビールは苦手な銘柄の生のみでパスした。
スーズの炭酸割りを所望する。
リンドウ科の植物、ゲンチアナの根茎を原料とする、
フランスのリキュールはピカソのお気に入りでもあった。
15種ほどのフードメニューから絞り込んだのは
根セロリのラペ
すり身魚のクネル
ズワイガニの焼立てスフレ
カニのスフレの気分ながら、あいにく二人用しかない。
すり身の魚種は何ぞや? 訊ねたらスズキとの応答。
即発注に及びながらクラフトレモンサワーをお願い。
白も赤もコップワインが250円と破格なのに
なぜか食指ならぬ、”飲指“が動かない。
レモンサワーはレモンのパンチがあっても甘すぎた。
魚のクネルはフランス第二の都市・リヨンの名物料理。
内陸にあって海の無いリヨンはその代わり、
ローヌ&ソーヌの二大河川に恵まれて川魚料理こそ命。
代表格がクネル・ド・ブロシュ(川カマス)である。
J.C.は‘74年と‘07年の二度、リヨンを訪れているのに
残念ながら本場でこの料理を味わったことがない。
食べたのは、パリ・東京・ニューヨークにおいて―。
このうちパリだけはブロシュだったが
東京は平目、ニューヨークはシーバス(スズキ)だった。
お一人用のクネル(480円+)が焼き上がった。
甲殻類の殻を使用したアルモリケンヌ・ソースが香る。
主役のケネルはいわゆる魚団子だが、おでん種に例えれば
つみれ(摘み容れ)とハンペンの中間ってな感じ。
過去における、P・T・NYには及ばぬまでも合格だ。
3杯目はまだあまり知られていない、碧(あお)ハイ。
2019年に発売された5大ウイスキーのブレンド、
サントリー碧(Ao)のハイボールだ。
業界では、アイリッシュ・スコティッシュ・
カナディアン・アメリカン・ジャパニーズを
5大ウイスキーと呼ぶそうな。
だけどサ、よしんばボルドー5大シャトーの原酒を
ブレンドなんかしちまったら、どんなことになるだろう。
ぶどうの栽培農家、ワインの生産者とその愛好家、
フランス政府さえも、そんな暴挙を赦しはしまい。
初めて舌の上に転がした碧。
スコッチのスモーキーなモルトが一番主張してるネ。
でも、今のところサントリーのラインナップでは
グレーンウイスキーの知多がJ.C.にとって最高峰。
スッゴく高いのは飲んでないけど、
さように確信しております。
「PEP」
東京都中野区中野5-55-7
03-3387-3355