大田区・大森の「煮込
蔦八」を訪れたのは2017年の初夏。
当時は本店のみだったが現在は向かいに「はなれ」、
駅そばには焼き鳥に特化した3号店と勢力を延ばしている。
ビールはじゅうぶん飲んだから白鹿を熱めにつけてもらう。
つまみは煮込みの小サイズとまぐろ脳天刺し。
モツが苦手な相方は豆腐ばかりを口元に運んでいる。
まぐろ脳天の身肉自体はいいが、あまりにも筋っぽい。
麒麟山の冷たいのに切り替えた。
スッキリとした味わいが好みだ。
御徒町のマイ・ブレイクルーム「味の笛」でも
よく飲むのは麒麟山と越乃寒梅、冷酒は越後がシックリくる。
「何かほかに好きなモン頼みなヨ」
「ニンニクの丸揚げ」
耳を疑いやしたネ。
再度訊ねても応えは変わらない。
「そんなの食って、あとでキスなんかするとき、
塩梅悪いだろうが―」
「一緒に食べればいいじゃない」
仕方なく通してやった。
すると奴サン、食いやした。
J.C.も1粒だけつまんだけど残り全部、
赤ん坊の拳(こぶし)くらいあるヤツを完食しやがった。
あの声で蜥蜴(とかげ)食らうか時鳥(ほととぎす)
先人に倣えば
その面(つら)で丸揚げ食らうか銀座ママ
てな感じ。
いや、ニンニクは好きだが丸揚げは注文したことないな。
実は此処こそが今回、大森に連れ出した理由であった。
2分歩いてやって来たのは山王小路飲食店街。
通称、地獄谷である。
クラブの世界の頂点は銀座だろうが
スナックならば、こんな世界もあるんだぜ。
そこんところをぜひ、見せてやりたかったのだ。
八十路に差し掛かったママが独りで切盛りする、
「T」の店先に立つ。
ありゃあ、「T」がなくなってるヨ。
いや、物件は残っちゃいても店の名が「M」に変わってる。
この間の事情を知るためにも、そのまま「M」に入店した。
ところが祝日の土曜とあって本来のママの姿なく、
臨時の助っ人ママでは詳しいことが判らずじまい。
健在ではあるらしいと聞いて一安心の巻。
相方がハイボール2杯、当方は小瓶2本。
互いに1曲づつ歌い、
20時の閉店と同時にお開きとして帰宅の途に着いた。
ちなみに当夜、
くちづけが交わされることはございませんでした。
その気持ちすら、起こりませんでした。
「煮込 蔦八はなれ」
東京都大田区大森北1-38-1
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