上野松坂屋裏のワインバル「八十郎」。
白のボトルが空いて赤ワインに移行した。
卓上の料理も順調にその量を減らしている。
外飲みOKの最終日とあって店内はほぼいっぱい。
ただし、アメ横みたいにバカ騒ぎするグループはいない。
われわれも声音を抑制して思い出話に花を咲かせる。
‘90年代半ばのNYで毎年恒例の行事があった。
A子宅におけるニュー・イヤーズ・イヴ・パーティーだ。
ニュージャージーの古びた一軒家は
リビングが広いものだから毎年10人は集まっていたかな。
当日になると、J.C.は
時差の関係で朝放映されるNHK紅白歌合戦を録画する。
このビデオをA子宅に持参するのだ。
4~5年は続けた記憶がある。
料理上手のA子は
店の女のコたちに手伝わせてパーティーの準備。
男どもは手分けして酒を持ち寄る。
あとは歌合戦を観ながら、飲んだり食ったり歌ったり。
楽しい一夜を過ごし、新年を迎えるのだ。
御徒町に戻る。
珍しくもカベルネ・ソーヴィニオンと
ネッビオーロを合わせたチェレット・モンソルドは
カベソーを好まぬJ.C.の舌にも合った。
偉大なるネッビオーロの賜物である。
4日後には北陸の港町に移住するA子。
今一緒にいる銀ママも、さっき電話で話した鮨マネも
先日会食した小6ママすらも
み~んなA子の行く先を訪ねたいと口を揃える。
旅に飢えているのか、A子の人徳か、
おそらくその両方なのだろう、
時は容赦なく過ぎてゆき、ラストオーダーの時間。
Wママは協議の結果、しらす・大葉のペペロンチーニを―。
京都のおばんざいのじゃこみたいに
油で炒まって来るのかと思いきや、
釜揚げしらすがスパの上にそのまんまテンコ盛り。
まっ、3人で分け合うにはこれもいいか―。
このひと月あまり、何年も会っていなかった、
かつての仲間たちと立て続けに旧交を温めた。
15年もの無沙汰の末、10日で3度の学芸大がもたらした、
現象かもしれないから“学大シンドローム”と呼ぼうかな?
さりとて“久方ぶりシリーズ”は今宵で一段落。
緊事宣下でもあるし、しばらくは一人飲みに徹するとしよう。
最後に若山牧水のひそみに倣って一首。
コロ助の いまだ居すわる 春の夜の
酒は独りで 飲むべかりけり
=おしまい=
「ワインバル 八十郎 御徒町店」
東京都台東区上野3-22-3
050-5869-7785