2021年5月4日火曜日

第2646話 ザ・ウイメン・フロム・NY&GZ (その3)

上野松坂屋裏のワインバル「八十郎」。

白のボトルが空いて赤ワインに移行した。

卓上の料理も順調にその量を減らしている。

外飲みOKの最終日とあって店内はほぼいっぱい。

ただし、アメ横みたいにバカ騒ぎするグループはいない。

われわれも声音を抑制して思い出話に花を咲かせる。

 

90年代半ばのNYで毎年恒例の行事があった。

A子宅におけるニュー・イヤーズ・イヴ・パーティーだ。

ニュージャージーの古びた一軒家は

リビングが広いものだから毎年10人は集まっていたかな。

 

当日になると、J.C.

時差の関係で朝放映されるNHK紅白歌合戦を録画する。

このビデオをA子宅に持参するのだ。

4~5年は続けた記憶がある。

 

料理上手のA子は

店の女のコたちに手伝わせてパーティーの準備。

男どもは手分けして酒を持ち寄る。

あとは歌合戦を観ながら、飲んだり食ったり歌ったり。

楽しい一夜を過ごし、新年を迎えるのだ。

 

御徒町に戻る。

珍しくもカベルネ・ソーヴィニオンと

ネッビオーロを合わせたチェレット・モンソルドは

カベソーを好まぬJ.C.の舌にも合った。

偉大なるネッビオーロの賜物である。

 

4日後には北陸の港町に移住するA子。

今一緒にいる銀ママも、さっき電話で話した鮨マネも

先日会食した小6ママすらも

み~んなA子の行く先を訪ねたいと口を揃える。

旅に飢えているのか、A子の人徳か、

おそらくその両方なのだろう、

 

時は容赦なく過ぎてゆき、ラストオーダーの時間。

Wママは協議の結果、しらす・大葉のペペロンチーニを―。

京都のおばんざいのじゃこみたいに

油で炒まって来るのかと思いきや、

釜揚げしらすがスパの上にそのまんまテンコ盛り。

まっ、3人で分け合うにはこれもいいか―。

 

このひと月あまり、何年も会っていなかった、

かつての仲間たちと立て続けに旧交を温めた。

15年もの無沙汰の末、10日で3度の学芸大がもたらした、

現象かもしれないから“学大シンドローム”と呼ぼうかな?

 

さりとて“久方ぶりシリーズ”は今宵で一段落。

緊事宣下でもあるし、しばらくは一人飲みに徹するとしよう。

最後に若山牧水のひそみに倣って一首。

 

コロ助の いまだ居すわる 春の夜の

酒は独りで 飲むべかりけり

 

=おしまい=

 

「ワインバル 八十郎 御徒町店」

 東京都台東区上野3-22-3

 050-5869-7785