メトロ半蔵門線を水天宮駅で降りた昼過ぎ。
ここは日本橋蠣殻町。
駅上に祀られる水天宮は久留米水天宮の分社だ。
安産祈願にご利益のある神さまである。
妊娠中の相方を伴って参詣・・・と
言いたいところなれど、そんな相手もいないし、
今さら父親になる気など、
小池のタヌちゃんじゃないが、さらさらないっ。
新大橋通りをはさんで隣接する人形町に向かう。
今日の狙いは「シェ・アンドレ・ドゥ・サクレクール」。
パリ下町のビストロを謳う店だが
サクレクール寺院はモンマルトルの丘の上だぜ。
そこをパリ山の手とはいうまいが下町はどんなもんだかなァ。
さっそく店先のメニュー板をチェック。
あちゃ~! 本日の日替わりが
メカジキのトマト煮・ケッパー風味と来たもんだ。
それはないぜ、マドモアゼル!
何となれば、前夜の晩めしであった。
厨房に立って作ったのが
メカジキのバタ焼き・エストラゴンとケーパー風味。
魚種にとどまらずケーパーまで一緒じゃんかヨ。
ちなみにケーパーは英語、仏語ならカープル。
ケッパーはかつて日本人の仏料理人が間違えたまま、
広く人口に膾炙してしまった和声英語といえよう。
よって、J.C.はケーパーと表記することにしている。
もっとも若い頃はケッパーと呼んでたがネ。
今は昔、仏料理はグランドホテルの独壇場。
東京の街に真っ当な仏料理店は数えるほどしかなかった。
料理人の勘違いといえば
チコリとエンダイヴもいい例だ。
日本では欧米と正反対の表記がほとんど。
正しくは葉を閉じた小さな白菜みたいなのがエンダイヴ。
しわくちゃチリチリの葉を持つのがチコリ。
チリチリ・チコリと覚えてほしい。
その証拠に
ロンドン・ニューヨークでエンダイヴと呼ばれる野菜は
パリ・リヨンではアンディーウ、
ローマ・ミラノだとエンディヴィアだからネ。
なぜ日本で入れ違いが生じたのだろう。
思うにエンダイヴの別称がベルギー・チコリであるため。
往時のコックさんたちはいつの日からか
ベルギーを省いてチコリと呼び始めたハズ。
せめてベルチコとでも略せばよかったのになァ。
何事も省き過ぎると、禍の元になるんだネ。
=つづく=