2021年5月10日月曜日

第2650話 かねてより 渡りたかった 平和橋

千住新橋北詰から足立区を東へ1キロ半、

その後、葛飾区を南に貫通して

江戸川区役所手前で千葉街道と合流し、

船堀街道と名を変えるまで荒川左岸を走る平和橋通り。

東東京を縄張りとするドライバーには馴染みの道路だ。

 

名前の由来は中川に架かる平和橋。

今はクルマを運転しなくなったが

葛飾・江戸川両区をちょくちょく徘徊するため、

この通りには親近感がある。

いつか平和橋を歩いて渡りたいと思っていた。

 

水戸街道を過ぎ、京成押上線の踏切を渡り、

念願の平和橋、その北詰が見えてきた。

おう、おう、太鼓橋とは言い過ぎながら

中央が盛り上がってるヨ。

 

橋の手前に折よく、まいばすけっと。

これさいわいと、購入した缶ビールは

おとなしくレギュラーサイズの350mlにしておいた。

 

橋のたもとに立つ。

上下流ともに蛇行して流れる中川の水景が美しい。

隅田川とはまた違った趣きがある。

橋げたの下は北も南も左右(東西)にテラスが配され、

一休みするにはもってこいだ。

 

北西コーナーの岸辺に降りた。

風は冷たさをはらむものの、

陽射しに灼かれたベンチの木板が尻に熱い。

プシュッとやって携帯するプラコップに注いだ。

 

いや、美味いねェ、シアワセ感じるなァ。

ん? オメエはいつもそうじゃねェか、ってか?

ハイ、ご名答!

 

堀切菖蒲園駅前からの所要時間は40分。

15分ほどくつろいでさらに南へ。

新小岩まで半時間とかからぬハズだ。

 

蔵前橋通りと交差する、駅北側のたつみ橋に到着。

下に水の流れぬ橋はすっかりうらぶれて

京都・祇園の白川に架かる、巽橋とは似ても似つかない。

時刻はまだ14時過ぎ。

先刻のオムライスはほとんど未消化だ。

 

新小岩のランドマーク「魚三酒場」はじめ、

酒を出す店はみな扉を閉ざしていた。

そんななかで通し営業の「五十番」は

白地に赤く“味の店 中華料理”の文字と

雷紋を染めた暖簾を出していた。

腹は減っていなくともビールさえあれば、

餃子と一緒に注文するのになァ。

 

それもしばらく夢のまた夢、いさぎよく帰るとしよう。

何のために遠出してきたのか、よく判らんけど、

平和橋を渡れただけで満足感ささやかなり。