人形町の「シェ・アンドレ」で、さあ困った。
日替わりのターブル・ドート(定食)のつもりだったが
前夜とメカジキがかぶり、とても連荘する気になれない。
献立はほかに
クロックムッシュ、キッシュ・ロレーヌ、
グラタン(ミートソース&じゃが芋)、
本日のサラダ(この日はスモークサーモン)、
以上の4セットに惹かれるもの皆無。
男は黙って見切り千両、スッパリあきらめた。
此処は甘酒横丁、はす向かいに「玉ひで」がある。
親子丼を求める客でいつも長蛇の列なのに
誰も並んでないから緊事宣下の休業中と思いきや、
実際は開いており、列のない「玉ひで」を初めて見た。
「シェ・アンドレ」の真向いの店に目がとまる。
屋号「谷崎」の二文字に視線を奪われた。
J.C.とてティーンエイジは文学青年のはしくれ。
谷崎潤一郎の出生地は人形町と承知している。
店名はそこから拝借したものに相違ない
立て看板によると、夜のしゃぶしゃぶがウリらしいが
昼は手頃なメニューを取り揃えている。
文豪との関係を確かめたくて店舗のある2階に上がった。
おおっと、これは快適な空間だ。
馬蹄形のカウンターがとてもオサレ。
テーブルの配置スッキリと卓同士の間隔もじゅうぶん。
女性客が多いのもうなづける。
窓の向こうに「シェ・アンドレ」が見えた。
鳥から揚げはチキン南蛮、油淋鶏にアレンジ可能。
ハンバーグ、豚しゃぶなど、ほとんどの定食が1000円。
牛ハラミ丼は1300円だった。
豚しゃぶを通すと、ごまだれ、ポン酢、海苔わさびから
択べるというのでポン酢を―。
その際、カウンター内のスタッフに訊ねたら
谷崎との人的関係はなく、やはり生誕地だからとのこと。
帰宅後調べると、丁目・番地・号に至るまでまったく一緒。
はたして19世紀末にはどんな建物が建っていたのだろう?
運ばれたのは房総ポークの冷やしゃぶ、そこそこ美味しい。
付合わせの温(ぬく)い野菜は
エノキ・白菜・玉ねぎ・しめじ・にんじん。
豚汁の具は厚揚げ・じゃが芋・大根の茎。
そしてここにもエノキだ。
エノキに攻めまくられて仕舞いにゃ
コブラツイストでも仕掛けられるんじゃないか―。
おっと、そいつはエノキじゃなくてイノキだった。
いや、いや、谷崎&猪木とくりゃあ、
ここは一番、卍固めでキマリでしょうヨ。
「にんぎょう町 谷崎」
東京都中央区日本橋人形町1-7-10
03-3639-0482