2021年8月18日水曜日

第2722話 上陸したのは天然島

かくも長き緊事宣下にイライラが募って

ケツをまくったワケでもないが

越えてはいけない境界を越えてしまった。

 

その日、メトロ東西線を下車したのは浦安駅。

そう、此処は千葉県である。

軽くランチをと思い、駅周辺を物色するも

これといった店がみつからない。

 

浦安に見切りをつけ、

コンビニで缶ビールを調達し、本日の目的地を目指した。

向かったのは東京23 区内で唯一の天然痘、

じゃなかった、天然島の妙見島である。

天然島とは人の手による人口島ではない、自然島のこと。

妙見島は中洲さながら、旧江戸川に浮かんでいた。

 

浦安橋から島に上陸した。

適当な場所を探して水景を愛でつつ、ビールをと思いきや

堤防を乗り越えて川岸に下りることができない。

 

島全体を高さ2m超えの無粋な護岸フェンスが

目隠しのように覆い、川がまったく見えない。

仕方なく橋梁に戻り、上流を眺めながら無念のプシュ。

世話の焼けるアイランドだぜ、ったく。

 

島に再上陸し、ぶらぶらし始める。

何もない島だと聞いてはいたが、まさかここまでとは―。

あるのは工場ばかりで唯一の商業施設が

「マリーナレストラン トリム」。

ランチを食べ損ねたから入ってみた。

 

テラスの向こうに数艘の屋形船が舫われている。

葉山マリーナにでも来た気分と言ったらほめ過ぎか―。

まっ、葉山の海と浦安の川じゃ、

裕次郎(狂った果実)と森繁(青べか物語)ほどの

ギャップがあるもんネ。

 

メニューはハンバーグ、チキンソテー、

ハンバーガー、パスタ程度で選択肢は限定的。

店名を冠したトリムバーガー(1400円)を通すと

デカいバンにはさまれて、豚挽き主体のパティ、

モスバーガーのそれより分厚いトマト、

アーリィレッド、サニーレタス。

フレンチ・フライズは格子状のラティスカット。

いわゆるワッフルポテトだがあんまりうれしくない。

 

それにしてもハンバーガーは何年ぶりだろう?

2年? 3年? いや、もっとかな。

思い出せないヨ、頭が半分バカになっちまってる。

これがホントの半バーカ、ってか?

 

苦闘の末、やっぱり食べ切れんかった。

バンのクラウン(上半分)はクリアしたが

ヒール(下半分)はそっくり残した。

ポテトも半ばであえなく挫折の憂き目なり。

 

ちなみに店名の“トリム”は

刈り整える、手入れするのほかに

風受けのため、帆を調節するという意味もある。

そう、ここには船舶免許を取るための

ヤマハボート免許教室があるのです。

 

「マリーナレストラン トリム」

 東京都江戸川区東葛西3-17-16ニューポート江戸川2F

 03-6808-5188