2024年5月30日木曜日

第3547話 シリーズの最後を飾る ”五輪音頭”

神保町シアターの「戦前戦後 東京活写」
ようやく終わった。
わがツボにドハマリでずいぶん通った。
玉石混交のそしりは免れまいが
大詰め3本を紹介させていただきたい。

「噂の娘」(1935 PCL)
東京を活写とまでは言い難く、やや期待外れ。
ロケ自体が少ないので
さほど東京を楽しめない。
清洲橋だと思われる、
隅田川の風景が救いと言えば救いか?
落ちぶれた酒店が舞台で
エビスビールやキンシ正宗と
三ツ矢サイダーの看板はともかくも
リボンシトロンには懐かしく驚いた。

「狼と豚と人間」(1964 東映)
はっきり言って、まれにみる駄作。
いや、愚作のほうが当たっている。
あまりのヒドさに言葉を失った。
渋谷がちょっこり出てくるが
東京活写にはほど遠い。
「仁義なき戦い」に結実する前の試行錯誤か
快作「蒲田行進曲」を撮った監督と
同一人物とは信じられないほどである。
高倉健・三國連太郎・北大路欣也。
錚々たる顔ぶれの役者を無駄遣いしている。
監督・深作欣二にしちゃあ、
のちのカミさん・中原早苗と
出逢うきっかけとなった作品ながら
彼女にノボせ上がって
メガホンがおろそかになっちまってるヨ。

「東京五輪音頭」(1964 日活)
あの忌まわしきサンドクリークの大虐殺から
ちょうど100年後、タイトル通りに
東京五輪の年に生まれた作品は
ほとんど三波春夫の独演会だ。
鮨屋の親方と本人自身の一人二役。
同名主題歌もさることながら
「俵星玄蕃」を長々と熱唱。
「大利根無情」を聴きたかったが
忠臣蔵の槍の名人ならまだしも
やくざの喧嘩の助っ人・平手造酒では
オリンピックにそぐわないのだろう。
若かりし十朱幸代が可愛い。
先ごろ亡くなった、
デビュー間もない山本陽子も初々しい。
山内賢・和田浩治・沢本忠雄・上田吉二郎と
脇を固める男優陣がしっかり。
何より東京の下町があふれこぼれんばかり。
築地市場青果部、佃島の老舗佃煮店、
神田川最下流に架かる柳橋。
下町好きには堪えられない景色に目が潤む。

すでに新シリーズ、
「1960年代ー
 吉永小百合と私たちの青春」が
スタートしております。