2024年5月16日木曜日

第3537話 ぶらり荒川線の旅 (その3)

観戦はライト側の外野席だったが
目の前に右翼手・醍醐猛夫がいた。
成績不振により正捕手の座を追われ、
外野に回された年だった。
醍醐は早実時代、王貞治とバッテリーを組み、
大いに活躍した逸材である。

このまま終点(起点でもある)、
三ノ輪橋まで歩いてしまおうかー。
スポーツセンター前の千住間道を東進し、
1分ほどで日光街道に出た。
終点へは300mの距離である。

通りすがったのが円通寺。
江戸時代、下谷の広徳寺、
入谷の鬼子母神とともに下谷の三寺と呼ばれた。
彰義隊ゆかりの寺ながら
この寺を有名にしたのは
あの忌まわしき吉展ちゃん事件である。

吉展ちゃんは入谷南公園から連れ去られ、
その日のうちに殺害されてしまったが
遺骨が発見されたのは2年後、
この円通寺の墓地の片隅だった。

思うところあって帰宅後、調べてみたら
事件発生は1963年3月31日。
この数日後にJ.C.はそぐそばの東京球場で
野球を観戦したことになる。

誘拐現場の公園から
殺害現場の寺まではおよそ2.5km。
犯人・小原保に連れられて歩き、
子どもの脚だと1時間近くかかったろう。

小原は脚が悪く、引きずっていた。
これを吉展ちゃんにとがめられる。
「オジちゃん、脚が悪いんだネ?」
この一言で小原は
殺害を決意したと自供している。
このまま生きて返しては
犯人特定につながると踏んだのだ。

墓地に手を合わせ、
日光街道を南下してほどなく
通りの向こうに焼きとん「栃木屋」が見えた。
何も考えず、フラフラッと入店する。

カウンターのみの店内に先客は3人。
ドライ大瓶とまぐろ山かけを通す。
大瓶のお替わりと一緒にカシラ&鳥ももを塩、
レバ&シロをたれでお願いした。
店先のテイクアウト・コーナーには
主婦を中心に客が次から次と引っ切り無し。

滞空1時間弱でお勘定は2200円。
三ノ輪橋の駅にたどり着き、
これにて荒川線の端から端まで貫通の巻。
再び荒川線の乗客となり、
熊野前で日暮里・舎人ライナーに乗り換え、
終点・日暮里へ帰りましたとサ。

=おしまい=

「栃木屋」
 東京都荒川区南千住5-4-8
 03-3806-7951