2024年5月22日水曜日

第3541話 一里塚で ラムのクスクス

江戸川乱歩のミステリー「D坂の殺人事件」。
その舞台となった団子坂を上り、
大観音通りを真っ直ぐに都営三田線・白山駅。
降車したのは板橋区・志村坂上である。

此処には江戸開府を成し遂げた家康のお達しで
お江戸日本橋から一里ごとに設けられた、
一里塚が雄姿をとどめている。
都内ではあと一箇所、北区・西ヶ原は
飛鳥山のふもとにあるだけだ。

今日の昼食はチュニジア料理店、
「ブラッスリー・ジェルバ」。
前回の訪問は2012年だった。
ビートたけしが殴り込みをかけた「FRIDAY」。
その巻末のレストラン・ガイドの連載で
或る月に当店を取り上げたのだった。

チュニジアを旅したとき、
お世話になった当地のビール、
セルティアを飲みながら
ラムと魚のクスクスをツレと分け合った。

今回は当時置いてなかったドライ大瓶を通し、
ラムのクスクスをお願い。
その節はオーナー(チュニジア人)の
奥さん(日本人)が料理&接客のワン・オペ。
不意に現れたオーナーは
「お客さんの居る時間にごはん食べに来ないで!」
なあんて怒られてやんの。
どういう経緯か現在は現地の女性に替わった。

分厚いメニューの最初のページに彼女の写真。
”チーフのラウダ(オーナーの妹)は
 フランス語とアラビア語を話します”
但し書き付きである。

ビールを飲んでいると、
そのオーナーがフラリ現れた。
前回と同じシチュエーションだ。
接客するでもなく、調理を手伝うでもなく、
メシも食わずにすぐ消え去った。
ハハ~ン、こりゃ女房に逃げられて
母国から妹を呼び寄せたんだな。
そう思ったことでした。

クスクスはとても好かった。
上から掛けるためのスープはそのまま飲んだ。
チリペーストのハリッサが添えられ、
ラムすね肉・にんじん・ポテト・ピーマン・
ガーバンゾー(ヒヨコ豆)が
ふんだんに盛り込まれている。

ただ、いかんせん、量が多く残してしまった。
「クスクス・エ・トレ・ボン、
 メ、トレ・ボークー、パルドン」
「スネ・リヤン」
「シュクラン!」
(クスクスはとてもいいんだけど、
 多過ぎるんだよネ、ごめんなさい)
(いいの、いいの)
(ありがとう)
つたない仏語を久々に話したのでした。
最後の一言だけはアラビア語であります。

「ブラッスリー・ジェルバ」
 東京都板橋区小豆沢2-15-3
 03-6786-6187