2025年4月16日水曜日

第3776話 龍之介より 七歳年かさ

東大鉄門を背に薬学部の脇を歩き、
竜岡門から本富士警察署沿いを
南下して春日通りに出た。
東に降れば湯島天神下。
西なら本郷三丁目の交差点。
その角には400年の歴史を刻む、
「かねやす」がいまだに建っている。

本郷も かねやすまでは 江戸のうち

川柳で一世を風靡した大店は
口中医(歯医者)→ 歯磨き粉屋 →
洋品店と姿を変えて生き長らえたが
数年前に営業を停止した。
開業以来の変遷が面白く、
大岡越前まで出て来るので
興味のある方は検索してみてください。

そろそろ昼めしにしよう。
せっかく坂を昇って来たから
わざわざ天神下に降ることはない。
三丁目駅に近いうなぎの老舗、
「石橋亭」の暖簾をくぐった。

明治18年(1885)創業の満140歳は
東大に通った芥川龍之介より七歳年上。
彼は近所にあった牛鍋屋「江知勝」を
訪れているが「石橋亭」にも来てるネ。

一番搾りの中瓶を通すと
あさり入りの椎茸昆布が小鉢で来た。
突き出しどころか一品料理並みだが
仕上がりはまことによろしい。

当店の魅力は老舗にも関わらず、
良心的な価格設定である。
品書きを見てみよう。

うな丼   1700円
並うな重  2310円
うな重   2750円
上うな重  3190円
特上うな重 3960円 (税込み)

常に最少をお願いしている J.C.は
1700円のうな丼に小躍りしちまった。
(特上)で7~8千円取る店もある中、
石橋を叩いて渡りたい向きは
「石橋亭」に全員集合するべし。

一番搾りを飲んで待つこと10分。
半尾の蒲焼きを載せたうな丼が運ばれた。
うれしいことに好みの下半身だ。
さらに肝吸い付きもうれしい。
みつばと焼き麩が浮いている。
香の物もきゅうり・大根・たくあん、
手抜かりが見られない。

一時は入手困難だった山口の銘酒、
獺祭(だっさい)を1合700円で出す。
これまた良心の発露というほかはない。
大変美味しくいただきました。
お勘定は締めて金3150円也。
逆算したら椎茸昆布は150円でした。

「石橋亭」
 東京都文京区本郷3-24-3
 03-3811-3612