2026年7月27日月曜日

第4144話 或る子鳩との出逢いと別れ (その1)

先週のことだった。
定期健診のため、
日医大病院へ向かい、
谷中よみせ通りを歩いていた。

ん? 何だ、あれは?
向こうで何かが
パタパタしている。
道の真ん中で鳥らしきもの。
近づいてみたら鳩だった。

翼を傷めたらしく、
羽ばたきは可能でも
飛び立つのは無理のようだ。
しかし出血も無く、
瞳にも力があった。
人差し指で頭を突ついたら
ちゃんと反応する。

すると背後から今度は
バタバタと駆け寄る足音。
「私も、私も、心配でー」
30代と思しき女性が
今にも泣き出しそうな表情。

「クルマに撥ねられたのかな?」
「そうみたいですっ!」
場所はマルエツの真ん前。
彼女は肉や魚を包むビニール袋で
両手を覆っている。

そうして恐る恐る鳩を
道端へと移動させた。
「ごめんね、ごめんね、
 これしか出来ないのヨ」
そう、囁きかけながら。

「助かるかもしれないな」
「そうでしょうか?」
「動物病院に連れてってみるヨ」
「エッ? 本当ですか?
 お願いします、お願いします」
何度も頭を下げるんだ。

1年ほど前、よみせ通りに
アニマル・クリニックが
開業したことは知っていた。
鳩を両手で抱えて持ち込むと
院長らしき男性が血相を変えた。

「車にぶつかったみたいだけど」
「アッ、あの、ウチでは
 野生動物を診ることが
 できないんです」
「じゃ、どうしたらいいの?」
「保健所に連絡してください!」

(クソの役にも立たなねェな)
口には出さず大人しく引き下がる。
仕方ないから家に連れて帰った。
検診の時間が迫っているし、
ダンボール箱にタオルを敷き、
そこに置いてひとまず病院へ。

気が気じゃなく、
待ち時間も落ち着かない。
尻の座りが悪いのなんのっ。
かつてあった鳩の思い出が
あれこれと蘇るのだった。

=つづく=