2018年9月7日金曜日

第1954話 キッカケはまぐろすみそ (その1)

 荒川区在住の友人から
「まぐろすみそって何でしょうか?」―
こんなメールが到来。
何でも同区・町屋の食堂ですき焼きを食べてたら
壁の短冊に”まぐろすみそランチ”を発見したとのこと。

それなら店主に問えばよさそうなもんだが
訊ける雰囲気じゃなかったらしい。
ふむ、”まぐろすみそ”ねェ。
おそらくまぐろのぬたではなかろうか。
いや、それ以外には考えられないな。

取りあえず、そう応えておいたものの、やはり気になる。
品書きに”まぐろすみそ”の文字を目にしたことは
わが人生においてただの一度もないからネ。
「なり升」なる店名を教えてもらい、自ら出向くことにした。

着いてみれば、何度か利用した和食店のすぐそばだ。
当然「なり升」の存在に気づいてしかるべきながら
この店はとっくに夜の営業をやめてしまい、
ランチの提供のみに絞ったそうだ。
なるほど閉めてたら見過ごすわな。

店先のボードに”黒毛和牛すきなべ 千円”とあり、
驚きながらガラリ引き戸を引くと、迎えてくれたのは老店主。
奥から女将もお出ましに及ぶ。
二人合わせて160歳は超えていようか?

先客はゼロで結局、後客もなかったのだが
とにかくカウンターに着いた。
おう、ホントだ、”まぐろすみそランチ”があった、あった。
ほかに刺身、ぶつ、山かけも揃ってオール千円。
さっそく店主に訊ねると、やはりぬたのことだった。
では、いただきましょう! と相成ったが
残念ながらまぐろモノはやめちゃったとのこと。

ありゃあ、やっちまったヨと思ったものの、
こういうケースの切り替えは速いほうだから
さっき驚いた黒毛和牛に食指を動かす。
すきなべ、あおりなべ、スタミナ焼き、しょうが焼き。
以上が黒毛和牛メニューで
あとはオムレツ、月見、とろろがやはり千円均一。

ちょっと待ってヨ、すき焼きとオムレツが同値ですかい。
どんなすき焼きか見てみなきゃ判断できないけれど、
月見やとろろよりボリュームもあろうし、
原価コストだってかなり違うんじゃないの。
ご老体を傷つけてもいけないから
このあたりは問い質せなかったがネ。

=つづく=