2018年9月27日木曜日

第1968話 焼きとん・貝刺し・とんかつの夜 (その4)

高田馬場駅に着いたときには、とんかつと決めていた。
馬場にはとんかつの優良店が数多い。
駅前のビルの地下にも1軒あるが
せっかくだから未訪店が望ましい。

早稲田通りを東へ、馬場口方面に向かう。
たびたび利用した雀荘の手前を左折してほどなく、
「とんかつ ひなた」が姿を現す。
店頭のメニューを眺めていたら
中から女性スタッフが出て来て入店をすすめられた。
一番安いロースカツ定食(1300円)は売切れ。
(並)と(上)の違いはグラム数で肉質は同じとのこと。
あんまりデカいのは食いたくないが、仕方ないか―。

おや、おや、ずいぶんモダンでオサレなお店だこと。
瞬時に連想したのは半月前に落胆の憂き目を見た、
押上の「焼鳥 おみ乃」であった。
逆コの字形のカウンターのみというのも瓜二つである。

上ロース定食(1800円)をお願いする。
ビールはスーパードライの小瓶(500円)。
お通しは小さなポテトサラダ。
定食にはお新香とチャーシュウスープが付き、
+150円で豚汁に変更可能だが、せっかくの焼き豚汁に
追加まで払って豚汁にすることもなかろう。

卓上をチェックすると、塩はペルーのインカ&高知のあまみ。
オリジナルのさらさらソース&とんかつソース。
何に使うのか、イタリアのヴァージン・オリーヴオイル。
そんなこんながセットされていた。

待つこと10分、配膳された定食のカツは色白タイプで
その色、香りからして揚げ油はラードにあらず。
肉は宮城産の薬膳豚使用とのこと。
キャベツは山盛りにして、ごはんも多め。
ともに一回のみ、お替わり無料だ。
皿の脇に練り辛子がタップリと添えられていた。

新香はきゅうりと白菜に出来合いのしば漬け。
しょうがの効いた醤油味スープのチャーシュウは
カツ用の端肉でキャベツも千切りに適さぬ芯ばかり。
まっ、これを廃物利用とは言わんがネ。

どうにか頑張って完食した。
素材、調理が優れているおかげで胃もたれはない。
でも、ここで思い当った。
(並)と(上)が同じ肉なら違いは厚みだけだろう。
なぜ(並)だけ売切れになるのかな?
まさか、仕込みの段階で切り分けを済ませてはいまい。

この現象は、ランチタイムにそこそこ奉仕する代わり、
夜は客単価を上げたい経営方針の表れに相違ない。
「焼鳥 おみ乃」の”おまかせ誘導”と根っこは一緒だ。
利益追求を金科玉条とする経営者の宿命がここにある。

それでも焼きとん・貝刺し・とんかつと、
孤独の食べ歩きに歓びを見い出せた夜でした。

=おしまい=

「とんかつ ひなた」
 東京都新宿区高田馬場2-13-9
 03-6380-2424