2018年9月24日月曜日

第1965話 焼きとん・貝刺し・とんかつの夜 (その1)

その夕刻は東京メトロ東西線・落合駅で下車。
山手通りを南に歩いて東中野に到着した。
しばらくもしばらく、およそ20年ぶりの訪れである。
たたずまいに見覚えがあっても
駅舎は大きな変貌を遂げていた。

リトルタウンにつき、
目当ての「丸松」はすぐに見つかった。
道なりに歩を進めたら目の前に現れた、てな感じ。
店先に出張ったテーブル席の3人組は
すでにデキ上がりの様相を呈している。

逆L字形のカウンターに客が鈴なりとなって
電線に並んで止まる、ふくら雀の如し。
運よくL字のカドが1席だけ空いていた。
目の前の焼き手はおそらく店主だろう。
野方の「秋元屋」出身と聞いた。

彼に促されて腰を下ろす。
両脇はともにカップルの女性のほうで
この状態を両手に花とはいわぬが
着席の際に二人とも腰を浮かせて
なけなしのスペースを作ってくれた。
大衆酒場はこうでなくちゃいけない。
こちらは軽く会釈を返す。

瓶ビールはサッポロラガー。
近頃、この赤星は珍しくも何ともなくなった。
個人的にはむしろ黒ラベルのほうがありがたい。
とは言いつつも、その大瓶をトクトクトク。
クイッとやれば、小さなシアワセが身を包む。

焼きとんはレバ、ハツモト、シロを
味付け指定せずに1本(120円)づつ。
最初のレバは塩だった。
レバにはタレがベストだが素材に自信があるのだろう、
実際、上々の仕上がりであった。
ハツモトはナンコツに似ており、こちらは醤油味。
食べにくくはないものの、
入れ歯の方はハナからあきらめたほうが賢明。
シロが最後に来て、ここで初めてタレ。
シロのタレ焼き、これこそ我が焼きとん人生の原点なり。

冷たい宮の雪純米に切り替えた。
一世を風靡しているキンミヤ焼酎の造り手、
三重県・四日市の宮﨑本店が醸す日本酒がコレ。
ほかににごりと大吟醸があるが
大吟醸は入荷したその日に売切れとなる由。

宮の雪はまあそれなり、可も不可もナシといったところか。
やはり餅は餅屋、酒は造り酒屋だろうヨ。
何かつまみをもう1品、壁の品書きに目を凝らした。

=つづく=