2018年9月21日金曜日

第1964話 やっちゃ場から三角地帯まで (その4)

急ぎ足で到着したのは
京王新線・幡ヶ谷駅そばの「のっこい」。
みちのく生まれの女将が独り働きの和食店は
つい2ヶ月前にもおジャマしている。

当夜のお相手は30年来の友人・B千チャン。
なかなかに風変わりな人物で
J.C.のニューヨーク滞在時に遊びに来てくれたのだが
ビーバーの毛皮の帽子をかぶって現れた。
ジョン・ウェイン扮する「アラモ」の
デイビー・クロケット大佐みたいにネ。
あとで聞いたらビーバーじゃなくてアライグマだったが
そりゃそうだ、ビーバーなんか捕まえちゃいけないと思う。

あちら宮城の栗駒山、こちらサッポロの生で乾杯。
つまみは手軽なものから
自家製らっきょう、オクラ冷奴、まぐろ山かけ。
いずれもさりげない佳品で丁寧に正直に作られている。
まったくもって”安倍川餅”に見習わせたいくらいだ。

前回は雨天にもかかわらず、ほぼ満席だったが
今夜は好天なのに空いている。
好天に過ぎて常連は暑さにやられ、
引きこもっているのかもしれない。

伯楽星、日高見と冷酒のグラスを重ねてゆく。
追加の料理はマカロニポテトサラダとさば味噌煮。
このマカポテは注文が入って初めて取り掛かる、
正真正銘の自家製オーダーメイドだ。
不味い道理がない。

ビールに戻してサッポロ赤星。
日本酒を飲むとノドが渇くからネ。
そんなこんなで早めに切り上げた。
切り上げたが、このままでは終わらない。
行く先は三軒茶屋の三角地帯である。
距離的にはわりと近いものの、
乗り換えると遠回りだし、面倒くさい。
クルマで移動した。

二人落ち着いたのはスナック「L」の止まり木。
焼酎のロックをお願いすると、
なぜか出てきたボトルは麦焼酎のいいちこ。
あれっ、確か、芋の黒霧島をキープしたハズだがなァ。
まっ、いいか、和やかに歓談して楽しい夜を過ごす。

翌日、「L」のママからメール来信。
「お客様のボトルを手入れしてましたら
 オカザワさんの黒霧が出てきました。
 ごめんなさいネ、またのご来店を―」
ほら、言わないこっちゃない。
でも一瞬、自分の記憶力に疑念を抱いただけに
一安心した次第であります。

=おしまい=

「のっこい」 
 東京都渋谷区幡ヶ谷1-4-1
 03-3372-6550