2018年9月20日木曜日

第1963話 やっちゃ場から三角地帯まで (その3)

渋谷区・幡代で一飲するに恰好の「C」を見つけ、
舞い降りて翼を休めることにした。
入店すると若い女性のワン・オペで
先客はカウンターにワン・カップル。
壁に貼られた大きなポスターはビキニ姿のピチ娘。
アサヒビールのものである。
ハートランドに不満はないがアサヒならもっとよい。

さっそく生ビールを所望した。
おや?  ちと苦味が強いな。
こいつはアサヒでもなければハートランドでもない。
ビールの風味にはチョー敏感なマイ・タング。
キリンのラガーに間違いあるまい。
まっ、いいでしょう、いいでしょう。

カップルが去り、接客の女性と二人きり。
気を使った彼女がいろいろと話しかけてくれる。
バックバーにレッド・ストライプの空瓶が数本。
ジャマイカのラガービールである。

これをキッカケに話題はジャマイカに飛んだ。
互いに訪れたことのある島なので会話が弾む。
ものはついでとお替わりに
レッド・ストライプをお願いしたら
発注を掛けてるのに未入荷の由。 

続けて彼女が発した言葉にこちらは言葉を失った。
「マイヤーズがありますヨ」―
ジャマイカ産のダーク・ラムである。
宵の口にもならんのに、いきなりラムでっか?
 
敵(?)に後ろを見せるのは男の恥とばかり、
ヘンな見栄を張って飲みたくもない酒をロックでお願い。
するとスンゴいのが来た。
デッカいタンブラーになみなみと、
氷を差し引いて推し量るにトリプルは固い。
いや、その上のダブル・オヴ・ダブルだネ。
 
マイッたな、さすがのJチャンもたじろいだ。
でも飲んだだヨ、ヘミングウェイみたいに飲んだだヨ。
おかげで半ベロ状態になっただヨ。
幡ヶ谷はすぐ近くだけど、
待合せに遅刻必至となってのお勘定は1200円也。
 
帰り際に
「また来ます!って言った客はまず来ないでしょ?」
「そうなんですよねェ、残念ながら・・・」
「じゃ、もう来ないネ」
「ヤだっ!」

あれから再訪してないが
そろそろ顔を出してみようかな。
 
=つづく=