2018年9月13日木曜日

第1958話 落胆の人気焼き鳥 (その1)

青森県・H市から旧知の友が上京して来た。
一夜、旧交を温めることとして
はるか昔、二人でよく飲み歩いた浅草を舞台に択ぶ。

あれは1980年代初頭だった。
まだ四代目がつけ場に立っていた「弁天山美家古寿司」で
どうしても小肌が食べられない友に
親方が放った必殺技はにぎりのでんぐり返し。
絣模様の皮目をひっくり返してにぎって見せたのだ。
あまりの美味しさに瞠目した友はお替わりまでする始末。
あどけなさを残す笑顔が懐かしく思い出される。

浅草1丁目1番地1号、「神谷バー」入口で待合せた。
「神谷バー」には入らずに吾妻橋を渡り、墨田区・本所へ。
目の前にはフィリップ・スタルクの手になる、
黄金の炎がその美しい姿を惜しげもなく晒している。
何処のバカが言い出したんだろう、〇ンコビルだなんて―。
けっ、バチ当たりがっ!
ちなみに〇ンコの〇の字に誤植はいけませんゾ。
あくまでもア行であって、タ行やマ行は絶対にダメですヨ。

訪れたのはそのビルのアネクスにある、
アサヒビール直営の「TOKYO隅田川ブルーイング」。
ここは内装をマイナーチェンジしながら
コロコロと店名を変えることで不評を買っている。
アサヒのビールは旨いがマネージメントはアホ揃いだ。

相方は通常のスーパードライ、
当方はエクストラコールドをCODで買い求めた。
しげしげとグラスを眺むるに
値段が上がったのに容量は減っている。
かつては泡ナシや泡少な目をお願いしても
なみなみと注いでくれたのに今は泡が空間に変わった。

橋の向こうの「神谷バー」も同じ仕打ちをするものの、
ここはメーカー直営じゃないか!
儲けなんか考えずにファンを増やせヨ。
値上げ・減量をセコいと言うと自分自身がセコくなるので
あえて言わないが、おっと、言っちまったか。
しゃんめい、しゃんめい!

てなこたァ忘れ、再会を祝して乾杯。
珠玉の1杯は喉元をうるおすに余りある。
美味しい飲みものは思い出話に花を添えてくれる。
互いの問わず語りが続くこと半刻。
予約した店に向かった。

隅田川を吾妻橋で渡り戻らず、押上方面へと歩く。
今宵は相方のリクエストで
予約の取りにくい焼き鳥店を抑えてある。
指定された時間はバカバカしくも二巡目の20時。
普段こんなマネは絶対しないのにすべて友情のため。
かつては愛情だったこの友情のため。

=つづく=

「TOKYO隅田川ブルーイング」
 東京都墨田区吾妻橋1-23-36
 03-5608-3831