2021年4月5日月曜日

第2625話 都立01最後の日 (その1)

コロ助のせいでこの一年、格段に増えたのは

独り飲み、早帰り、包丁使用、そしてバス利用。

折も折、新聞記事により、都立01系統が

3月31日を持って廃止されることを知った。

 

世田谷区・成城学園前駅と目黒区・都立大学駅北口を結ぶ、

長距離系統の走行距離は10kmを超え、

車窓から四季の移ろいを感じ取れる路線だという。

余すところあと数日。

利用したことがないうえ、好きな桜新町を経由する。

がぜん行く気になった。

 

小田急線・成城学園前に降り立ったのは運行最終日。

1時間ほど町歩きを楽しんで桜新町に向かう予定だ。

最初にバス停の位置と時刻表を確かめた。

このとき、とある女性シンガーソングライターの声が

耳の奥で鳴り出したけど、

大阪の小姑にまた何か言われそうなのでやめとく。

 

時刻は11時半、空腹感はまったくないし、

ランチは桜新町でとるつもりなれど

バス停の真ん前に喫茶室を備えた、

洋菓子店「プレリアル成城」があった。

この町の人気店「成城アルプス」の支店だ。

 

一休みしていこう。

先客は女性の二人連れが二組。

お茶を飲み終え、ケーキを食べ終わり、もっぱらおしゃべり。

二組の間に案内された。

致し方あるまいと思いつつ、コーヒーを通す。

 

せっかく有名な老舗の分店に来たんだし、

ケーキを一ついただいとくか―。

ショーウインドウをのぞき、一番小さいシュークリームを―。

ふむ、フム、なかなか美味いモンだねェ。

だけどシュークリームを食うのは何年ぶりだろう?

おそらく成人してから初めてじゃないかな。

 

彼女たちの会話は続き、帰る気配すらない。

それにしてもよくしゃべるヨ、まったく。

オトコも酒が入るとウルサいがオンナはシラフで喧しい。

両サイドから攻め立てられ、あえなくギヴ・アップ。

滞空時間15分、尻尾を巻いて退散した。

 

北口に回ると駅前に「成城石井 成城店」。

名は体を表し、此処こそが発祥の1号店である。

昭和27年の創業時は果物店だった。

ん? 果物屋かァ、さっきの時刻表と合わさっちゃ

もうガマンできない、早くも脳内にあの曲が流れ始めた。

小姑よ、ゆるせ!

 

=つづく=

 

「プレリアル成城」

 東京都世田谷区成城2-25-9

 03-5727-3329

 

「成城石井 成城店」

 東京都世田谷区成城6-11-4

 03-3482-0111