2021年4月8日木曜日

第2628話 都立01最後の日 (その4)

柿の木坂陸橋をくぐり抜けると、

前方に見えてきたのは碑文谷警察署。

誰の設計だか存ぜぬが、およそ警察らしくない建物。

すり下ろしたような黄土色の壁面が醜悪ですらある。

碑文谷警察というより、碑文谷監獄だネ、これは―。

監獄が言い過ぎなら拘置所だ。

まだ明るいうちだからいいが、夜は怖いヨ。

 

碑文谷公園の弁天池を眺めて駅へ。

せっかく来たのでさっきフラれた「やっ古」を訪ねてみた。

やややっ、ブッタマげたな、もう!

以前、確かにこの店というか、この物件で飲んだことがある。

とっさに屋号が浮かばない。

 

店内を見たくてフラフラッと中へ。

女性店主に先刻電話した者と告げ、3日後の予約を入れた。

不動前で理髪のあと、歩いて来るに学芸大は適当な距離だ。

内装がほとんど変わっていないから居抜きだろう。

 

帰宅後、気になって調べると、此処は「よね津」という、

この町で人気の和食店だった。

訪れたのは2006年6月、15年もの月日が流れている。

 

そこでハタと思い当たった。

最後に学芸大を訪れたのはそのとき。

15年ぶりに再訪して足を踏み入れたのが同じ物件。

この町には飲食店が数百軒もあるというのにだ。

またもや単なる偶然とは思えず、呆然とする自分がいた。

 

さて、その夜の止まり木である。

学大十字街のホルモン焼き「一哲」のカウンターに。

立て看板に見入っていると、中から女性スタッフが現れ、

何となく懇願されちゃった気分、J.C.はこういうのに弱い。

目の前で焼かずともよいと言われ、それならと入店した。

 

ドライの中ジョッキとともに突き出しの酢モツが―。

コリコリ感のある筒状はコブクロだ。

真空低温調理の豚レバ刺しと玉ねぎサラダを通した。

焼肉用のレバが払底したための刺しだったが

パテとムースの中間感じが悪くない。

 

糸がきの掛かるサラダは玉ねぎが多過ぎて持て余し気味。

それでも血液サラサラに貢献してくれたハズ。

サントリー白州の炭酸割りをいただいて

勘定は2700円と、この手の店にしては割高感否めず。

 

思うところあって都立大に戻った。

一駅だけだが厄介な道のり、東横線に乗った。

スナック「S」は一昨年の9月以来。

のみとも・福チャンと自由が丘から流れて来た。

 

J.C.より年かさのママはおぼろげに覚えてくれていた。

自分のことをいつまで経ってもぎこちないとこぼす。

それこそ彼女のいいところで

「商売っ気たっぷりの水々しいママはいっぱいいるから

 そのぎこちなさが返っていいんだヨ」―慰めてあげた。

 

お客はついに誰も現れず。

3日後にまた来るかもしれないと告げ、帰宅の途に。

今日も一日よく歩き、よく遊んだわ。

 

=おしまい=

 

「一哲」

 東京都目黒区鷹番2-20-19

 03-6452-2422