朝の紅茶を飲みながら
昼めしはカレーにしようと決めていた。
カレー、カレーと申しやしてもいささか広うござんす。
はて、何処のカレーにしようかな?
そうだ、タイのグリーンカレーにしよう。
メトロ半蔵門線を錦糸町で降りた。
此処はリトル・バンコクである。
20年余り前、ニューヨークから帰国直後の短い期間、
この街で居そうろうをしていた。
マンションは錦糸堀公園に面しており、
週末の夜ともなるとタイの若い女性たちが
公園に集まって来てペチャクチャ、ペチャクチャ。
にっぽんの長屋のおっかさんよろしく、
井戸端会議をおっぱじめるのだった。
若い女性のタイ語はかん高くてよく響く。
7階まで聞こえて来るんだから、いや、マイッたネ。
タイ料理店はその名も「タイランド」。
10年ほど前、近くのトリフォニーホールで
コンサートがはねたあと、大勢で押しかけた記憶がある。
北口に出て店へ向かう道すがら
タイ古式のマッサージパーラーが何軒か―。
こんなに乱立してよく共倒れにならないものだ。
入口そばの二人掛けに通された。
グリーンカレーのセットをお願いし、
ダメ元でビールのおうかがいを立てるも
オニイさんに首を振られた。
ランチはほかにガパオライス、パッタイ(タイ風焼きそば)、
トムヤムラーメンといったラインナップ。
カレーには、鶏もも肉、ナス、タケノコ、
緑&赤ピーマンが投入され、けっこうなボリューム。
バジルに似たハーブはコブミカンの葉っぱだろう。
ライスも多めでジャポニカ米ながら
タイ風にサラッと炊き上げてあった。
キャベツ主体のサラダは
ドレッシングのナンプラーがキツく、
東南アジアの魚醤を得意としないJ.C.は持て余す。
日本のしょっつる、いしりはOKなんだけどなァ。
デザートはかぼちゃ入りタピオカミルク。
ドリンクはタイ紅茶のアイスを択んだ。
これはバニラ系の香料入り。
すべては食べ切れず、少々残してのお代は950円也。
さて、これから緊事宣下でも飲める店を探さねば―。
南口の「B」が門戸を開いているのは知っていたが
あまり“飲指”が動かない。
やはりあの街をめざすしか、策はないものと思われた。
「タイランド」
東京都墨田区錦糸3-12-10
03-3626-3885