2016年2月12日金曜日

第1294話 サメとカスベの一騎打ち (その1)

JR御徒町駅前にあるサカナのデパート「吉池」へは
月に数回出向いている。
珍しい魚介類に出会えるからだ。
昨年の十二月にもここで調達したボラの白子を紹介した。

去年だったか一昨年だったか、
「吉池」の本店ビルが建て替えられて
利用者としては売り場が広くなり、サカナたちの品揃えが
よりいっそう多彩になるだろうと期待したが
あにはからんや、逆に少なくなってしまった。

春日通りに面した1階のメインスペースをユニクロに明け渡し、
鮮魚売り場はその奥まった位置に押しやられ、
加工品や精肉は地下にもぐった。
期待外れもいいとろである。

それでも都内有数の鮮魚店につき、
今夜はウチで包丁を握ろうと決めたら
マスト・ゴー・オカチマチとなる。
すぐそばに松坂屋上野店があるのも強みだ。
行けば必ずデパ地下のほうにも目を配るようにしている。

1週間前。
独り御徒町に赴いた。
デパートにはこれといった収穫はなく「吉池」に移動する。
まぐろのサクが並ぶケースでは
本まぐろ・南まぐろ・ばちまぐろが揃い踏みである。

中にスペイン産本まぐろの中落ちが
比較的求めやすい値段で売られていた。
天然・養殖の明記がなく、どちらだか判断しかねる。
想像するに大西洋なら天然、地中海なら養殖だろうか?

ここ数年、地中海産の本まぐろを
ひんぱんに見掛けるようになった。
そのほとんどがトルコ、マルタ、チュニジアの産である。
ジャスミン革命発祥の地で
まぐろの養殖が行われていたのは意外だった。
同じ地中海でもイタリアとギリシャはまず見ない。

そこへスペイン産の登場ときた。
上記3ヵ国のまぐろはすべて食して
意想外の美味に舌鼓を打ってきた。
これは試さずばなるまい。
いつ買うか?
今でしょ。

中落ちだからこのまま食べるよりヅケにして長芋と合わせ、
山かけにしよう、そう頭の中で考えていた。
よって長芋を買い忘れてはならんゾ。

=つづく=