2016年2月24日水曜日

第1302話 パキスタンの思い出 (その3)

灼熱のカラチ。
チェックインしたホテルのバーテンダーの言うことにゃ、
数年前からパキスタンは厳格な禁酒国になったんだと―。
詳しく綴れば相当長くなるからハショるけれど、
クーデターによって国の指導者・ブットー大統領から
政権を奪取したニューリーダー、
ハク首相がイスラム法の強化を目指したことに起因する。

サウジアラビアのファイサル国王に
経済的支援を託した以上、西施の顰みに倣うが如く、
パキスタンはサウジ同様、
絶対的禁酒国の道を歩み始めたのだった。

「じゃあ、この国に酒は一滴もないの?」―
こう訊きたくなるよネ。
「まずムリです」―ニベもない。

仕方なくコカコーラか7-up でも飲んだんだろうか、
まったく記憶がないが場の空気は一気にシラけたネ。
気まずい雰囲気の中、口を開いたのはバーテンダーだった。

「例外があります」
「エッ、何でソレを早く言わないのっ!」
「でもボクたちには不可能なんで―」
「どういうこと?」
「カラチの高級ホテルに泊まれば、お酒を飲めるんです」
「よく判らんが、どのホテル?」

彼が挙げたのは
シェラトン、ヒルトン、インターコンチネンタルと
たぶんホリデーイン。
ふ~む、そんな抜け道があったのか。

取りあえずその夜はがまんした。
夜になって街に出たけど、
ライスの美味しいカレーにミネラルウォーターでしのぐ。

翌朝。
ブレックファーストもそこそこに引っ越す。
部屋を取ったのはインターコンチネンタルだが
予期せぬ余計な出費にフトコロが傷む。
こんなことなら真っ直ぐトルコに行っちゃえばよかったぞなもし。

荷物を部屋に投げ出して
降りて行ったのはスイミングプールである。
ジリジリと照りつける太陽の下、
デッキチェアに身を横たえた。

東京都内のホテルのプールとは正反対、
集まる人の絶対数が少なく快適だ。
人混みはストレスの元凶だもんねェ。
ところが・・・
ところがであった。

=つづく=