2016年2月19日金曜日

第1299話 サメとカスベの一騎打ち (その6)

ちょいとばかり多いかな? と思いつつも、
大根おろしとほぼ同量の釜揚げしらすを添えて
上から純米酢と生醤油を垂らす。
ついでに最近爆買いしたフレッシュ・ライムの果汁を少々。
実にビールのつまみとして申し分がない。

スペイン産本まぐろの中落ちは
生醤油&日本酒、同割りの下地に漬け込み、ヅケにしておく。
醤油はキッコーマンのしぼりたて丸大豆”生”。
酒は京都・伏見の月桂冠である。
青森の長芋をすりおろして上等の山かけが出来上がった。
わさびはもちろん伊豆の本わさび。
これを同じ月桂冠の常温でやる。
まずかろうハズもなし。

清酒の盃を重ね、いよいよサメとカスベの一騎打ち。
一騎打ちとはいえ、同じ鍋で煮付けたから呉越同舟状態だ。
うわっ、実に旨いじゃないのっ!
ほどよく脂ののったサメは横隔膜のクニュクニュがすんばらしい。
コラーゲンたっぷりのカスベは軟骨のコリコリがたんまらない。
もの心ついてからというもの、
サカナの煮付けはナメタやメイタなどカレイ類を第一としてきた。
カレイにサメとカスベを加え、これぞ煮付けのマイ御三家といたそう。

安価なチリ産シャルドネに切り替え、
グラスをキッチンに持ち込んでブール・ノワゼットの作成にかかる。
通常のレシピには無塩バター&塩なんぞと記されているが
ハナから有塩バターを使えばそれで済むことだ。
これもまた呉越同舟でササッとソテーしたら
同じチリの白ワインと白ワインヴィネガーを振りかけ、しばし蒸し焼き。
あらかじめ電子レンジで温めた皿に盛り付ける。

フライパンに残ったハシバミ色のソースに
ケイパー・パセリ・レモン果汁を解き放ち、材料をよくなじませ、
サカナたちにたっぷりとかけ回して食卓へ。
脇にはバゲット&バターも忘れない。
ナイフ&フォークでいただいて・・・う~ん、旨いぞなもし。

この5日後。
冷蔵庫から取りいだしたる物品は例のみそっかすであった。
ビールを飲みながらオーヴンでこんがりと焼く。
焼き上がったら月桂冠の上燗と一緒に食卓へ運ぶ。
小麦色の肌にところどころ焦げ目がついてヤケに美味しそう。

酒をクピクピ、肴をハフハフ。
その美味に身体がよじれて身もだえしてしまった。
こうなると高級粕漬店で
サワラだのギンダラだのを買うのがバカバカしくなってくる。

さて、気になる一騎打ちの結果だが
煮付けは引き分け、焦がしバターはカスベ、
みそっかすはサメの勝利でありました。

=おしまい=