2025年4月23日水曜日

第3781話 葛飾を 出たり再び 入ったり (その3)

京成小岩の「もつ処 山本」。
葛飾区から江戸川区に流れたわけだ。
ドライの中ジョッキと馬刺しを通す。
お通しは鳥団子と大根の炊いたの。
これがなかなか旨く、
当店は当たりだなと思わせた。

オニイさんに訊ねる。
「馬刺しは熊本産かな?」
「いいえ、今はもう・・・」
「そうなんだよネ、熊本でも8割近くが
 アルゼンチンやカナダだもんネ」
「おっしゃる通りです」

でも、この赤身がとても好かった。
あちこちで馬刺しを頼む馬刺し好きが
納得して大きくうなづいた。
生姜とニンニクはチューブだけど
さしたる問題じゃあない。
生中2杯にお通し込みで2250円也。

こんなもんじゃ、まだまだ飲み足りない。
飲み屋がごっそり集中する小岩へ向かおう。
進路を南に取って
京成小岩駅の前を通りすがると
今まさに亀有行きのバスが発車寸前。
頭ん中でチカチカッと何かスパークして
反射的に乗り込んじまった。

席に座ってから自身の説得にかかる。
小岩は1月にも来たし、
こち亀タウン・亀有は久しぶりだ。
結局は薬局、葛飾に戻ることになった。

ただ、このバスは
真っすぐ亀有には向かわない。
北小岩の町をグルッと回ってゆく。
鉄道駅の無い地域の住民を拾ってゆく。

挙句の果ては亀有とは
まったく逆方向の小岩駅に来た。
ここで降りたら自分でも
何をやってるのか判らなくなる。

そんなこんなで京成線なら
一駅の高砂まで30分も掛かったヨ。
そしてそこから亀有までまた30分。

駅南口方面を徘徊するも適当な店がない。
北口に移動してもつ焼き「江戸っ子」の
カウンターに座った。
同じカウンターでも向かい側は立ち飲みだ。

壁の貼り紙は
週刊現代で東京で一番!と言われた
特製ハイボール 440円
当店でしか飲めません

飲んでみて確かにそこそこながら
そこまでかな? 疑念も浮かぶ。
大ぶりの串は2本しばり。
レバとシロをタレで
それぞれ2本づつ焼いてもらった。

レバは好かったんだが
シロは下茹で不十分で硬いのなんのっ!
歯とアゴを必要以上に酷使し、
どうにか飲み込みましたとサ。
昔から飲み込みは早い方なんでネ。

葛飾を出たり入ったりの一日は
これにて幕を閉じましたとサ。

「九州料理 もつ処 山本 京成小岩店」
 東京都江戸川区北小岩6-10-8
 050-5594-5323

「江戸っ子」
 東京都葛飾区亀有5-32-1
 03-3605-0619

2025年4月22日火曜日

第3780話 葛飾を 出たり再び 入ったり (その2)

「高木家」で一憩に及び、
せっかく柴又に来たから
新装なった「寅さん記念館」へ。
此処も6年前に訪れたが
新しい趣向が増え、
ずいぶん楽しめるようになった。

隣接する以前は無かった、
「山田洋次ミュージアム」にも入館。
双方で2時間近くを費やした。
ハマると時を忘れる性格なんでネ。

はて? これからどうしよう。
思い浮かんだのは
やはり去年、来は来たが
お盆休みでフラれた京成小岩の酒場、
「三平」に行ってみよう。

定休日なんてこともあり得るが
その時はその時だ。
スマホのお世話にならず、
調べもしないでズンズンズン。
柴又街道を小岩に南下する。

この街道ははるか南、
旧江戸川にブチ当たるまで続く。
途中、何台もの金町発小岩行きバスに
追い越されながらテクテクテク。

京成本線の線路を渡ると江戸川区。
ほどなく街道沿いの「三平」に到着。
アチャ~! 
本日は木曜で定休日と来たもんだ。

こんなことは覚悟の上。
江戸川区最大の繁華街、
小岩に廻れば済むことだ。
いや、その前に駅の反対側を見てみよう。

レトロ感いっぱいにつき、
好きな道筋、千代田通り商店街を流すも
これといった店舗はまったくナシ。
可愛いけれど、性格に難のある娘みたい。

去年のお盆にお世話になった、
「ラーメン 殿」の数軒隣りに
九州料理を出す居酒屋あり。
「もつ処 山本」という。
店頭の写真に馬刺しを見とめ、
渡りに舟と暖簾をくぐった。

時刻は開店間もない17時15分。
17~18時はハッピーアワーで
飲み物がディスカウントされ、
ハッピーはラッキーにつながる。

ワンオペのオニイさんに促され、
壁際の二人掛けに着卓した。

=つづく=

「寅さん記念館」
 東京都葛飾区柴又6-22-19
 葛飾区観光文化センター内
 03-3657-3455

2025年4月21日月曜日

第3779話 葛飾を 出たり再び 入ったり (その1)

朝食のトーストをかじりながら
今日は葛飾柴又に行くと決めた。
行き方は二通りある。
千駄木から常磐線直通の千代田線で金町。
京成金町線に乗ってもいいし、
歩いても遠くはない。

いま一つは日暮里まで歩き、
京成本線で高砂へ行き、
そこからやはり金町線か徒歩。
日暮里経由にした。

高砂駅に着いて脳裏を掠めたのは
去年のお盆に一度おジャマした「新角」。
いろいろチョコチョコつまんだが
立ち食いそばとは思えぬほど、
何を食べても粒ぞろい。
帝釈天へ行き掛けの駄賃にしよう。

遅番のオジさんとは
別人の二人が立ち働いていた。
店主とその奥さんかな?
息が合っている。

黒ラベル缶と小カレーをお願い。
物腰の柔らかいオバちゃんの優しい言葉。
「スープが付くんですけど、
 ビールをお飲みになっているんで
 どうしましょうか?」
「けっこうですヨ、いただきます」

豚小間と玉ねぎのカレーの横に
福神漬けがチョコン。
スープはラーメン用の清湯だ。
ササッと片付けてごちそうさま。
柴又へ向かった。

帝釈天(題経寺)に手を合わせ、
今来た参道を逆戻り。
川魚料理の「川千家」だと
おお事になるので
寅さんシリーズにたびたび登場する、
明治元年創業「高木家老舗(ろうほ)」へ。

文字通りの老舗(しにせ)は
映画の舞台となった「とらや」。
のちに「くるまや」のモデルである。

入口で注文と精算を済ませ、
レシートとテーブルの番号札をもらって
着卓するシステム。
当店は2019年の年の瀬以来だ。
あのときはハマのT子と一緒だった。

注文はドライの中瓶に草だんご。
だんごは2串の計6粒。
草だんごでビールを飲むのは
西新井大師門前の「清水屋」以来だ。

甘い物はあまり好まぬが
ビールとの相性は意外に悪くない。
正月なんか、おせちのきんとんで
ビールや酒を飲むものネ。

=つづく=

「新角(しんかど)」
 東京都葛飾区高砂5-36-10
 03-5699-1653

「高木家老舗」 
 東京都葛飾区柴又7-7-4
 03-3657-3136

2025年4月18日金曜日

第3778話 カレーにじゃがは 不要じゃが

8年ぶりに麻雀を打ったせいであの時、
役満を上がったカレーの専門家、
O野チャンのことを思い出した。

JR新橋駅のそばに
「カレーのスマトラ」なる店がある。
 J.C.は未踏ながら
彼の生前、訊ねたことがあった。

「新橋の『スマトラ』って美味しいの?」
「うん、スパイスは余り香らないけど
 そこそこかな?」
オススメでもなさそうだから
そのままにしておいたが
ふと思いついて赴いてみた。

コの字カウンターだけの店内。
ワンオペのオニジさんが
笑顔で座る席を示してくれた。
先客は単身者2人だ。
カレーは1種類のみ。
数少ないメニューを記しておく。

スマトラカレー 740円
カレー大盛 1100円
キャベツサラダ 60円
らっきょう 90円
生卵 60円

これだけ。
普通盛りとキャベツサラダに
黒ラベル小瓶をお願いした。
卓上の薬味は福神漬け2種に
紅生姜と刻みたくあん。

皿盛りのライス全体に
ルウがブッカかって登場した。
具材は豚小間と溶け残ったじゃが芋。
溶け残ったということは
ルウに芋が溶け込んでいるのだ。

O野チャンが指摘した通り、
スパイス感はない。
それよりじゃが芋が余計なんだ。
J.C.は自分でカレーを作る際、
じゃが芋は断じて使わない。
豚バラ・玉ねぎ・ニンニクの御三家に
にんじんはその時の気分次第。

それでも「スマトラ」のカレーには
根強いファンが巣食っているようだ。
小瓶のお替わりともども勘定は1400円。

小瓶300円は破格である。
世間の相場は立ち食いそば屋が400円。
ちょいとシャレたイタリアンだと、
7~800円はするからネ。

散歩の途中、
当店で一休みしたいけど
さすがにビールだけは頼めません。

「カレーの店 スマトラ 新橋本店」
 東京都港区新橋1-6-10
 03-3501-3826

2025年4月17日木曜日

第3777話 峠のアタマで飲むビール

この日は久しぶりに麻雀。
先日、TBS リユニオンの際、
卓を囲もうという話になって実現した。
調べたら8年前の昭和の日に
高田馬場の雀荘で打って以来だ。

今は亡き、のみとも・O野チャンが
国士無双を上がったのを覚えている。
振込んだW辺サンとは
しばらく会っていないが元気だろうか?
訃報が届いてないから生きてると思う。

武士は腹が減ると戦が出来ないけれど
J.C.の場合はノドが渇くと戦ができない。
決戦の前のノドごしらえは先月、
市川雷蔵の映画を観る前に利用した、
有楽町ガード下の「荻野屋 弦」。
峠の釜めしで一財産作った会社の出店だ。
実は戦場も同じ有楽町のガード下。
両者の距離は徒歩1分である。

ビールはハートランドの小瓶のみ。
日本酒は長野と群馬の産で
品揃え豊富ながらビールは手薄。
もうちょっと何とかして欲しい。

と言いつつも、小瓶のお替わりと
峠の釜めしのアタマをお願いした。
いわゆる荻野屋名物のめし抜きだ。
内容はかくの如し。

甘辛醤油味の鶏肉&ごぼう
うずらの玉子
竹の子&どんこしいたけ
薄紅しょうが&グリーンピース
栗&あんず

以上が税込み968円。
峠の釜めしはここに
釜めしと香の物が付いて1400円。
アタマは恰好のビールの友となった。

碓氷(うすい)峠のふもとで
明治18年に開業した「おぎのや」。
奇しくも昨日紹介した、
本郷の鰻屋「石橋亭」と同い年である。
単なる偶然とは思えないが
まっ、偶然だろうネ。

そんな「おぎのや」は
今では駅売りというより、
高速道路のSAの売上が
収益の柱となっている模様だ。

とはいうものの創業以来、
旧国鉄と育んだ友情(?)は
未だに消えることなく、
JR神田駅のガード下にも支店を開いた。
ガード下の家主は当然 JR東日本。
家賃の優遇もあろうかと思われる。

ちなみに本店のある碓氷峠は
信濃川水系と利根川水系の分水嶺。
長野に降った雨は日本海へ。
群馬に降った雨は太平洋へ。
北と南の泣き別れ、
それが降る雨の運命なのです。

「荻野屋 弦」
 東京都千代田区有楽町2-9-8
 エキュートエディション有楽町内
 03-6810-0211

2025年4月16日水曜日

第3776話 龍之介より 七歳年かさ

東大鉄門を背に薬学部の脇を歩き、
竜岡門から本富士警察署沿いを
南下して春日通りに出た。
東に降れば湯島天神下。
西なら本郷三丁目の交差点。
その角には400年の歴史を刻む、
「かねやす」がいまだに建っている。

本郷も かねやすまでは 江戸のうち

川柳で一世を風靡した大店は
口中医(歯医者)→ 歯磨き粉屋 →
洋品店と姿を変えて生き長らえたが
数年前に営業を停止した。
開業以来の変遷が面白く、
大岡越前まで出て来るので
興味のある方は検索してみてください。

そろそろ昼めしにしよう。
せっかく坂を昇って来たから
わざわざ天神下に降ることはない。
三丁目駅に近いうなぎの老舗、
「石橋亭」の暖簾をくぐった。

明治18年(1885)創業の満140歳は
東大に通った芥川龍之介より七歳年上。
彼は近所にあった牛鍋屋「江知勝」を
訪れているが「石橋亭」にも来てるネ。

一番搾りの中瓶を通すと
あさり入りの椎茸昆布が小鉢で来た。
突き出しどころか一品料理並みだが
仕上がりはまことによろしい。

当店の魅力は老舗にも関わらず、
良心的な価格設定である。
品書きを見てみよう。

うな丼   1700円
並うな重  2310円
うな重   2750円
上うな重  3190円
特上うな重 3960円 (税込み)

常に最少をお願いしている J.C.は
1700円のうな丼に小躍りしちまった。
(特上)で7~8千円取る店もある中、
石橋を叩いて渡りたい向きは
「石橋亭」に全員集合するべし。

一番搾りを飲んで待つこと10分。
半尾の蒲焼きを載せたうな丼が運ばれた。
うれしいことに好みの下半身だ。
さらに肝吸い付きもうれしい。
みつばと焼き麩が浮いている。
香の物もきゅうり・大根・たくあん、
手抜かりが見られない。

一時は入手困難だった山口の銘酒、
獺祭(だっさい)を1合700円で出す。
これまた良心の発露というほかはない。
大変美味しくいただきました。
お勘定は締めて金3150円也。
逆算したら椎茸昆布は150円でした。

「石橋亭」
 東京都文京区本郷3-24-3
 03-3811-3612

2025年4月15日火曜日

第3775話 忍ぶ不忍 無縁坂

今日の朝めし前ならぬ、
昼めし前の散歩は不忍池のほとり。
朝食のサンドイッチ作成で
残ったパンの耳をぶら下げていった。

満開の桜に引き寄せられて
来たついでにボート遊びの人が多く、
乗り場の係員は大忙し。
チョイ悪オヤジはその間隙を突いた。

彼らが暇だとマイクで怒鳴られる。
「鳥や魚にエサをやらないで下さ~い!」
大衆の面前でアレをやられると
バツが悪いからネ。

一番人気ならぬ、
一番元気なのはユリカモメ。
ちぎったパン耳を放ってやると
ホヴァリング(停止飛行)が
得意な彼らは難なく空中キャッチ。
ハトやカラスにこんな芸当はムリだ。

ボート池をめぐって不忍通りを横断。
「東天紅」の脇を入ると
前方に無縁坂が見えてくる。
グレープのさだまさしが
歌い出すのも当然の成り行きである。

♪   母がまだ若い頃 
  僕の手をひいて
  この坂を登る度
  いつもため息をついた
  ため息つけばそれで済む
  後だけは見ちゃだめと
  笑ってた白い手は 
  とてもやわらかだった

  運がいいとか悪いとか
  人は時々口にするけど
  そうゆうことって
  確かにあると
  あなたをみててそう思う

  忍ぶ不忍(しのばず)無縁坂 
  かみしめる様な
  ささやかな 僕の母の人生 ♪

  (作詞:さだまさし)

歌詞にある "忍ぶ不忍" は
不忍池と不忍通りにかかっている。
歌詞にはないけれど
母親は世を忍ぶ日陰の身で
坂上には ”僕” の父親が
棲んでいたものと思われる。
読み過ぎかもしれないが・・・

坂を独り昇っていった。
誰ともすれ違わず、
あとからついて来る者もいない。
昔、無縁寺というお寺があって
名前の由来になったらしい。

坂の片側は旧岩崎邸庭園。
赤煉瓦の壁と石垣が坂上まで続き、
そのまま直進すると
右手に東大鉄門(てつもん)が現れる。
東大附属病院の正門が此処です。

2025年4月14日月曜日

第3774話 朴葉味噌も半世紀ぶり

ロマンポルノ「ぬけられます」を観る前、
昼めしに珍しいものを食べた。
飛騨名物、朴葉みそ焼きである。
神田駿河台「蔵助」は
都内でも珍しい飛騨居酒屋だ。

12時ちょうどに階段を上がると
小さな女の子連れのママが並んでいた。
席数はそこそこあるけど
四人掛けを一人で占有する客が目立つ。

15分待って窓際に着卓。
ガラスの向こう側に
三井住友海上のデカいビルがで~ん。
別段、ジャマじゃないから問題ない。

ランチメニューは朴葉みそ焼き定食のみ。
飛騨牛(1300円)・豚肉(1100円)・
豚キムチ(1100円)の3種類で
飛騨牛を黒ラベル中瓶とともに通した。

ロマンポルノ同様、
朴葉みそ焼きも人生で一度きり。
1973年初夏のことだから
これまた半世紀を超えている。
ところは本場・高山。
正確にはその奥の白川郷だった。

ひなびた食堂で朴葉焼き定食を食べた。
朴葉の上には肉ナシの味噌だけ。
ずいぶん質素だと思った記憶はあるが
飲んだビールの銘柄は覚えちゃいない。

宿に戻り、TVを点けると
大橋巨泉がMCをこなす「頭の体操」。
当夜のゲストは
せんだみつお、藤村俊二などだ。

鮮明に覚えているのはオヒョイこと藤村。
日本語はたった一文字で
意味が大きく変わるが
”例文を作りなさい” という問題。
彼の解答が奮っていた。

世の中は ”し” の字と ”す” の字の違いにて
武士は日本の鑑、ブスは日本の恥

いや、腹を抱えました。

それはそうと「蔵助」の朴葉みそ焼き。
すでに火が通った飛騨牛を
コンロの朴葉の上で炙るのだが
ヤケにしょっぱい。

生白菜のサラダ、刻んだ赤かぶ漬け、
とろろ昆布の味噌汁、茶碗のごはん。
デザートに栗のカタチをした、
バニラのアイス最中。

朴葉はちっとも香らなかったけど
バランスはよろしく、
しっかり食了いたしました。

「飛騨居酒屋 蔵助」
 東京都千代田区駿河台3-5-15
 荒井ビル2F
 03-3296-3551

2025年4月11日金曜日

第3773話 ロマンポルノは半世紀ぶり

神保町シアターの原節子シリーズは
1本の急な上映変更に
嫌気がさしたわけでもないが
2本観ただけであとはパス。
何だか不本意な結果になった。

4月の新シリーズは
映画で紐解く
花街、色街、おんなの街
東京(江戸)の吉原だの、
大阪(浪花)の飛田だの、
赤線地帯オンパレードだ。

好きな方はうれしいだろうが
J.C.はあまり興味がない。
よって16本中、
観るのは2本の惨状と相成った。
シリーズ2連続2本の貧打ぶりだ。

初めの1本は日活ロマンポルノ、
「赤線玉の井 ぬけられます」(1974)。
監督・脚本は神代辰巳。
”じんだい” でも ”かみしろ” でもなく、
”くましろ” を名乗る御仁である。

ロマンポルノを観たのは過去に一度きり。
1975年、ロンドンから帰京してすぐ、
池袋東口の映画館で観た。
あれから50年、実に半世紀ぶりだ。

この道に長けた方には
タイトルの「ぬけられます」を
見ただけで私娼窟・玉の井だと知れる。
永井荷風作「綺譚」の舞台である。

立て看板の ”ぬけられます” は
玉の井のトレードマークながら
赤線廃止から数年後、
”環境を良くする町宣言” の看板に
すげかえられた。

ロマンポルノの常連女優が顔を揃えるなか、
ひときわ光るのは宮下順子。
宮下といえば、同じ ’75年に封切られた、
「実録・阿部定」が白眉。

実在の本人と似ているわけでもないのに
J.C.の頭の中で阿部定は
順子以外に考えられない。
「愛のコリーダ」の本番女優、
松田暎子すらしのぐ魅力に満ちている。

当作の上映は本日19:15が最終回です。

2025年4月10日木曜日

第3772話 本店の 心配りに 頭(ず)が下がる (その2)

荒川区・東尾久の「滝乃家本店」。
麺も少なめ、飯も少なめの配慮に
頭(ず)を下げながら
鴨とじ御膳(1750円)を通した。
週に一度はお世話になるそば屋でも
滅多にお願いしない一品である。

立派なお膳が配された。
みつばを浮かべた鴨肉の玉子とじに
もりそば、竹輪の煮もの、ごはん、
きゅうり浅漬け&たくあんである。

まずはノビないうちにそば。
冷めないうちに鴨とじ。
つまんだそばを熱いつゆにくぐらせた。
うむ、うむ、けっこうなお味ですな。

もりを片付けたあと。
残った鴨肉やら竹輪やらで白飯に挑む。
カレー南蛮に半ライスはよく見掛けるが
鴨南蛮に半ライスはあまり見掛けない。
鴨づゆに玉子が加わると一気に
飯の友となるんだネ。

食事がほぼ終わる頃、
やっぱり大瓶1本じゃ飲み足りないなァ。
胃袋は満足してるのに
肝臓が不満をもらしてる。

飲みものリストをパラパラしたら
春の限定酒が2種類あった。
福島の名倉山 春酒・純米原酒と
群馬の水芭蕉 春酒・純米吟醸生貯蔵酒。
どちらにしようかな?
ここで石井の好子オバさんが歌い出した。

♪   夏が来れば 思い出す
  はるかな尾瀬 とおい空
  霧のなかに うかびくる
  やさしい影 野の小路
  水芭蕉の花が 咲いてる
  夢見て咲いている 水のほとり
  しゃくなげ色に たそがれる
  はるかな尾瀬 遠い空  ♪
   (作詞・江間章子)

「夏の思い出」は1949年に
NHK「ラジオ歌謡」で放送され、
尾瀬人気の火付け役になったものの、
レコードには収録されず、
藤山一郎盤まで実に5年の歳月を
待つことになった。

ともかく水芭蕉は好かった。
最近の J.C.は酒場や居酒屋ではなく、
そば屋で美酒に逢っている。
敬愛する池波正太郎翁の来た道を
踏襲しているからこそだ。

食後のそばゼリーもそばの実が
カリカリと好いアクセント。
美味しくいただきました。

「滝乃家本店」
 東京都荒川区東尾久4-27-7
 03-3893-8801

2025年4月9日水曜日

第3771話 本店の 心配りに 頭(ず)が下がる (その1)

都内あちこちを徘徊していて
よく遭遇するのが
「瀧乃家」なる日本そば屋。

若者に人気の奥シブにも
「瀧乃家」があるが
こちらはサカナの美味しい大衆割烹。
登別温泉郷にも「滝乃家」があって
あちらは老舗温泉旅館だ。

「瀧乃家」もしくは「滝乃家」は
東京の西側よりも東に多い気がする。
世田谷や杉並では
まず見掛けたことがない。

最近ちょくちょく出没する尾久の街に
「滝乃家本店」が在ると知って訪れた。
尾久銀座の南端を西に入ってすぐの場所。
看板には「たきのや」の大きな文字。
茶の暖簾には白字で「滝乃家」。
”東京二八蕎麦” の幟(のぼり)も目立つ。

右手にテーブル席、左に掘りごたつ。
テーブル席の右側にはガラス越しに
もうひとつ部屋があり、
ちょいとばかり複雑な造作だ。

入口に近い卓に着く。
ビールはキリンラガー大瓶。
いいでしょう、いいでしょう、
最近はキリンとの折り合いも悪くはない。

ブック仕様の品書きをめくってゆく。
その指を止めたのがこのページだった。

女性の方やセットや定食だと
量が多くて食べ切れない方に
  おすすめ!!
セット、定食の麺もご飯も少なめで
そばゼリー黒みつがけを
サービス致します!!

いいネ、いいですネ。
少食派にはピッタリだ。
別段、そばゼリーは欲しくないけど、
かような心配りと気働きを
心から愛する J.C.は
思わず頭(ず)が下がった。

初めての店で麺とご飯の一挙両得、
一石二鳥は春から縁起がいい。
こういう所はきっと、
主役のそばまで美味いに決まってる。

=つづく=

2025年4月8日火曜日

第3770話 板高2人 vs 開成2人

今宵は4人の飲み会。
メンバーは2月末、
久しぶりに酌み交わした、
大病院の泌尿科部長、通称・ハカセ。
そして J.C.の高校の24期後輩、
銀座の元ホステス・N々と
旦那で大手出版社勤務のトモ。

J.C.とN々は都立板橋高校出身。
ハカセとトモは私立開成高校出身。
ヤツラは生意気にも
揃って東大卒と来たもんだ。

板高は偏差値を急落させているが
開成は長いこと東大への進学率で
全国トップを独走している。
ちなみにハカセはトモの8期先輩。

誰が雨男でN々が雨女かは知らんが
かれこれ24時間近く、
降り続けてるんじゃあるまいか。
独り先着してドライ中瓶を飲みながら
メニューの品定めに取り掛かった。

ついでに黒ワインの異名を取る、
ジンファンデルのカーニヴォ'21 を
抜栓してもらった。
カリフォルニア産だったかな?
ヨソでは見掛けない重たいワインだが
重めを嫌う J.C.がコレは好きだ。

ほどなく顔ぶれが揃い、
男はドライ、女はカーニヴォで乾杯。
奇しくも4人全員が文京区民である。

注文は J.C.が持ち前の記憶力(?)で
メニューを見もせずにスラスラ通す。
それらはかくの如し。

ナムル盛合わせ × 2 白菜キムチ × 2
タン × 2 ハラミ × 2 豚肩ロース × 2
角切り和牛漬けサガリ × 2
ツラミ ×1 黒毛和牛レバー ×1

いやはや開成ブラザースは
アッという間に意気投合。
油紙に火を付けた如くに
ベラベラとクッチャベる。

話題は運動会。
開成名物の棒倒しと来たもんだ。
荒っぽいので有名らしいが
何年か前に死人まで出たそうだ。

苦労して開成に入ったってェのに
棒倒しで死んじまったら
文字通り、人生を棒に振ったも同然。
親はたまったもんじゃないぜ。
世の中、利口なヤツほど
馬鹿なことをするもんだ。

好かったのは漬けサガリ。
逆に好くなかったのは豚肩ロース。
締めは盛岡冷麺 × 2 と
ユッケジャンクッパ × 1。
クッパは若夫婦が平らげた。

歓談すること3時間余り。
カーニヴォを4本も空けて
お勘定は4万円余り。
再会を約して雨の中、
散会と相成りました。

「炭火焼肉 きたむら」
 東京都北区西ヶ原1-3-7
 ピュアサクシードとも2F
 050-5593-4885

2025年4月7日月曜日

第3769話 雨の日の ぼたん海老刺し 鯛茶漬け

前夜半から降り出した雨が朝になっても
昼を過ぎても止む気配まったくナシ。
雨の日のランチは外を歩かずに済む、
日比谷か北千住で取ることが多い。

千駄木駅改札の掲示板によると
北綾瀬行きが間もなく入線してくる。
千代田線のホームは
地上を走る不忍通りの道幅が狭いため、
スペース不十分につき、
2線が上下に分かれる立体式。
下のホームへ降りると同時に電車が来た。
今日は北千住へ行こう。

車内のTVを観てたら何やら料理教室。
白衣のオジさんが
卵掛け鯛ごはんを作っている。
鯛ごはんかァ・・・いいねェ。
鯛茶漬けでもいい気分だ。
そうだ、町屋駅直結の「ときわ」に
鯛茶漬けがあったハズ、行く先変更して
北千住の手前の町屋で降りた。

いつも混み合う「ときわ」が雨のせいか、
わりかし空いてはいたが椅子席は満卓。
靴を脱いで掘りごたつに上がる。
注文取りのオバちゃんにドライ大瓶を通す。

膨大な数の短冊を見上げた。
おっと、珍しくもぼたん海老があった。
これは見逃せない。

甘海老と見紛うほどに小さいのが5尾。
オゴノリ・大葉・貝割れ・レモン・
粉わさびとともに登場。
カブトの鋭いカタチが
ぼたん海老そのものである。
うん、ナリは小さくとも味は好い。

今宵は飲み会の予定が入っている。
ビールを1本に抑えて鯛茶漬けを発注。
注文してから疑念が湧いてきた。

何せ値段が600円だ。
胡麻だれの鯛刺しがごはんと出汁と
別々に来るなんてことは望めそうにない。
鯛が載ったごはんに出汁が
ブッカカッて来るんじゃなかろうか?

案の定、そうでした。
そりゃあ、そうだヨ。
銀座の「竹葉亭」で食べたら
2420円の鯛茶漬けが600円だもん。

庶民は庶民らしく、
大瓶&ぼたん海老込みで
1950円をお支払いし、
ごちそうさまでした。

「ときわ」
 東京都荒川区荒川7-50-9
 サンポップ町屋B1
 03-3809-2335

2025年4月4日金曜日

第3768話 思い切れない桜切り (その2)

板橋本町は旧上宿の「長寿庵」。
気がついたら準常連になっていた。
そいでもって大阪の酒、かたの桜。
いや、これがふくよかな美酒だった。

京都の伏見、兵庫の灘と、
日本の誇る酒処に
サンドイッチ状態の大阪。
浪花にも美味い酒が潜んでいたのだ。
率直に驚きました。

鴨串の塩焼きを追加する。
胸肉は鴨南蛮の主役を張るため、
余ったもも肉を活用するわけだ。
粉山椒を振ってパクリ。
歯応えは増すものの、けして悪くない。

そうしておいて締めの桜切り。
ほのかなピンクを想像したが
紫がかってヤケに色濃い。
色白の更科系そばを供する、
「長寿庵」だからこその変わりそばだ。
そば湯もいただき、会計は金3540円也。

2日前にも渡った板橋の橋の上。
上宿と仲宿の境界にあり、
南に渡れば仲宿になる。
橋上から下流方向に延々と続く、
桜を眺めていて、ふと思いついた。
そうだ、川沿いを下ってみよう。

陽射しに恵まれた左岸をそぞろ歩いて
あまりの美しさに驚く自分がいた。
今日はよく驚く日だが
此処は都内指折りの桜の名所と断じてよい。
人波もそこそこで歩きやすいしネ。
「長寿庵」の桜切りと
石神井川の桜並木の二段構えは
毎春恒例となること必至であります。

帝京大附属病院、東京家政大、
谷津大観音、紅葉橋を経て
とうとう音無親水公園に到達。
王子まで来ちゃったら
行きつけに顔を出さずには済まない。

日曜日の「豫園飯店」は初めてだ。
土・日は店に居ないはずの我が友、
S蘭が忙しく立ち働いていた。
近くの飛鳥山は桜の見ごろを迎え、
花見客が大挙して店にも押し寄せる。
14時過ぎで行列は8人と来たもんだ。

15分ほど並んだあと、
団体用の丸卓を独占し、
中瓶2本と一番軽い海老春巻きをー。
まかないを食する、
中国オネバ三人組の輪に加わり、
しばらく談笑して店をあとにした。

せっかくだから飛鳥山の桜も愛でる。
う~む、やはり桜は山より川だネ。
陽光を求めて川面に張り出す枝にこそ、
桜木の醍醐味があるからだ。
それでも徘徊すること四半刻、
王子駅へ続く坂道を下って行きました。

「長寿庵」
 東京都板橋区本町18-9
 03-3960-5525

「豫園飯店」
 東京都北区滝野川2-7-15
 03-5394-9951

2025年4月3日木曜日

第3767話 思い切れない桜切り (その1)

板橋本町の「長寿庵」。
今が季節の桜切りを思い切れない。
2日後に舞い戻った。

千石から乗った都営三田線に
揺られていると往年の名歌手、
菅原都々子が歌い出した。
特徴のあるソプラノだ。

♪ 思い切れない 未練のテープ
  切れてせつない 女の恋ごころ
  汽笛ひと声 汽笛ひと声
  涙の波止場に
  わたし一人を 捨ててゆく
  連絡船よ        ♪  
   (作詞:大高ひさを)

「連絡船の唄」は昭和26年のリリース。
この名曲は後年、都はるみの大ヒット曲、
「涙の連絡船」に多大な影響を与えている。

それはそれとして「長寿庵」。
ビールはラガーとプレモルしかなく、
以前よりなんぼか飲みやすくなった、
ラガーの大瓶を所望した。

桜切りの完売を心配して
お運びのオネバさんに
「あとで桜切りなんだけど、
 今のうちに頼んどいたほうがいいかな?」
「オホホ、だいじょうぶですヨ、
 いっぱい打ってありますから・・・」
「じゃ、あとで声掛けするネ」

つまみは焼き油揚げ。
これは単なる素揚げではなく、
きつねそば用に一度甘く煮たものを
あぶり直してある。

そこに刻み海苔&刻みねぎ、
貝割れ大根と繊切り大葉がタップリ。
他店にはない一品で
麦酒にも清酒にもピッタリ。
自家製マヨが好いシゴトをしている。

清酒に切り替えた。
ピンク色が美しい尾瀬の雪どけを
お願いしたら品切れ。
桜の季節にバッチリなのに残念。

それではと山形正宗を頼んでみたら
こっちも品切れと来たもんだ。
どうなってんだい? この店は!
温厚な性格の J.C.がキレかかった。

許す、赦す、J.C.はユルす。
気を取り直してこれまた季節に寄り添う、
かたの桜というヤツをー。
霞の香 純米吟醸を謳い、
搾ったまま何も加えずに瓶詰めした、
フレッシュな限定酒です! とあった。

霞に香りなんてあったっけ?
よくよく見れば、大阪府の産だとサ。
大阪の酒は飲んだ記憶がまずない。
まっ、いいか、いってみよう。

=つづく=

2025年4月2日水曜日

第3766話 桜づたいに 歩き続けて (その2)

練馬区・桜台は思い出の町ながら
滅多に来る場所ではない。
そば屋のあとは氷川台に向かい、
石神井川沿いの桜を楽しむ腹積もり。

にしん棒煮の身欠きにしんは
脂が少ない上物、いわゆる上干。
三枚おろしの片身がそのまま出て来た。
清酒に切り替えようとも思ったが
こらえてもりそばを半量でお願い。
胃袋のキャパを残しておきたい。

そばがせいろからはみ出したりして
見た目には感心しないものの、
歯応えよろしく悪くはなかった。
そば湯を省いての会計は1670円。

北口商店街はクルマの通行量が多い。
歩いていてちっとも楽しくない、
とにかく氷川台に到着。
駅前を石神井川が流れている。
川べりの美しい桜並木を散策した。

北東に進路を取り、城北公園通りを往く。
城北中央公園の桜も満開で
花見客が木々の下でくつろいでいる。
大人たちの宴会というより、
子ども連れのピクニックてな感じだ。

懐かしいのは川越街道の五本けやき。
中学の遠足の帰りにバスが此処を通ると
うん、もうすぐ学校に着くな、
そう、思ったものだ。

街道を渡って東武東上線・上板橋駅。
ロータリーに王子行きバスが停まっている。
歩き疲れもあって乗り込んだ。
いつもの調子で乗ってから考える。

終点まで行ってもいいが・・・
待て、待て、
板橋本町で降り、旧中山道を南へ歩く。
ほどなくこれまた石神井川に架かる板橋。
上流・下流の両サイドに桜並木が見事だ。

板橋を渡って縁切榎「長寿庵」。
師走の初訪以来、何度もおジャマしている。
この時期は変わりそばの桜切りが主役。
ただ今、休憩中で扉に貼り紙。
”夜の営業は16時を予定しています”
スマホを見たら時刻は15時45分。
こういうことを想定して
昼のもりそばを半量にしておいたのだ。

仲宿をぶらぶらして時間を費やし戻る。
あれえ! 扉は閉じたまんまだヨ。
もう16時20分だぜ。
あらためて貼り紙を熟視。
”夜の営業はPM6時を予定しています”

あちゃ~! やっちまっただヨ。
夢破れて山河あり、障子破れてサンがあり。
傷心を抱えた短気なオッサンは熱くなり、
都営三田線に乗ってしまったのでした。

「松月庵」
 東京都練馬区桜台4-11-14
 03-3994-2552

2025年4月1日火曜日

第3765話 桜づたいに 歩き続けて (その1)

不忍池のほとりの桜がほぼ満開。
渡り鳥のキンクロハジロも
まだ何羽か残っており、
池畔をめぐっていて楽しくなる。

そうだ! 桜を愛でるために
何処か遠くへ出掛けよう。
J.C.が東京都内で最も愛するのは
港区内のとあるお寺。
けれどもこればかりは公表できない。

寺とは無縁の花見客が
大挙して押しかけたひにゃ、
お寺に迷惑がかかるからネ。

ほかに気に入りの場所を列挙すると、
神田川&石神井川沿い、
茗荷谷の播磨坂、隅田川下流の佃公園、
ぞんなところだ。

世に知られた上野のお山は凡庸だし、
浅草の隅田公園は砂ぼこりがヒドく、
美しい千鳥ヶ淵は人出がすさまじい。
目黒川沿いもイマイチ好みに合わない。

池袋から西武池袋線で4つ目、
その名も桜台にやって来た。
中学の同窓生で人生最初のGF、
K子が此処に棲んでいた。

彼女のアパートで
二人だけのささやかな宴を持ったのは
J.C.がシンガポールに赴任する、
その直前だったから1983年の初春。
あれから42年かァ、いや、懐かしい。

桜台北口商店街の「松月庵」へ。
桜花を愛でる前の桜台で
腹ごしらえという寸法だ。
商店街といってもこの通りは
メトロ有楽町線・氷川台へと続く、
幹線道路沿いで車の往来が激しい。

とにかく暖簾をくぐった。
椅子席と入れ込みの掘りごたつ式が
半数づつ共存している。
2人掛けの椅子席に落ち着く。

お運びのオバちゃんに
ビールの銘柄を訊ねると
大瓶がラガー、中瓶はドライ。
無条件で中瓶を所望する。

つまみの欄に、にしん棒煮があった。
京都の街並みを思い浮かべながら
発注に及んだ。

=つづく=

2025年3月31日月曜日

第3764話 Tokyo X は 類・美豚だが・・・

この日は原節子の「智恵子抄」を観に
神保町シアターへ赴くと
演目が変更されていた。
フィルムの状態が思わしくないらしい。
こんなことは初めてだ。

代替は成瀬巳喜男監督の「めし」。
原作が髙村光太郎から
林芙美子に変わっちまったヨ。
「めし」はすでに観ており、
あまりいい印象がない。
よって今日は映画を回避した。

切符をゲットしたら
界隈で昼めしの予定ながら
ヒマな身体になった。
さあて、何処へ行くとするかな?

都営新宿線の笹塚行きを市ヶ谷で下車。
たった2駅の移動である。
西郷坂を上って訪れたのは
メトロ半蔵門線・半蔵門駅前の「いけだ」。
小ぢんまりとした一軒家のとんかつ屋だ。

時刻は13時半になろうとしていたが
かなりの客入りで卓は埋まっていた。
3席あるカウンターが空いており、
その右端に案内される。

当店のとんかつは二段構え。
フツーの豚(林SPFらしい)と
プライス・アップの Tokyo X 。
二十数年前、X に出逢って惚れ込んだ。
間違いなく味しいに分される、
類・美豚である。

ロースかつを定食仕立てでお願い。
ごはんは小さな茶碗に軽目だが
お替わりは自由のようだ。

なかなか見目麗しいロースが
繊キャベ・パセリ・ポテサラと登場。
みつば&豆腐の味噌椀に
新香はきゅうり・なす・大根と
高菜漬けがホンのチョッピリ。

X の魅力は滋味たっぷりの脂身。
よって右端の2切れが大好き。
ところが今日はちょいと不満。
火が通り過ぎて肉が硬い。
そしてこれは揚げ手の技術のせいか、
コロモがはがれやすいのだ。

お勘定はドライ大瓶ともども2450円。
店を出ると道の向こうに桜の大木が満開。
美しさに惹かれ、歩み寄って見上げる。
JEMA(日本電機工業会)の敷地内で
桜と電機、そのイメージの落差に
心なしか頬がゆるんだのでした。

「とんかつ いけだ」
 東京都千代田区麹町2-14
 03-3262-4434

2025年3月28日金曜日

第3763話 赤坂の 三分坂で 五時間営業

世の中には変わった店があるものだ。
ところは港区・赤坂。
TBS放送センターの裏手に三分坂なる、
短いながらも急勾配の坂がある。
そのふもとに「山ね家」はあった。

階段をトントンと上がった中二階。
中へ入ると女性スタッフに
食券を買うように指示され、
歩み寄って来た彼女に
キャッシュレス・オンリーと告げられた。

スイカしか持たない J.C.が
電子券売機の前でヘジテイトすると
「判りました、ボタンだけ押してください」
言われた通りにして
カウンターに着き、現金清算した。

牡蠣丼定食と一口明太子に
サッポロ黒ラベル小瓶で計2295円也。
定食のドンブリには大粒の牡蠣が5粒と
獅子唐が2本の天ぷら。
甘辛いタレが絡んでいる。

大きなとんすいで来た味噌椀は
シイタケ・マイタケ・シメジ・エノキと
きのこ類のオンパレード。
ごぼう&小松菜の煮びたし。
大根&白菜浅漬けの陣容である。

小瓶をお替わりして美味しくいただいた。
箸袋に
 since 2010 山ね家 
 裏面もご覧ください
とあったので裏面を見たら
店主の山根一洋さんは広島県・広島市出身。
はは~ん、牡蠣は広島産だろうな。
女将の山根芽里さんは茨城県・土浦市出身。

厨房は店主一人きり。
ほかは女性3人で女将は目星がついた。
帰り際、女将に
「高安は残念でしたネ」
「アッ、読んでくれたんですネ
 高安は私の妹と同窓なんです」
「そうなの? 来場所また頑張ろう!」
「ハイッ、ありがどうございます」

当店の営業時間は超変則の10時~15時。
昼が早い代わりに夜はやらない。
赤坂の隠れた名所、三分坂のたもとで
五時間限定の商売とはねェ。
前代未聞とはまさにこのことだ。

坂のたもとには報土寺があって
築地(ついじ)塀が際立つ。
此処には江戸時代の名大関、
雷電為右衛門が眠っている。

同じ信州生まれのよしみ、
お墓の場所が判らないので
本堂に手を合わせて参りました。

「山ね家」
 東京都港区赤坂7-8-1
 03-6277-6743

2025年3月27日木曜日

第3762話 とんかつを 中華で食べちゃ いけません!

この日は杉並区・高円寺へ遠征。
といっても早めに家を出て
都営三田線を板橋本町で降り、
高円寺行きの都営バスに乗って
ゆっくり向かった。

「ラザニ屋」なるラザニア専門店は
女子ばかりが10名ほど順番待ち。
ラーメンならともかくも
ラザニアは時間が掛かりそう。
しかも女性は食後のおしゃべりがまた長い。
長ッ尻(ちり)に決まってる。
アリベデルチ・ラザニヤ!

近所に長仙寺というお寺があった。
足を踏み入れると
手入れの行き届いた庭が拡がり、
京都にでも来たかのよう。
今まで知らなかったが名刹である。

長仙寺にインスパイアされて
思い浮かんだのは近くの高円寺。
駅名の由来となったほどだから
こちらもまた名刹中の名刹。
ついでと言ったら失礼ながら
訪れると門が閉ざされていた。

食事どきに昼めしそっちのけで
寺社巡りもないもんだ。
門前の「七面鳥」に入店。
結局は薬局、
高円寺に来ると毎度この店である。

冷蔵庫からドライ大瓶を取り出し、
抜栓してカウンターに着く。
飲む客にはつまみが供される当店。
んん? 薄切りが2枚・・・
かつおのたたきが出て来たゾ。
鳥団子と大根のスープ煮もー。
大瓶1本にじゅうぶんである。

もう1本取りに行って戻った。
何度も利用しているから
今日は未食のメニューに挑もう。
いりそば(汁なし麺)と迷った挙句に
何を血迷ったかカツライスを
ライス半分で通す愚か者がいた。

たくあん&白菜漬けと
油揚げの味噌汁を従えたカツは
普通のサイズながらやや薄め。
5切れカットで幅広のところに
繊キャベ・レモン・練り辛子添え。

見た目はまずまずなんだが
1切れ口に放り込んでガックシ。
コロモがガックシ、もとい、
ガシガシに加え、豚肉の味がしない。
どうにか食べ終えたものの、深く反省。
とんかつを 中華で食べちゃ いけません!

「七面鳥」
 東京都杉並区高円寺南4-4-15
 03-3311-5027

2025年3月26日水曜日

第3761話 大阪場所のちゃんちゃんこ

大相撲春場所が終わった。
またしても高安に裏切られた。
35歳でよく頑張った力士に対して
”裏切られた” はあんまりだが
なまじ期待を抱かせないでおくれ。
そう言いたいんだ。

兄弟子の稀勢の里にも
ずいぶん裏切られたが
あれはあれで2度優勝して
横綱にまでなってるからネ。

それはそうと大阪場所。
とにかく見ていて不愉快極まりないのが
溜まりに陣取る茶色いちゃんちゃんこ軍団。
アイツラはいったい何者なんだ?

大阪のことなら何でも訊いてくれ!
浪花の小姑・らびちゃんが
そう云うもんだから訊いてみた。
らびちゃんは相撲を観るかい?
と、お伺いを立てて本題に入ると
すぐに回答が戻って来た。

なかなかに面白く、
一読に値するので承諾も得ず、
ほぼ全文紹介したいと思う。

ー私、めっちゃ好きやねん
 この3月場所も
 相撲協会公式ファンクラブに
 入っていてチケット抽選販売に
 3回も落選してテレビ観戦してるねん
ーそう、あの茶色ちゃんちゃんこの団体
 めっちゃ目障りやねん
 あれは相撲協会からの
 維持員会員東西会
 東京・名古屋・大阪・福岡とあって
 それぞれ年会費が違うねん
ー年会費ゆうても百万単位やで
 金持ちの集まりやで
 なぜか大阪場所だけ
 ちゃんちゃんこ着てんねん
ーあんなんがおるから
 一般チケットが手に入らへんねん
 高須クリニックのかっちゃんとかもな
 各相撲部屋後援会の方が安いわ
ー昔は佐渡ヶ武部屋の後援会入っていて
 3万円で溜まり席で観たけど
 足がしんどいからね
ーあたみんこと熱海富士と
 炎鵬のファンやねん、私
 今は後援会なんて1万か3万やけど
 金欠病でとても無理やしね
ーしやから大阪万博まったく興味なし
 税金の無駄遣いや、カジノもいらん
 でも大阪はいるで
 宝くじも買うけど当たらんな

てなこってした。
今日は話題が相撲だけに
他人のふんどしで
相撲取らせて貰いましたわ。
ん? 女はふんどしなんか
しませんわな。

2025年3月25日火曜日

第3760話 あゆみと共に あゆんだ青春 (その2)

テレビ朝日の「路線バスで寄り道旅」で
お馴染みの徳さんが先日。
歌の上手い都はるみとちあきなおみに
いしだあゆみがコンプレックスを
抱いていたという話を披露していたが 
J.C.はそうとも思わない。

はるみ&なおみには歌で負けても
容姿じゃ圧勝しているからネ。
彼女が強く意識した歌手は
大先輩の西田佐知子だったのではないか。
二人は声質と容貌のみならず、
スラリとした体系までよく似ている。

J.C.は昔から佐知子から歌唱力を
マイナスしたらあゆみと信じて疑わない。
関口宏との結婚で佐知子が引退したとき、
心底ホッとして
肩の荷を降ろしたんじゃないかな?

さて、女優としてのいしだあゆみ。
脚本家にして演出家の倉本聰は
彼自身が脚本を書いた高倉健主演の映画、
「駅 STATION」(1981年)における、
彼女の演技を絶賛している。

この意見にも J.C.は与しない。
冒頭、函館本線・銭函駅のシーン。
不倫を理由に離縁される、
あゆみを乗せた列車がホームを離れてゆく。
見送る健さんに敬礼しながら
笑顔を涙が伝わってゆく。

脚本家は高く評価しているんだが
あの役柄を演じたときのあゆみが
不貞を犯す女には
どうしても見えないんだ。
ましてや夫は高倉健だヨ。
しかも刑事で拳銃の名手なんだぜ。

それに一度の過ちで妻子を棄てる男が
女を駅まで見送りに来るものかネ。
聰さん、申し訳ないが
貴男の仕組んだ筋書きには
見過ごせないキズがありますヨ。

彼女の映画では何と云っても
寅さんシリーズ第29作、
「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」。
1982年のこの作品を愛してやまない。
彼女は人間国宝の陶芸家宅に住み込む、
お手伝いさんのかがりに扮する。

結婚に失敗した未亡人で
娘を実家に預けている。
それが丹後半島の伊根の舟屋。
訪ねていった寅次郎と
結ばれそうになるものの、
結ばれちゃったら
寅さん映画にならないからネ。

もう1か所、映画で大事な舞台は
鎌倉のあじさい寺・成就院。
 J.C.は一昨年の6月27日。
自分の誕生日にバンコクから来た、
タイのレディーと境内を歩いた。

夏になったら今度は
伊根の舟屋まで出掛けたいと思う。
海を眺めてビールを飲みつつ、
あゆみと共にあゆんだ青春を
振り返るつもり、彼女を偲びながらネ。

2025年3月24日月曜日

第3759話 あゆみと共に あゆんだ青春 (その1)

今日は先日亡くなった、
いしだあゆみを語りたい。
当欄でも何度か書いているが
J.C.はあゆみの大ファンである。

女優としてよりも歌手としての彼女。
それもデビュー間もない頃、
セシルカットの彼女が好きだ。
あまりヒットに恵まれなかった時代。
それでもわが青春は彼女と共にあった。
例によってマイ・ベスト10いきます。

① サチオ君
② 太陽は泣いている
③ みどりの乙女
④ 喧嘩のあとでくちづけを
⑤ 時には一人で
⑥ ブルー・ライト・ヨコハマ
⑦ 今日からあなたと
⑧ あなたならどうする
⑨ 砂漠のような東京で
⑩ 真珠(パール)の指輪

かようなラインナップです。
ほかにイタリア映画の主題歌を歌った、
「ブーベの恋人」と「ガラスの部屋」も好き。

中学一年のとき、
板橋区・弥生町に棲んでいたが
住まいは下頭橋通り(旧川越街道)から
ちょいと入った小路のどん突きにあった。

下校時、そこを歩いていると
民家から流れて来たラジオの音は
デビュー2曲目の「サチオ君」。
家に駆け戻ってラジオをスイッチ・オン。
後半を聴くことができた。
家にレコード・プレイヤーが無かったのだ。

♪ ふるさとの想い出 それはサチオ君
  いつも二人で 落書したわ
  ふるさとのにおい それはサチオ君
  お寺のかべに 二人の名前
  傘をまん中に サチオと良子
  それからまもなく サチオが死んだ
  ふるさとの想い出 それはサチオ君
  雨に落書き 濡れて泣いてた  ♪
   (作詞:岡田教和)

歌詞にある良子はあゆみの本名。
1964年6月のリリースで
東京五輪の4カ月前のこと。
夢中になったJ.C.少年は
池袋東武7階にあった売り場で
彼女のブロマイドを
セッセセッセと買い込むようになる。

翌 ’65年1月、今は無き日劇で
彼女のコンサートを観た。
強く印象に残った曲は「サチオ君」、
「みどりの乙女」、「真珠の指輪」。
ほとんど無名の2曲は
You Tubeで聴くことができても
カラオケには収録されていない。

今でもそうだが子どもの頃から
短い髪の女性が好き。
梓みちよ、九重佑三子、槇みちる。
揃いも揃って短髪の乙女たちだった。

=つづく=

2025年3月21日金曜日

第3758話 一人酒場で 煮るもつ鍋

そうしてこうして降りた千駄木駅。
階段を昇り、地上に出ると
すぐ右手に居酒屋「マルコ」あり。

何度か利用しているが
住まいの近所じゃあまり飲まないため、
3年ぶりくらいかな? おジャマしよう。

雨のせいか、店内はスキスキのガラガラ。
カウンターに着き、赤星中瓶をー。
最初の一品はホタルいか酢味噌。
焼き手のオニイさんに
「ホタルは富山? 兵庫?」
「エッ? 仕入れ担当が休みで判りません」
プックリのツヤツヤが5尾並び、
これなら良質な富山湾産と推測された。

目の前の貼り紙が目立つ。
もつ鍋のデカいイラストの下に

1人前 790円
シメのちゃんぽん麺 190円
※ 1人前からの注文OK!

イラストが可愛い。
実は J.C.、自慢じゃないけど
未だかつて、もつ鍋を食べたことが無い。
読者は意外と思われるだろうが
紛れもない事実である。

もつ煮込みは少なくとも千回食ったが
もつ鍋に箸を差し入れたことは無い。
味は想像の範囲内ながら
生まれてこのかた未食のままってのもなァ。
これも雨降りがもたらせた巡り合わせ。
童貞を捨てちまおう! 発注に及んだ。

卓上ガスコンロが運ばれ、
具材が全員集合の鍋が上に置かれる。
着火のつまみを回して待つことしばし。
グツグツ言い出したら
醤油味のスープをすくい、口元に運ぶ。

脂肪がビッシリ付いた白もつ、
キャベツ・ニラ・豆腐に
にんにくと赤唐辛子のスライス。
一人酒場で突つく鍋はいいもんだ。

日本酒のリストは
~ 伊勢五さんセレクト ~
近隣の須藤公園横にある酒店である。
和歌山県海南市の純米吟醸、
紀土(きっど)春乃薫風を所望した。

いや、奥行きが拡がり、味わい深い。
和歌山の酒は飲んだ記憶がないゾ。
もつ鍋ともども初物づくしの春の宵。
牧水みたいに秋でなくとも酒は独り、
しづかに飲むべかりけり。

「やきとん酒場 マルコ 千駄木店」
 東京都文京区千駄木3-33-12
 03-5842-1882

2025年3月20日木曜日

第3757話 ♪ 人が割れるのよ ♪

この日は月例の「二人でビールを飲む会」。
ズーとも・白鶴と錦糸町のいつもの喫茶店、
「ニット」で落ち合った。
相方は中瓶を1本弱、当方は2本強飲む。
この日もそうだった。

およそ2時間後、
帰巣してゆく白鶴をバス停まで送り、
さて、これからどうしよう。
雨が降っている。

取り合えずJRの改札を通った。
秋葉原で山手線に乗り換え、
最寄りの日暮里で飲み直す案もあったが
日暮里だと家まで10分は歩く。

お茶の水まで行き、1杯引っ掛けて
千代田線に乗ることにしよう。
ところが、お茶の水という街は
学生にゃいいけど、呑兵衛にゃ適さない。
傘をさしてブラブラしたが収穫はゼロ。

時刻は19時半、あきらめて
常磐線直通我孫子行きに乗ろうとすると
うわ~っ! 何だ、何だ、この混みようは!
朝のラッシュ並みに次から次と
電車が来るにも関わらずヒドい混雑ぶりだ。

J.C.は何が嫌いって人混みが大嫌い。
ニューヨーカーはギュウギュウの地下鉄に
まず乗らないが日本人はお構いなし。
民度の低い民族は困りもんだヨ、ったく。
と言っても乗らなきゃ、会社に遅刻するし、
カミさんの機嫌を損なうし、
まったくもって男はつらいよ。

隣りの湯島で若い娘が降りようとした。
蚊の泣くような声で「降ります」。
誰も聞く耳なんか持っちゃいない。
そこで正義の味方J.C.、
大きな声で「降りますって!」

会釈して彼女は降りてゆき、事なきを得た。
すると入口をふさいでた乗客が何人も
 J.C.を振り向きやがんの。
大声の主はどこのどいつだ? 
と言わんばかりにー。
ケッ、どうなってんだヨ、此の国は?

根津の次はマイ・千駄木。
ところがお茶の水で乗ったのと逆側だから
にっちもさっちもいきまへん。
「すみません」なんて通用しない状況。
仕方なく伝家の宝刀を抜きやした。

「Excuse me !」
これは効いたヨ、スパッと道が開けた。
あたかもモーゼの十戒の如くにー。
日本人は外国人に親切というか、
英語に弱いからネ。

ほうら、天童よしみまで
歌い始めたぜ、「珍島物語」をー。

♪ 人が割れるのよ 道ができるのよ
  中と外とが つながるの
  こちら車内から あちらホームまで
  客の皆様 カムサハムニダ   ♪
   (作詞:J.C.オカザワ)
   (原詞:中山大三郎)

無事、プラットフォームに
抜け出ることができました。
やれやれ。