2025年3月31日月曜日

第3764話 Tokyo X は 類・美豚だが・・・

この日は原節子の「智恵子抄」を観に
神保町シアターへ赴くと
演目が変更されていた。
フィルムの状態が思わしくないらしい。
こんなことは初めてだ。

代替は成瀬巳喜男監督の「めし」。
原作が髙村光太郎から
林芙美子に変わっちまったヨ。
「めし」はすでに観ており、
あまりいい印象がない。
よって今日は映画を回避した。

切符をゲットしたら
界隈で昼めしの予定ながら
ヒマな身体になった。
さあて、何処へ行くとするかな?

都営新宿線の笹塚行きを市ヶ谷で下車。
たった2駅の移動である。
西郷坂を上って訪れたのは
メトロ半蔵門線・半蔵門駅前の「いけだ」。
小ぢんまりとした一軒家のとんかつ屋だ。

時刻は13時半になろうとしていたが
かなりの客入りで卓は埋まっていた。
3席あるカウンターが空いており、
その右端に案内される。

当店のとんかつは二段構え。
フツーの豚(林SPFらしい)と
プライス・アップの Tokyo X 。
二十数年前、X に出逢って惚れ込んだ。
間違いなく味しいに分される、
類・美豚である。

ロースかつを定食仕立てでお願い。
ごはんは小さな茶碗に軽目だが
お替わりは自由のようだ。

なかなか見目麗しいロースが
繊キャベ・パセリ・ポテサラと登場。
みつば&豆腐の味噌椀に
新香はきゅうり・なす・大根と
高菜漬けがホンのチョッピリ。

X の魅力は滋味たっぷりの脂身。
よって右端の2切れが大好き。
ところが今日はちょいと不満。
火が通り過ぎて肉が硬い。
そしてこれは揚げ手の技術のせいか、
コロモがはがれやすいのだ。

お勘定はドライ大瓶ともども2450円。
店を出ると道の向こうに桜の大木が満開。
美しさに惹かれ、歩み寄って見上げる。
JEMA(日本電機工業会)の敷地内で
桜と電機、そのイメージの落差に
心なしか頬がゆるんだのでした。

「とんかつ いけだ」
 東京都千代田区麹町2-14
 03-3262-4434

2025年3月28日金曜日

第3763話 赤坂の 三分坂で 五時間営業

世の中には変わった店があるものだ。
ところは港区・赤坂。
TBS放送センターの裏手に三分坂なる、
短いながらも急勾配の坂がある。
そのふもとに「山ね家」はあった。

階段をトントンと上がった中二階。
中へ入ると女性スタッフに
食券を買うように指示され、
歩み寄って来た彼女に
キャッシュレス・オンリーと告げられた。

スイカしか持たない J.C.が
電子券売機の前でヘジテイトすると
「判りました、ボタンだけ押してください」
言われた通りにして
カウンターに着き、現金清算した。

牡蠣丼定食と一口明太子に
サッポロ黒ラベル小瓶で計2295円也。
定食のドンブリには大粒の牡蠣が5粒と
獅子唐が2本の天ぷら。
甘辛いタレが絡んでいる。

大きなとんすいで来た味噌椀は
シイタケ・マイタケ・シメジ・エノキと
きのこ類のオンパレード。
ごぼう&小松菜の煮びたし。
大根&白菜浅漬けの陣容である。

小瓶をお替わりして美味しくいただいた。
箸袋に
 since 2010 山ね家 
 裏面もご覧ください
とあったので裏面を見たら
店主の山根一洋さんは広島県・広島市出身。
はは~ん、牡蠣は広島産だろうな。
女将の山根芽里さんは茨城県・土浦市出身。

厨房は店主一人きり。
ほかは女性3人で女将は目星がついた。
帰り際、女将に
「高安は残念でしたネ」
「アッ、読んでくれたんですネ
 高安は私の妹と同窓なんです」
「そうなの? 来場所また頑張ろう!」
「ハイッ、ありがどうございます」

当店の営業時間は超変則の10時~15時。
昼が早い代わりに夜はやらない。
赤坂の隠れた名所、三分坂のたもとで
五時間限定の商売とはねェ。
前代未聞とはまさにこのことだ。

坂のたもとには報土寺があって
築地(ついじ)塀が際立つ。
此処には江戸時代の名大関、
雷電為右衛門が眠っている。

同じ信州生まれのよしみ、
お墓の場所が判らないので
本堂に手を合わせて参りました。

「山ね家」
 東京都港区赤坂7-8-1
 03-6277-6743

2025年3月27日木曜日

第3762話 とんかつを 中華で食べちゃ いけません!

この日は杉並区・高円寺へ遠征。
といっても早めに家を出て
都営三田線を板橋本町で降り、
高円寺行きの都営バスに乗って
ゆっくり向かった。

「ラザニ屋」なるラザニア専門店は
女子ばかりが10名ほど順番待ち。
ラーメンならともかくも
ラザニアは時間が掛かりそう。
しかも女性は食後のおしゃべりがまた長い。
長ッ尻(ちり)に決まってる。
アリベデルチ・ラザニヤ!

近所に長仙寺というお寺があった。
足を踏み入れると
手入れの行き届いた庭が拡がり、
京都にでも来たかのよう。
今まで知らなかったが名刹である。

長仙寺にインスパイアされて
思い浮かんだのは近くの高円寺。
駅名の由来となったほどだから
こちらもまた名刹中の名刹。
ついでと言ったら失礼ながら
訪れると門が閉ざされていた。

食事どきに昼めしそっちのけで
寺社巡りもないもんだ。
門前の「七面鳥」に入店。
結局は薬局、
高円寺に来ると毎度この店である。

冷蔵庫からドライ大瓶を取り出し、
抜栓してカウンターに着く。
飲む客にはつまみが供される当店。
んん? 薄切りが2枚・・・
かつおのたたきが出て来たゾ。
鳥団子と大根のスープ煮もー。
大瓶1本にじゅうぶんである。

もう1本取りに行って戻った。
何度も利用しているから
今日は未食のメニューに挑もう。
いりそば(汁なし麺)と迷った挙句に
何を血迷ったかカツライスを
ライス半分で通す愚か者がいた。

たくあん&白菜漬けと
油揚げの味噌汁を従えたカツは
普通のサイズながらやや薄め。
5切れカットで幅広のところに
繊キャベ・レモン・練り辛子添え。

見た目はまずまずなんだが
1切れ口に放り込んでガックシ。
コロモがガックシ、もとい、
ガシガシに加え、豚肉の味がしない。
どうにか食べ終えたものの、深く反省。
とんかつを 中華で食べちゃ いけません!

「七面鳥」
 東京都杉並区高円寺南4-4-15
 03-3311-5027

2025年3月26日水曜日

第3761話 大阪場所のちゃんちゃんこ

大相撲春場所が終わった。
またしても高安に裏切られた。
35歳でよく頑張った力士に対して
”裏切られた” はあんまりだが
なまじ期待を抱かせないでおくれ。
そう言いたいんだ。

兄弟子の稀勢の里にも
ずいぶん裏切られたが
あれはあれで2度優勝して
横綱にまでなってるからネ。

それはそうと大阪場所。
とにかく見ていて不愉快極まりないのが
溜まりに陣取る茶色いちゃんちゃんこ軍団。
アイツラはいったい何者なんだ?

大阪のことなら何でも訊いてくれ!
浪花の小姑・らびちゃんが
そう云うもんだから訊いてみた。
らびちゃんは相撲を観るかい?
と、お伺いを立てて本題に入ると
すぐに回答が戻って来た。

なかなかに面白く、
一読に値するので承諾も得ず、
ほぼ全文紹介したいと思う。

ー私、めっちゃ好きやねん
 この3月場所も
 相撲協会公式ファンクラブに
 入っていてチケット抽選販売に
 3回も落選してテレビ観戦してるねん
ーそう、あの茶色ちゃんちゃんこの団体
 めっちゃ目障りやねん
 あれは相撲協会からの
 維持員会員東西会
 東京・名古屋・大阪・福岡とあって
 それぞれ年会費が違うねん
ー年会費ゆうても百万単位やで
 金持ちの集まりやで
 なぜか大阪場所だけ
 ちゃんちゃんこ着てんねん
ーあんなんがおるから
 一般チケットが手に入らへんねん
 高須クリニックのかっちゃんとかもな
 各相撲部屋後援会の方が安いわ
ー昔は佐渡ヶ武部屋の後援会入っていて
 3万円で溜まり席で観たけど
 足がしんどいからね
ーあたみんこと熱海富士と
 炎鵬のファンやねん、私
 今は後援会なんて1万か3万やけど
 金欠病でとても無理やしね
ーしやから大阪万博まったく興味なし
 税金の無駄遣いや、カジノもいらん
 でも大阪はいるで
 宝くじも買うけど当たらんな

てなこってした。
今日は話題が相撲だけに
他人のふんどしで
相撲取らせて貰いましたわ。
ん? 女はふんどしなんか
しませんわな。

2025年3月25日火曜日

第3760話 あゆみと共に あゆんだ青春 (その2)

テレビ朝日の「路線バスで寄り道旅」で
お馴染みの徳さんが先日。
歌の上手い都はるみとちあきなおみに
いしだあゆみがコンプレックスを
抱いていたという話を披露していたが 
J.C.はそうとも思わない。

はるみ&なおみには歌で負けても
容姿じゃ圧勝しているからネ。
彼女が強く意識した歌手は
大先輩の西田佐知子だったのではないか。
二人は声質と容貌のみならず、
スラリとした体系までよく似ている。

J.C.は昔から佐知子から歌唱力を
マイナスしたらあゆみと信じて疑わない。
関口宏との結婚で佐知子が引退したとき、
心底ホッとして
肩の荷を降ろしたんじゃないかな?

さて、女優としてのいしだあゆみ。
脚本家にして演出家の倉本聰は
彼自身が脚本を書いた高倉健主演の映画、
「駅 STATION」(1981年)における、
彼女の演技を絶賛している。

この意見にも J.C.は与しない。
冒頭、函館本線・銭函駅のシーン。
不倫を理由に離縁される、
あゆみを乗せた列車がホームを離れてゆく。
見送る健さんに敬礼しながら
笑顔を涙が伝わってゆく。

脚本家は高く評価しているんだが
あの役柄を演じたときのあゆみが
不貞を犯す女には
どうしても見えないんだ。
ましてや夫は高倉健だヨ。
しかも刑事で拳銃の名手なんだぜ。

それに一度の過ちで妻子を棄てる男が
女を駅まで見送りに来るものかネ。
聰さん、申し訳ないが
貴男の仕組んだ筋書きには
見過ごせないキズがありますヨ。

彼女の映画では何と云っても
寅さんシリーズ第29作、
「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」。
1982年のこの作品を愛してやまない。
彼女は人間国宝の陶芸家宅に住み込む、
お手伝いさんのかがりに扮する。

結婚に失敗した未亡人で
娘を実家に預けている。
それが丹後半島の伊根の舟屋。
訪ねていった寅次郎と
結ばれそうになるものの、
結ばれちゃったら
寅さん映画にならないからネ。

もう1か所、映画で大事な舞台は
鎌倉のあじさい寺・成就院。
 J.C.は一昨年の6月27日。
自分の誕生日にバンコクから来た、
タイのレディーと境内を歩いた。

夏になったら今度は
伊根の舟屋まで出掛けたいと思う。
海を眺めてビールを飲みつつ、
あゆみと共にあゆんだ青春を
振り返るつもり、彼女を偲びながらネ。

2025年3月24日月曜日

第3759話 あゆみと共に あゆんだ青春 (その1)

今日は先日亡くなった、
いしだあゆみを語りたい。
当欄でも何度か書いているが
J.C.はあゆみの大ファンである。

女優としてよりも歌手としての彼女。
それもデビュー間もない頃、
セシルカットの彼女が好きだ。
あまりヒットに恵まれなかった時代。
それでもわが青春は彼女と共にあった。
例によってマイ・ベスト10いきます。

① サチオ君
② 太陽は泣いている
③ みどりの乙女
④ 喧嘩のあとでくちづけを
⑤ 時には一人で
⑥ ブルー・ライト・ヨコハマ
⑦ 今日からあなたと
⑧ あなたならどうする
⑨ 砂漠のような東京で
⑩ 真珠(パール)の指輪

かようなラインナップです。
ほかにイタリア映画の主題歌を歌った、
「ブーベの恋人」と「ガラスの部屋」も好き。

中学一年のとき、
板橋区・弥生町に棲んでいたが
住まいは下頭橋通り(旧川越街道)から
ちょいと入った小路のどん突きにあった。

下校時、そこを歩いていると
民家から流れて来たラジオの音は
デビュー2曲目の「サチオ君」。
家に駆け戻ってラジオをスイッチ・オン。
後半を聴くことができた。
家にレコード・プレイヤーが無かったのだ。

♪ ふるさとの想い出 それはサチオ君
  いつも二人で 落書したわ
  ふるさとのにおい それはサチオ君
  お寺のかべに 二人の名前
  傘をまん中に サチオと良子
  それからまもなく サチオが死んだ
  ふるさとの想い出 それはサチオ君
  雨に落書き 濡れて泣いてた  ♪
   (作詞:岡田教和)

歌詞にある良子はあゆみの本名。
1964年6月のリリースで
東京五輪の4カ月前のこと。
夢中になったJ.C.少年は
池袋東武7階にあった売り場で
彼女のブロマイドを
セッセセッセと買い込むようになる。

翌 ’65年1月、今は無き日劇で
彼女のコンサートを観た。
強く印象に残った曲は「サチオ君」、
「みどりの乙女」、「真珠の指輪」。
ほとんど無名の2曲は
You Tubeで聴くことができても
カラオケには収録されていない。

今でもそうだが子どもの頃から
短い髪の女性が好き。
梓みちよ、九重佑三子、槇みちる。
揃いも揃って短髪の乙女たちだった。

=つづく=

2025年3月21日金曜日

第3758話 一人酒場で 煮るもつ鍋

そうしてこうして降りた千駄木駅。
階段を昇り、地上に出ると
すぐ右手に居酒屋「マルコ」あり。

何度か利用しているが
住まいの近所じゃあまり飲まないため、
3年ぶりくらいかな? おジャマしよう。

雨のせいか、店内はスキスキのガラガラ。
カウンターに着き、赤星中瓶をー。
最初の一品はホタルいか酢味噌。
焼き手のオニイさんに
「ホタルは富山? 兵庫?」
「エッ? 仕入れ担当が休みで判りません」
プックリのツヤツヤが5尾並び、
これなら良質な富山湾産と推測された。

目の前の貼り紙が目立つ。
もつ鍋のデカいイラストの下に

1人前 790円
シメのちゃんぽん麺 190円
※ 1人前からの注文OK!

イラストが可愛い。
実は J.C.、自慢じゃないけど
未だかつて、もつ鍋を食べたことが無い。
読者は意外と思われるだろうが
紛れもない事実である。

もつ煮込みは少なくとも千回食ったが
もつ鍋に箸を差し入れたことは無い。
味は想像の範囲内ながら
生まれてこのかた未食のままってのもなァ。
これも雨降りがもたらせた巡り合わせ。
童貞を捨てちまおう! 発注に及んだ。

卓上ガスコンロが運ばれ、
具材が全員集合の鍋が上に置かれる。
着火のつまみを回して待つことしばし。
グツグツ言い出したら
醤油味のスープをすくい、口元に運ぶ。

脂肪がビッシリ付いた白もつ、
キャベツ・ニラ・豆腐に
にんにくと赤唐辛子のスライス。
一人酒場で突つく鍋はいいもんだ。

日本酒のリストは
~ 伊勢五さんセレクト ~
近隣の須藤公園横にある酒店である。
和歌山県海南市の純米吟醸、
紀土(きっど)春乃薫風を所望した。

いや、奥行きが拡がり、味わい深い。
和歌山の酒は飲んだ記憶がないゾ。
もつ鍋ともども初物づくしの春の宵。
牧水みたいに秋でなくとも酒は独り、
しづかに飲むべかりけり。

「やきとん酒場 マルコ 千駄木店」
 東京都文京区千駄木3-33-12
 03-5842-1882

2025年3月20日木曜日

第3757話 ♪ 人が割れるのよ ♪

この日は月例の「二人でビールを飲む会」。
ズーとも・白鶴と錦糸町のいつもの喫茶店、
「ニット」で落ち合った。
相方は中瓶を1本弱、当方は2本強飲む。
この日もそうだった。

およそ2時間後、
帰巣してゆく白鶴をバス停まで送り、
さて、これからどうしよう。
雨が降っている。

取り合えずJRの改札を通った。
秋葉原で山手線に乗り換え、
最寄りの日暮里で飲み直す案もあったが
日暮里だと家まで10分は歩く。

お茶の水まで行き、1杯引っ掛けて
千代田線に乗ることにしよう。
ところが、お茶の水という街は
学生にゃいいけど、呑兵衛にゃ適さない。
傘をさしてブラブラしたが収穫はゼロ。

時刻は19時半、あきらめて
常磐線直通我孫子行きに乗ろうとすると
うわ~っ! 何だ、何だ、この混みようは!
朝のラッシュ並みに次から次と
電車が来るにも関わらずヒドい混雑ぶりだ。

J.C.は何が嫌いって人混みが大嫌い。
ニューヨーカーはギュウギュウの地下鉄に
まず乗らないが日本人はお構いなし。
民度の低い民族は困りもんだヨ、ったく。
と言っても乗らなきゃ、会社に遅刻するし、
カミさんの機嫌を損なうし、
まったくもって男はつらいよ。

隣りの湯島で若い娘が降りようとした。
蚊の泣くような声で「降ります」。
誰も聞く耳なんか持っちゃいない。
そこで正義の味方J.C.、
大きな声で「降りますって!」

会釈して彼女は降りてゆき、事なきを得た。
すると入口をふさいでた乗客が何人も
 J.C.を振り向きやがんの。
大声の主はどこのどいつだ? 
と言わんばかりにー。
ケッ、どうなってんだヨ、此の国は?

根津の次はマイ・千駄木。
ところがお茶の水で乗ったのと逆側だから
にっちもさっちもいきまへん。
「すみません」なんて通用しない状況。
仕方なく伝家の宝刀を抜きやした。

「Excuse me !」
これは効いたヨ、スパッと道が開けた。
あたかもモーゼの十戒の如くにー。
日本人は外国人に親切というか、
英語に弱いからネ。

ほうら、天童よしみまで
歌い始めたぜ、「珍島物語」をー。

♪ 人が割れるのよ 道ができるのよ
  中と外とが つながるの
  こちら車内から あちらホームまで
  客の皆様 カムサハムニダ   ♪
   (作詞:J.C.オカザワ)
   (原詞:中山大三郎)

無事、プラットフォームに
抜け出ることができました。
やれやれ。

2025年3月19日水曜日

第3756話 節子の前の重慶飯店

原節子特集をいきなり2本観たが
その際の昼めし処は
神田神保町に近い神田駿河台。
初日は際コーポレーション系列の
タイ料理店で海老チャーハンをー。

こいつがあんまりだった。
ジャスミンライスまでは期待しなかったが
ジャポニカ米がヤワヤワのネチョネチョ。
若い女性たちで席は埋まっていたけれど、
タイ人のオッサンにこんなん食わせたら
「馬鹿にすんじゃねェゾ!」
テーブルをひっくり返すと思われる。
よって多くを語らず、スルー。

翌日は「太一」なる中国料理店があった場所を
居抜いた「東々包(トントンパオ)」。
重慶料理を全面に押し出す店で
正式には”ドンドンバオ”と発音するらしい。

可憐な原節子の映画の前に
重慶料理はかなり”重”く、
”慶”ぶに値しないかとも思ったが
まあ、いいでしょう、行きましょう。

店オススメの重慶名物は3皿。
水煮牛肉・宮保鶏肉・酸菜魚である。
3つ目のサカナ料理だけは
かつて一度も食べたことがない。

本来なら川魚のソウギョを使うが
興味は湧いたものの、
鮎のように爽快なサカナならともかく、
鯉みたいに泥臭いのが出て来たら
もうお手上げ、見送ることにした。

赤星中瓶をトクトクやって択んだのは
”本場の四川重慶味”の欄にあった、
仔羊肉のクミン炒め(1480円)。
仔羊もクミンも大好きですからネ。

運ばれた膳は主菜に加え、
とろみのついた玉子スープ、
サニーレタス・紫キャベツ・水菜のサラダ、
そして白飯。
ここにザーサイか辣白菜があれば
カンのペキなのになァ。
代わりにプリン状のつゆなし杏仁豆腐。

メインディッシュは豪華絢爛。
タップリの仔羊に野菜も8種類ほど入り、
赤唐辛子がこれでもか、と云わんばかり。
これをみんな喰ったひにゃ一日中、
ヒーハー、ヒーハー繰り返さなきゃならん。

赤星をもう1本いきたいところなれど、
映画を観てる最中に
自然の呼び出しを受けること必至、
思いとどまったのでした。

「東々包」
 東京都千代田区駿河台3-3-10
 050-5872-0222

2025年3月18日火曜日

第3755話 可憐な少女の原節子

いしだあゆみが亡くなった。
大好きな女(ひと)だった。
J.C.が長い人生において
ブロマイドを買ったのは彼女ただ一人。
中学一年生のときは夢中だった。
日をあらためて彼女を語りたい。

それはともかく、
ようやくドラえもんが何処かへ飛んで
神保町シアターの新しい特集、
没後10年
原節子をめぐる16人の映画監督
が始まった。

16人の異なる監督による16本が
上映される予定だ。
さっそく2本観てきた。

最初は「河内山宗俊」(1936年 日活)。
監督は早世した山中貞雄。
応召した翌年、河北省・開封市で
戦病死したが才能を高く評価された。

宗俊役は河原崎長十郎(4代目)。
節子は甘酒屋を営む娘・お浪。
まだ15歳の若さである。

J.C.は今まで原節子を
美しいと思ったことが一度もないが
今回初めて彼女の魅力を感じとった。
多くの監督たちが揃いも揃って
彼女を重用した理由が判る気がした。

2本目は「巨人傳」(’38年 東宝)。
監督は伊丹十三の実父、伊丹万作。
ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」が
原作ながら画面にクレジットはない。

ジャン・バルジャンの役柄は大河内傳次郎。
傅次郎の”傳”の字が
題名「巨人傳」の由来となったフシがある。
節子はコゼット役。
うん、やはり可憐で綺麗だ。
殊に目を閉じた寝顔には息を飲む。

当時としては長尺の2時間7分。
ほとんどの作品が1時間半そこそこなのに
観る者を飽きさせることがまったくない。

「河内山宗俊」、「巨人傳」の上映は
すでに終了したが
小津安二郎「秋」、黒澤明「白痴」、
熊谷久虎「智恵子抄」などが控えている。

熊谷久虎は節子の義兄(実姉の夫)で
彼こそが節子を銀幕の世界に
引きずり込んだ張本人。
節子は義兄を敬愛してやまなかったと伝わる。

女優・原節子という麦)は
熊谷久虎が種を蒔き、
小津安二郎が刈り取ったと言ってよい。

2025年3月17日月曜日

第3754話 日暮里で にっぽり笑う リユニオン

近頃、散歩していると民家の庭先から
沈丁花の香りが漂って来る。
この世に存在するすべての匂いのうち、
J.C.はこの花の香が一番好きだ。

今年の書初めならぬ、
嗅初め(かぎぞめ)は2月25日だった。
谷中銀座からちょいと入った、
裏道にあるお宅の生け垣に
赤と白とが一株ずつ並んでおり、
いくつかの蕾がほころびかけていた。
桜で言えば、まだ一分咲き程度ながら
沈丁花を嗅がないと J.C.の春は始まらない。

それはそれとして、今宵はTBSラジオ、
「森本毅郎スタンバイ!」のリユニオン。
メンバーたちから谷根千でぜひ、
との声が巻き起こり、
地元在住の J.C.が予約したのは
日暮里のマイ・ブレイクルーム、
中国料理店「又一順(ユーイシュン)」だ。

日暮里は谷根千の外ではあるが隣り街。
そもそも谷根千に宴会に適した店舗など
まったくないのが悲しい現実である。
常連の7人に加えて今回は
TBSのディレクターが2人参加した。

2階の円卓に集い、ドライで乾杯。
最初は干し大根玉子焼きと腸詰め。
今は亡きのみとも・半チャンは
この玉子焼きが大好物だった。

白油鶏(パイユーチ=蒸し鶏)じゃ
芸がないのでこの日は奮発し、
涼菜鮑魚(リャンツァイポーユー)、
いわゆるアワビの冷製にしてみた。

紹興酒も奮発して10年物の龍晶水。
これはロンジンクァンと発音するらしい。
9人で600cc を4本だから
それほどの深酒ではないやネ。

海老と野菜のうま煮、蟹肉豆腐、
沙茶醤牛肉、木須肉(豚肉・木耳・玉子)。
焼きそば&炒飯にはたどり着けず、
6月の再宴を約して、お開きとなった。
日暮里だけにこぞってにっぽり笑った皆の衆。

半数は JR日暮里駅利用。
残りは千代田線・千駄木から帰途に着く。
残った連中を引き連れ、谷根千の穴場、
初音小路とすずらん通りを案内し、
千駄木駅で各自とハンド・シェイク。

と、この原稿を金曜の夕方に書いていたら
会食メンバーの一人、
フタちゃんからメール来信。

ー オカザワさん、大好きな沈丁花が満開ですね
ー 何たる偶然、今、ブログの前フリで
  沈丁花にふれたところ、超能力?
ー 愛読者ですから、わかるんですよ(笑)

持つべきものは読者でありますな。

「又一順(ユーイシュン)」
 東京都荒川区西日暮里2-18-3
 03-3801-8520

2025年3月14日金曜日

第3753話 よみせ通りにスリランカ

文京区・谷根千のランドマーク、
夕焼けだんだんを降ると谷中銀座。
100mそこそこの短い商店街を
真っ直ぐに突き当ったところで
左右に拡がるのがよみせ通り。
かつては夜店が並んでいた。

その道筋にスリランカ・カフェ、
「アユボワン!」がある。
ちょうど10年前に1度オープンしたものの、
その後閉店し、7年前に営業を再開させた。

近くだから気軽に立ち寄ればいいものを、
意外と近所は疎遠というケースが多い。
当店もそんな1軒だった。

呼び物はカレーである。
NY時代、一時期棲んだ住まいのそばに
スリランカ料理店があり、たびたび利用した。

仏教徒の多いスリランカ(往時はセイロン)は
ヒンズー教のインドと異なり、
牛でも豚でも中国人並みに
なんでんかんでん胃袋に収める。
気に入りはポークカレーだった。

カウンターに落ち着いてまずは
スリランカのビール、
ライオン・ラガーの小瓶をお願い。
わりとスッキリながら
ドライや黒ラベルほどではなく、
一番搾りくらいかな。

カレーは4種類あって
チキン・ポーク・ベジタブル・全部のせ。
ラーメンで全部のせはまず注文しないが
カレーの場合はいったろか!って気になる。

お願いしてみると、
チキン・ポークに加え、レンズ豆、
ボルサンボル(ココナッツ・レモン・玉ねぎ)、
インゲンのテルダーラ(炒め煮)、
パパダム(グリーンピース煎餅)、
自家製ピクルスと、さすがに盛りだくさんだ。

でも、あまりにゴチャゴチャしていて
食べてるうちに気がバラけてくるが
ライオン・スタウトに切り替え、
その助けを借りながら食べ切り、
食後感はけして悪いものではなかった。
でも、次回はチキンかポークにしよう。

お勘定は金3300円也。
ちなみに店名の「アユボワン!」は
タミル語と並ぶスリランカの公用語、
シンハラ語で「こんにちは!」。
イタリア語の「チャオ!」みたいな感じだが
=あなたの命が永く続きますように=
という素敵な語源を持ち合わせているそうです。

「アユボワン!」
 東京都文京区千駄木3-46-9
 03-5834-2803

2025年3月13日木曜日

第3752話 馬刺しの後の もんじゃグラタン

墨田区の向島から玉ノ井にかけて
曳舟川通りが北東に延びている。
長浦神社の手前にポツンとあるのが
大衆酒場「岩金」。

今は昔、浅草雷門・仲見世の1本北側裏筋に
やはり「岩金」という、
知る人ぞ知る、鮮魚自慢の酒場があり、
何度か利用したが両者に関係はないようだ。

実は10年ほど前、とあるTV番組で
玉ノ井「岩金」におジャマした。
当時の店のオバちゃんたちと
妙に気が合った。
ロケで使わせてもらいながら
そのまんまってのも気が引ける。
翌週独りで舞い戻り、飲み直したものだ。

浅草・馬道で錦糸町行きのバスを降り、
言問橋を渡って曳舟川通りを一気に北上。
JR曳舟駅のガードをくぐってしばらく、
時間があったため、店先を通過し、
長浦神社に手を合わせた。

京成押上線・八広駅前まで歩き、
王貞治さんゆかりの洋食屋「50Ban」を
懐かしく眺めた。

そこから戻り、
開店時間の17時ちょい前に入店。
すでに先客が一人。
続いて友人らしき初老のカップルが合流。
客は自分を含め、計4人となった。

当店のスタッフも4人。
オバちゃんとオネバさん、
女性ばかりが役割分担しての切盛り。
ドライ大瓶を貰い、壁の品書きに見入る。

まずは好物の馬刺しを発注。
暗褐色で赤身とは呼び難いが
食味は紛れもなく赤身のソレ。
産地を訊きそびれたが
熊本ではなく会津のような気がした。
実に味わい深く、おろしニンニクで堪能。

ボール(下町のハイボール)に切り替え、
追注したのはもんじゃグラタンなる1皿。
此処では通常のもんじゃは、なんじゃもんじゃ。
チーズを載せて焼き上げたのが、このグラタン。

予想を超えて好かった。
ボールのアテにピッタリである。
チーズの下に生焼けの挽き肉みたいなのが
潜んでおり、イヤだなと思ったものの、
生地に練り込まれた刻み紅生姜だった。
久方ぶりのもんじゃを満喫。
今宵は堪能&満喫の夜となる。

この日はうたともからの誘いがあって
そろそろ向かわねばー。
明治通りに出て東向島広小路。
日暮里行きのバスにの乗り込みました。

「岩金」
 東京都墨田区東向島6-13-10
 03-3619-6398

2025年3月12日水曜日

第3751話 忘れかけてた とんかつ「弥生」

浅草は言問通りと国際通りの交差点そば。
とんかつの老舗「弥生」の引き戸を
久方ぶりに引いた。

初訪問は今世紀初めだったと記憶するが
先代が店の2階から玄関先に転落するという、
不慮の事故で亡くなられ、
何となく足が遠のいていた。

2月初旬に訪れ、
ロースかつ定食の(小)を半ライスでお願い。
ビールは生がドライ。
瓶はサッポロ赤星中瓶かキリンラガー大瓶。
ここは赤い星でー。

小さな冷奴とお新香が出て来た。
奴は白いまんまで
ねぎ・生姜・おかかの類いは一切ナシ。
自慢の豆腐屋から入れてるらしい。
新香はきゅうり&たくあんが1切れづつ。

コンパクトなロースかつは軽い揚げ上がり。
見た目、食味、ともに女性的な感じがする。
少な目のキャベツは
あながち高値のせいだけではあるまい。
ケチッたというよりも
とんかつとのバランスを考えたのだろう。
味噌椀はわかめ&みつばのかき玉だ。

そこそこ美味しくいただき、
あらためてメニューを眺める。
ん? 海の幸定食かァ。
海老・キス・アジ・イカの盛合わせは
ここにカキが加われば文句ナシだが
ぜいたく言わずにまた食べに来ようかな?

と言いながら、しばらくの間、
放ったらかしにするのが J.C.の悪いクセ。
いったい何時になることやら・・・。
と言いながら、此度は翌週に出向いた。

4種の魚介が仲良く同居している。
みんな揃ってキツネ色の中、
アジだけがちょいと色黒である。
海老・キス・イカと食べ進む。
ロースかつ同様に軽いタッチの揚げ上がり。
うん、いいんじゃないかい。

ところが好事魔多しは世の常。
アジがいただけなかった。
火の通り過ぎでコロモがガシガシ。
こんなに揚げなくてもいいんじゃないの?
アジだけは昭和15年創業、
老舗の名が泣いておりました。

「弥生」
 東京都台東区浅草3-12-4
 03-3873-4743

2025年3月11日火曜日

第3750話 家康の お命頂戴 鯛の天ぷら (その2)

東尾久「金生庵」のコンニャク田楽に
圧倒されている。
最後の締めならともかくも
初っ端から食べ残すのはいただけない。
結局は薬局、やっとこさ完食した。

さて、そばはどうしようかな?
壁の貼り紙が気になった。

=今日のおすすめセット=
 もりまたはかけ+ミニ天然真鯛の天丼
   税込 1000円

食べ過ぎになるのでしばし考える。
しかし滅多に逢わない鯛の天ぷら。
けれど徳川家康の命を奪った鯛天だ。
実際は食中毒じゃなくて
胃がんのせいらしいが
成仏の引き金を引いたのは
鯛天ぷらだったかもしれない。

まっ、医学の進んだ今の世の中、
天ぷらで死ぬことはなかろうヨ。
心を決めてオネバさんに
もりそばも半分で大瓶のお替わりとお願い。

ミニ天丼は本当にミニだった。
これなら少食男子や女性でもイケる。
小盛り飯の上の鯛天は穴子の半身程度だ。

うむ、ふむ、サカナの天ぷらは
白身に限るぞな、もし。
ただし、切り身を揚げるのは
江戸前本来の伝統を外れる。
江戸湾から揚がった小魚を
丸のまま揚げるのがしきたりである。
家康を偲びつつ、口元に運んだ。

そばは二八そば。
「瀧乃家」系列はみな、
二八にこだわるらしい。
さほど秀でたものとは思えずとも
水準には達していた。

つゆは町場そばとしては
甘さ控え目のやや辛口。
そば湯もしっかりいただき、
お勘定は3千円ちょうど、ごちそうさま。

おぐとぴあ23を突っ切り、
二葉山尾久院満光寺門前にやって来た。
上野寛永寺造営のため、
この地に移転を余儀なくされたお寺に
せっかくだからお参りして参りました。

「金生庵」
 東京都荒川区東尾久3-14-1
 03-3895-5821

2025年3月10日月曜日

第3749話 家康の お命頂戴 鯛の天ぷら (その1)

荒川区の尾久本町通り。
尾久橋通りと直角に交わり、
東西にまたがって走る。

西側は川の手もとまち商店街、
東がおぐとぴあ23と呼ばれ、
こちらの通り沿いには
万国旗がジグザグに飾られている。

前回、川の手入口の「かつ一」で
焦げ茶色のとんかつを食べたので
今回はおぐとぴあの日本そば屋へ。
何事も片手落ちは良くないですから。

「金生庵」は夫婦二人だけの切盛り。
女将さんはオネバさん。
店主は声はすれども
最後まで姿を見ることができなかった。

家の近所にある須藤公園の池。
そこのウシガエルみたいなもんだ。
夏になったら五月蠅いのなんのっ。
だのに、けっして姿は見せない。

ドライ大瓶には枝豆のお通し。
品書きに見入ると、ふ~む、三色田楽かァ。
これはまずコンニャク、そして豆腐。
三つ目は何だろう? 里芋あたりかな?

興味津々で発注すると
「コンニャクだけですけど、いいですか?」
「エッ? 三色というのは?」
「コンニャクが三色なんです、海苔の緑とか」
「ハァ? う~ん・・・それでいいです」
通したものの、肩はガックシ落ちていた。

うわっ! トンデモないのが来たぜ。
百円ライターの倍もありそうなヤツが
串に刺さって6本並んでる。
「こんなにたくさんあんの?」
「ハハ、コンニャクだけで
 お腹いっぱいになっちゃいますネ」
「いや、ホントだヨ」
(女将さんよぉ、判ってんなら
 半分にしておくれでないかい?)
このセリフは飲み込んだけど。

冗談じゃないぜ、と思いつつも頑張る。
当然、ビールのお替わりである。
「大瓶でよろしいですか?」
「こんなにあったら1本じゃ足りないヨ」
「アハハハ!」
いや、笑いごとじゃないぜ、ったく。
白いのが精粉、黒っぽいのは芋粉(生粉)、
そして緑は海苔かアオサと思われる。

わが人生を振り返り、
こんなにコンニャクを食ったことはない。
よってこの日を婚約記念日ならぬ、
蒟蒻記念日と定めたい。

=つづく=

2025年3月7日金曜日

第3748話 北区の豊島で お好み天ぷら

北区の交通の要衝、
王子駅と豊島五団地の中間辺りに
豊島中央通り商店街がある。
寂れ掛けてはいるが
情緒があって好きな道筋だ。

何で北区に豊島があるんだ?
と首を傾げたくなるが
広大な武蔵国豊嶋郡を収めた、
豊島氏由来であるからにして
その地域は豊島区をはるかに上回る。

豊島氏は紀伊の熊野権現を勧請し、
域内に多くの熊野神社を設け、
その総元締めが王子神社だ。

それはそれとして
豊島中央通り商店街の入口近くに
「天八」なる天ぷら屋がある。
この商店街の北の果てには
紀州神社があり、熊野権現の流れを汲む。

暖簾をくぐると右手に数席のカウンター。
左にテーブルが3卓。
先客は5人ほどだったかな?
壁の品書きを見上げたが
目当ての穴子天丼が見当たらない。

揚げ手の店主に
「穴子はないんですか?」
「ありません」
「やめちゃったの?」
「ハイ、やめました」
何でも取引先が変わったとのこと。

天丼&天ぷらのほか、
とんかつ&海老フライもこなす二刀流。
お好みで揚げて貰うことにした。
ドライ中瓶とともに
3尾で500円のメゴチを所望。
おそらく江戸前と思われるが
小ぶりな魚形が好もしい。

続いてキスを1尾。
これも好きなサカナでやはり小ぶりだ。
お好みといっても種は制限され、
あとは海老とイカ、そして野菜だけ。

中瓶をお替わりして海老を1本。
せっかくだから、海老フライも1本。
金2500円をお支払いし、
商店街を突き抜け、紀州神社へ。
せっかくだから、お参りしましょう。
J.C.の日常生活は
”せっかくだから” の繰り返しなりけり。

「天八」
 東京都北区3-19-1
 03-3919-6716

2025年3月6日木曜日

第3747話 交通会館 ぐーるぐる

小瓶1本ではまったく飲み足りない。
ガードをくぐり、駅反対側の交通会館へ。
当欄でも何度か紹介したお馴染み、
「徳田酒店」に行くと順番待ちが3人。
千円ランチが評判で
近隣のOL&リーマンに人気なのだ。

カウンターに着き、ドライ大瓶を発注。
なるべく腹にたまらないものをと
鯛皮ポン酢を通したら売り切れ。
これはハナから仕込んでないんだネ。

ん? 京橋玉子焼きって何だ?
出汁巻き玉子みたいなモンだろう。
通したら小ぶりの天津丼が運ばれた。
玉子の下には白飯代わりの繊切りキャベツ。
天津丼特有の甘酢あんは掛かっていない。

けれども相当なボリュームで
山かけ丼を詰めた胃袋には負担が大きい。
案の定、半分やっつけたところで
パッタリ箸が止まり、ギヴ・アップ。

しかし、何で ”京橋” なんだろう?
ハハ~ン、そういうことかー。
これは有楽町のそばの京橋ではなく、
大阪の京橋なんだろうネ。
1130円を支払い、早めに切り上げた。

ハナシは変わるが J.C.はほぼ毎朝、
かぼすスカッシュを飲む。
以前はメキシコ産ライムを手で搾ったが
大分産かぼす果汁を手に入れ、切り替えた。

谷中銀座「九州堂」のお世話になったが
突然閉店されて在庫も底をつき、
「おおいた 温泉座」に救いを求める。
それが交通会館訪問の理由だ。
果汁100% の 500ccを2本購入。

そこから「いきいき富山館」へ。
晩酌の友を調達するためだ。
店頭で目を射られたのは
ヒロ助のます寿司 おためしセット。

ます2切れ・トロサーモン1切れ・
あぶりサーモン1切れの3点セットは
個食者には打ってつけ。
ますはチリ産トラウトサーモン。
サーモンはノルウェー産アトランティック。
国内産のサクラマスは夢のまた夢と化した。

ズワイ蟹を埋め込んだかまぼこと
ゆず風味のスルメイカ塩辛もゲット。
その夜はいただき物の
久保田 萬寿 純米大吟醸とともに
心ゆくまで楽しみました。
よくぞ日本に生まれけり。

「徳田酒店 有楽町店」
 東京都千代田区有楽町2-10-1
 東京交通会館 B1
 090-3483-6999

「おおいた 温泉座」
 東京都千代田区有楽町2-10-1
 東京交通会館 B1
 080-2777-6339

「いきいき富山館」
 東京都千代田区有楽町2-10-1
 東京交通会館 B1
 03-3213-1244

2025年3月5日水曜日

第3746話 有楽町に 峠の釜めし

♪ 雨が降ります 雨が降る
  食事に行きたし 傘はある ♪

傘はあるけど雨の中を歩くのがイヤ。
その文句は聞き飽きて耳タコだってか?
あいや、スンマソン。
とにかく久々に雨の日でありました。
それが途中から雪に変わりました。

雨の降る日はだいたい、
日比谷・銀座・町屋・北千住に出没。
千代田区・中央区・荒川区・足立区、
4区のお世話になっている。
この日はメトロ千代田線・二重橋で降った。
いえ、降(お)りました。

というのも先日、
市川雷蔵特集で読売会館に通った際、
JR有楽町駅の改札横、ガード下に
「荻野屋 弦」なる店舗を発見したからだ。
「峠の釜めし」で有名な
群馬県・横川の「おぎのや」である。

此処はイートインどころか
昼飲みまで可能にしてくれる店。
しかも釜めしなんぞは
瀬戸物の釜を温めるんじゃなくて
店内で調製してくれるんだ。

ほ~お、いろいろ揃ってるねェ。
メインメニューはまず4品。
峠の釜めし 1400円 
上州牛そぼろめし 980円
上州イチボローストビーフ丼 1800円
鶏めし温玉のせ 980円

そして日替わり丼が本日は月曜で
山かけ炙りマグロ丼 1100円
これにしてみた。
ビールはキリン・ハートランドの小瓶。

熱々のワカメ味噌汁とともに配膳された。
う~ん、まあまあだネ。
居酒屋の山かけのほうがいいくらいかも?
まぐろブツ&とろろの下のごはんは
おでん屋の茶めしみたいな感じだった。

面白いのは峠の釜めしの具材、
それだけを注文できること。
群馬の地酒も揃っていることだし、
次回は具材をつまみに楽しむつもりです。

「荻野屋 弦」
 東京都千代田区有楽町2-9-8
 JR東日本有楽町駅高架下
 03-6810-0211

2025年3月4日火曜日

第3745話 泌尿科ドクターと 酌交復活

珍しい人からメールが届いた。
かつてグルメクラブと称し、
J.C.が主宰していた、
ワイン&ダイン会のメンバーの一員、
I 原クンがふと昔を思い出したとのこと。

さっそく飲む段取りが進んだ。
彼は大病院の泌尿器科の権威につき、
J.C.はリスペクトの意を込めて
”ハカセ” と呼んでいる。
常軌を逸した愚かなる老狂人、
トランプなんかよりずっと
尊敬に値する御仁だからネ。

ハカセと落ち合ったのは
文京区・湯島の名酒場「岩手屋本店」。
”奥様公認酒場”を自称する佳店である。
サッポロ赤星を注ぎ合い、再会を祝した。
彼と酒を酌み交わすのは11年ぶりだ。

二人ともビールを急ピッチで
ガンガンやっつける。
お通しはひたし豆。
つまみは勝手知ったる J.C.が
当店のオススメを通してゆく。

必注の逸品は最初に莫久来。
ホヤのコノワタ和えである。
「岩手屋」に来たらこの本店でも
近所の支店でも外すことはない。
本来なら日本酒と好相性だが
そこまで待っていられないんだ。

続いてまつも(松藻)。
三陸や下北の荒磯に育つ、
松の葉に似た海藻を軽い炙りでー。
まことにオツである。
すでに中瓶は6本目に突入。
われわれながら実によく飲む。

酔仙の樽酒に移行し、
メカジキのハーモニカをー。
背びれの部分を付け焼きにしたもので
他店には無い美味なる珍品がコレ。

フカの煮凝り、イナゴの佃煮に
箸休めの任を与えておいて
締めはみちのくのパスタ、ひっつみ。

小麦粉を水で練ったものを手でちぎり、
野菜と煮込む、いわゆるすいとん。
ハカセはコイツを2杯も平らげた。
しこたま飲んでお勘定は1万8千円ほど。

同じ文京区民、あちらはバスで本郷、
こちらはメトロで千駄木。
ハグして別れる春日通り。
いやはや、当夜は男とハグする、
極めて稀有な夜になりました。

「岩手屋本店」
 東京都文京区湯島3-38-8
 03-3836-9588

2025年3月3日月曜日

第3744話 バッタリ出逢った アブラボウズ

東急多摩川線・下丸子。
トンデモねェ、爺さんがいるもんだ。
しゃんめェ!
気を取り直して歩く下丸子の町。

しばらくして多摩川線づたいに
隣り駅の鵜の木へ移動した。
さっき車窓から見た町並みが
良さ気だったんでネ。

好きだなァ、こういう商店街。
駅の東側は線路沿いに
多摩堤通りが走るだけだが
西側には可愛い商店街が2本もあるんだ。

ルンルン気分で往ったり来たりした。
界隈で出逢ったのが1軒の鮮魚店。
「魚商 うおき」という。
鵜の木の「うおき」である。

店頭に背子蟹(ズワイ蟹のメス)と
タラバ蟹が何匹か並んでおり、
ひと目で質の良さが伝わってきて
なおかつ、都心よりグッと割安だ。

店内に足を踏み入れた。
さっそく惹かれたのが平目刺し。
一人用のサクがズラリ並んでいる。
みな小さいながらエンガワ付きだ。
気が利いてるねェ。
真鯛・まぐろ・かつおはもとより、
サヨリ・小肌・キスなど小物も揃う。

ウワ~オ!
まっことビックリしたのは
幻のサカナとの出逢いである。
まさかこんなところ(レイシツ!)で
バッタリ出くわすことになろうとは!
何を隠そう、アブラボウズである。
塩鮭の切り身より一回り大きいのが
3~40切れはあるんじゃなかろうか。

鮮魚店でアブラボウズに出逢うのは
J.C.オカザワ、生まれて初めて。
料理される前、
生の状態でこのサカナにお目もじを
許されたのも初めてである。

店主に訊けば、1カ月、いや、2カ月に
一ぺんくらいの入荷だという。
冷凍可能なので4切れも買ってしまった。
ほかに平目1パックとカキフライが6個。
締めて金2750円也。
こいつは春から縁起のいい買い物ができた。

さっそくその晩、煮付けにしたが
その美味たるや筆舌に尽くし難く、
この世の中に煮魚にしたら
これ以上のサカナはございません。

「魚商 うおき」
 東京都大田区鵜の木2-15-2
 03-6715-2880