2025年3月10日月曜日

第3749話 家康の お命頂戴 鯛の天ぷら (その1)

荒川区の尾久本町通り。
尾久橋通りと直角に交わり、
東西にまたがって走る。

西側は川の手もとまち商店街、
東がおぐとぴあ23と呼ばれ、
こちらの通り沿いには
万国旗がジグザグに飾られている。

前回、川の手入口の「かつ一」で
焦げ茶色のとんかつを食べたので
今回はおぐとぴあの日本そば屋へ。
何事も片手落ちは良くないですから。

「金生庵」は夫婦二人だけの切盛り。
女将さんはオネバさん。
店主は声はすれども
最後まで姿を見ることができなかった。

家の近所にある須藤公園の池。
そこのウシガエルみたいなもんだ。
夏になったら五月蠅いのなんのっ。
だのに、けっして姿は見せない。

ドライ大瓶には枝豆のお通し。
品書きに見入ると、ふ~む、三色田楽かァ。
これはまずコンニャク、そして豆腐。
三つ目は何だろう? 里芋あたりかな?

興味津々で発注すると
「コンニャクだけですけど、いいですか?」
「エッ? 三色というのは?」
「コンニャクが三色なんです、海苔の緑とか」
「ハァ? う~ん・・・それでいいです」
通したものの、肩はガックシ落ちていた。

うわっ! トンデモないのが来たぜ。
百円ライターの倍もありそうなヤツが
串に刺さって6本並んでる。
「こんなにたくさんあんの?」
「ハハ、コンニャクだけで
 お腹いっぱいになっちゃいますネ」
「いや、ホントだヨ」
(女将さんよぉ、判ってんなら
 半分にしておくれでないかい?)
このセリフは飲み込んだけど。

冗談じゃないぜ、と思いつつも頑張る。
当然、ビールのお替わりである。
「大瓶でよろしいですか?」
「こんなにあったら1本じゃ足りないヨ」
「アハハハ!」
いや、笑いごとじゃないぜ、ったく。
白いのが精粉、黒っぽいのは芋粉(生粉)、
そして緑は海苔かアオサと思われる。

わが人生を振り返り、
こんなにコンニャクを食ったことはない。
よってこの日を婚約記念日ならぬ、
蒟蒻記念日と定めたい。

=つづく=